じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 8月2日の日記に、本部棟に映るクスノキの影の写真を掲載した。その後、日の出の方位が少しずつ南に移動し、クスノキ全体が壁に映るようになってきた(写真上)。

 なお、本部棟南側の駐車場には、私が知る限りで昨年12月頃から1台の軽自動車が長期間駐車しており(写真下、1月30日の日記にも記載あり)、これまで数回程度(各1〜2日間程度)学外に出たことがあるだけで、ずっと駐めっぱなしになっていた。1日500円の駐車料金を払ってまで、なぜ長期間駐めているのか疑問に思っていたが、先週あたりにとうとう、フロントグラスに「駐車違反」の張り紙が出され、それに気づいたのか、今週になってからどこかへ撤退した模様である。まさか、このようなところで話題にされているとは軽自動車の持ち主も思いもよらないだろう。但し、何らかの理由で長期間駐めるなら、このような景観を損ねる場所ではなくて、もう少し目立たないところに置いたほうがいいのではないかと思う。

8月22日(水)

【思ったこと】
_c0822(水)TEDで学ぶ心理学(17)Jane Fonda: Life's third act.(2)人生はアーチか?上り階段か?

 昨日に続いて、

Jane Fonda: Life's third act.(2011年11月)

を取り上げる。昨日も述べたように、「聞かせるプレゼン」では、まず内容が分かりやすいこと、そして論点や根拠が明瞭であり、聴衆を惹きつけるような喋り方が必要である。そこで今回は、他者からの引用部分を含めて、丸暗記する価値のありそうな名言部分を抜き出していくことにしたい。なお、日本語スクリプトの【 】は、長谷川による補足または独自の訳例。
  1. There have been many revolutions over the last century, but perhaps none as significant as the longevity revolution.20世紀には さまざまな大変化が起きました。中でも最も重要なのは恐らく長寿革命でしょう。【20世紀は大きな変化が次々と起こった時代でした。その中でも、長寿革命ほど重要な意味を持つ変化は、他には無いのではないでしょうか?
  2. That's an entire second adult lifetime that's been added to our lifespan. 成人してからの人生が 2倍に伸びたのです。【これまでの人生に、もう1つ分の成人期がまるまる付け加わったことになるのです。
  3. We're still living with the old paradigm of age as an arch. That's the metaphor, the old metaphor. You're born, you peak at midlife and decline into decrepitude. (Laughter) 私たちは未だに 人生はアーチのようなものだという古い考えに捉われています。アーチというのは古いたとえで 人生の真ん中でピークに達し、その後は衰えていくというものです(笑) 。【そうして、老いぼれに下降していくというものです。(笑)
 上記の3.のところは、会場から笑いが起こったところなので、笑いを誘うような言葉で訳さなければならないと思う。

 ちなみに、昨年11月、夕食後の散歩時に突然思いついた枯葉で作る私の人生のカタチというのは、まさに、ジェーン・フォンダ氏が古い考えだとして批判している「アーチ」そっくりの形をしている。もっとも、今年の元日の日記に記したように、私自身は、人間はしょせん、種々の行動の花束のようなものであって、それ以上でもそれ以下でもないと考えている。
その束は必ずしも過去・現在・将来を1本でつなぐようなものではなく、枯葉の形で可視化できるように、人生のある時点から始まってある時点で完結(達成する場合もあるし、失敗・断念することもあるし、別の行動に昇華していくこともある。よって、その枯葉の1枚が失われても人生全体がどうにかなるというものではない。また、過去のある断面と現在とでは、構成している枯葉が全くことなっており、何の連続性も無い、つまり別人になっているということだってある
歳をとると、知力・体力が衰えるのは必然であり、この客観的事実を無視して右肩上がりの「カタチ」を描くことには無理があるとは思っている。もっとも、いくら知力・体力が衰えても、ある側面での精神的パワーや感情面での右肩上がりの発展は十分に期待できるはずで、そのことに限って言えば、ジェーン・フォンダ氏の言うことも、ごもっともであろうとは思う。

