じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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2012年版・岡山大学構内の紅葉(14)大学祭1日目の紅葉情報

 11月23日から岡山大学祭が始まった。写真左上は開催直前8時半頃の写真。 大学構内の紅葉・黄葉の様子は以下の通り。
  • 写真右上:時計台前のアメリカフウ(モミジバフウ)。葉っぱが適度に落ちて見通しがよくなり、ちょうどよい感じ。
  • 写真左下:農学部から薬学部正面に向かう南北方向の紅葉。この通りには、モミジ、イチョウ、ケヤキ、ナンキンハゼなど、異なる色彩がありカラフルな紅葉を楽しめる。
  • 写真右下:農学部南、東西方向のイチョウ並木。落ち葉による黄金の絨毯が美しい。

 なお、今年の大学祭1日目(11月23日)は、早朝に合計2.0ミリの雨が降り、日中も時たま小雨(気象庁の記録上は0ミリ)が降ったが進行上は特に支障が無かった模様である。2日目(11月24日)も早朝に雨が降っていたが、日中は曇りの予報となっている。

11月23日(金)

【思ったこと】
_c1123(金)脳のはたらきからみた幸せのかたち(5)「KOKOROスケール」補足

 昨日の日記で取り上げた「KOKOROスケール」についての補足。開発元の紹介文にはその特徴が以下のように記されている【一部省略】。
  1. これまでの心理調査では記述式や選択式の調査票が使われていて、直感的な感覚をそのまま表記しづらく、選択肢も微妙な感覚の差を表現するには足りないため、数値化が難しくて数理学的な統計計算には不向きでした。
  2. 分子イメージング科学研究センターの研究者らは、心理的な変化を定量的なデータとして扱えるシステムの開発に取り組み、 二次元空間の中に「安心感」と「不安感」、「ワクワク感」と「イライラ感」などの気分尺度を横軸および縦軸にした4象限のマトリクス「KOKOROスケール」を開発しました。調査対象者はその時点の気分、例えば「それほどワクワクはしないけど安心している」なら、右上の象限やや下に記入すればいいわけです。そのデータを解析し統計情報に置き換えて定量化するシステムです。
  3. 入力はタッチパネルでも可能で、タブレットやスマートフォンのアプリとしても対応予定です。
  4. KOKOROスケールは、個人の気分変化の特徴だけでなく性別・年代別、集団としての心理傾向なども詳しく把握することができます。脳科学、心理学研究やメンタルヘルス対策への応用にも期待できます。
 2011年2月8日から3月24日にかけて東京在住の主婦を対象にKOKOROスケールを使った調査を行ったところ、その期間に全く偶然に東日本大震災が発生したため、連日の震災関連報道や計画的停電などが気分に与える影響をデータとして取得する結果が得られたという。今後、さまざまな場面でデータを集めていけば、信頼性、妥当性が検証されていくことになるであろう。

 なお、上掲の引用の1.のところで、「これまでの心理調査では記述式や選択式の調査票が使われていて、直感的な感覚をそのまま表記しづらく、選択肢も微妙な感覚の差を表現するには足りないため、数値化が難しくて数理学的な統計計算には不向きでした。」と記されていることについて、心理学の立場から一言申し上げておきたい。心理学の質問紙の中には、「はい、いいえ」の2件法、「はい、いいえ、どちらとも言えない」の3件法のほか、5件法や7件法、0点から10点、0点から100点の数値で答えていただく方法、線分の左端がゼロ右端が100となっていて回答者があてはまりそうな位置に縦線を入れる方法などいろいろなスタイルがある(こちらの教材参照)。そういう意味では、KOKOROスケールでプロットさせる方法は、
  • あなたはどれだけワクワクしていますか?                   ワクワク0%←−−−−−−−−→ワクワク100%
  • あなたはどれだけイライラしていますか?(←改定版では「やる気が無い」?)  イライラ0%←−−−−−−−−→イライラ100%
  • あなたはどれだけ不安ですか?                      不安0%←−−−−−−−−→不安100%
というような線分の当てはまる位置に縦線を入れていただくか、0〜10までの11件法で数値を入れていただくというスタイルをとっても本質的には変わらないように見える。但し、いま述べたやり方がX軸やY軸を個別に評定させているのに対して、KOKOROスケールは、どうやら、二次元空間での座標として、セットで回答させているという点に大きな特徴があることは確かである。これが同じことを測定しているのか、異なる状態を測定していることになるのかは、データを統計的に解析してみないと何とも言えない。例えば、横軸に「あなたはどれだけお腹が減っていますか」という「腹の減り具合」、縦軸に「あなたの血圧はどのくらい高くなっていますか」という「主観的血圧の程度」を配置したとしよう。この場合でも、それぞれのX座標、Y座標に基づいて点をプロットすることはできるが、それでは形式にすぎず、二次元空間で表示することのメリットはあまり無さそうに思える。KOKOROスケールにおける「ワクワク」と「不安感」の場合はどうだろうか?

 あと、我々は、身体の状態を必ずしも正確に自己報告、評定できるわけではない。いま述べた「腹の減り具合」と「主観的血圧」の例で言えば、「腹の減り具合」のような空腹感は、もともと主観を前提としているのでかなり正確(=妥当性あり)と言えるが、「主観的血圧」のほうは、動悸や緊張などの自覚症状が察知されない限りは評定困難であろう。

 心理尺度で質問項目が比較的多いのは、たった1つの質問だけでは誤差や恣意性(=変化したという思い込みが回答に反映しやすくなるなど)、さらに質問文の言葉の解釈の個体差などがあって、信頼性や妥当性が保証されにくいためである。似たような質問文が並んでいるようであれ、設定場面を変えたり形容表現を変えたりして多面的に質問していけば、その合計得点に安定性(=信頼性)が出てくるし、本来測ろうとしている内容との一致(=妥当性)が高まると期待されるからである。かつ、それらの質問項目の選定過程では、的外れな質問(調べようとしていることとは無関係な質問)は統計的処理の過程で削除されている(=内的整合性)。

いずれにせよ、1つの尺度である以上は、KOKOROスケールにおいても信頼性と妥当性の検証が求められる。

次回に続く。