 とにかく、ジェーン・フォンダ氏は、アーチ型のメタファを否定し、次のように言う。日本語スクリプトの【 】は、長谷川による補足または独自の意訳。
  1. But many people today -- philosophers, artists, doctors, scientists -- are taking a new look at what I call the third act, the last three decades of life. They realize that this is actually a developmental stage of life with its own significance -- as different from midlife as adolescence is from childhood. でも今では 多くの人が - 哲学者や芸術家から医者や科学者まで - 私が第三幕と呼ぶ人生最後の30年を 新たな見方で考えています。この時期は、それ自身が重要な発展期だと気づいているのです。【この時期は、それ自身の独自の意味を持つ発達段階の1つであると気づいています。】青年期が子ども時代と異なるのと同様、人生の第三幕は中年期とは異なります。
  2. And I have come to find that a more appropriate metaphor for aging is a staircase -- the upward ascension of the human spirit, bringing us into wisdom, wholeness and authenticity. 1年かけてこのテーマを研究し、年を取ることは階段を上るようなものだと考えるのがふさわしいと思うようになりました。精神的な成長が、知性や全体性、信頼性につながるのです。【歳をとることについてのよりふさわしいメタファは、階段であるという結論に至りました。それは、精神を高めるという右肩上がりの志向であり、賢明さ、完全、真正をもたらすものであります。
  3. Age not at all as pathology; age as potential. And guess what? This potential is not for the lucky few. It turns out, most people over 50 feel better, are less stressed, are less hostile, less anxious. We tend to see commonalities more than differences. Some of the studies even say we're happier. 年を取ることは病気ではなく将来性のあることなのです【歳をとるということは病気になることでは全くありません。可能性を得るということです。】。そしてこの将来性【可能性】は 少数の幸運な人だけのものではなく、50歳以上の人の多くが、 精神状態が良く、ストレスが少なく、敵対心も不安も少ないことが わかっています。50歳以上の人は、違いより共通点に目を向けます。50歳を超えるとより幸せになるという調査結果さえあります。
 上記の1.の「developmental stage」は、心理学の用語ということであればば即座に「発達段階」と訳すであろう。

 同じく2.の「wisdom, wholeness and authenticity」は、原版の日本語スクリプトでは「知性や全体性、信頼性」と訳されていたが、ここでは、「賢明さ、完全、真正」と勝手に変えてみた。しかし、プレゼンを拝聴しただけでは、ジェーン・フォンダ氏がどういう理論を拠り所にして主張されているのかが分からないため、どういう訳語が良いのかは何とも言えない。「wisdom」については、Barry Schwartzのプレゼンにもあるような「実践知」の意味もあるとは思うが、ここでは単純な「賢さ」程度の意味ではないかと思う。「wholeness」は「全体性」、「全体的視点」、「全人的視点」、「完全性」、「完全体」、「統一体」などいろいろな意味があるが、ここでは分からない。「authenticity」は、原版では「信頼性」と訳されているが、ここでいうのは人間関係上の信頼ではなく、確実さという意味での「信頼のおけること」あるいは、典拠の正しいこと、真正であることなどの意味ではないかと思う。

 ちなみに、これらの言葉は、プレゼンの終わりのほうでも、使われている。その部分のスクリプトを、私の勝手な意訳を付け加えておく。
It's not having experiences that make us wise, it's reflecting on the experiences that we've had that makes us wise -- and that helps us become whole, brings wisdom and authenticity. It helps us become what we might have been.
私たちを賢くするような経験を新たにするということではありません。これまでにあった、自分を賢くする体験にしっかり向き合うことで、全体性を高め、知性と信頼性を得る助けとするのです。それは自らの可能性を発揮させる一助となります 【それは、私たちを賢くしてくれるような新たな経験を積むということではありません。私たちを賢くしてくれた過去の経験にしっかりと向き合うことを意味しています。そうすることが、完全体に近づき、賢明や真正をもたらしてくれるのです。それは、本当の自分を取り戻す一助となります。

 もう1つ。3.の「potential」は、「将来性」より「可能性」の訳のほうが良いのではないかと思うが、これも確証はない。

 なお、私の勝手な意訳は、誤解や曲解の恐れもあるので、中高生の皆さんはこれをお手本とせず、正しい訳は自分で考えていただきたい。

 次回に続く。