じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 _60303(金)[心理]冬ソナを振り返る(7)【第2話】山荘でカットされた3つのシーン 今回は第2話、山荘のできごとを取り上げることにしたい。放送室事件でいったん険悪な関係になった2人は、山荘での「事件」を通じて、お互いに本気であったことを確認し合う。有名なポラリスシーンもここに含まれている。 しかし、いろいろなサイトでも指摘されているように、当初NHKで放送された吹き替え版では、重要なシーンが3つもカットされていて、ストーリーを分かりにくくしている。他所にも書かれていることではあるが、ここで改めてカットシーンの意味を考えてみることにしたい。 まず最初のカット部分は、道に迷ったユジンを発見した直後、チュンサンが語る場面である【日本語は『冬のソナタ上』(キム・ウニ&ユン・ウンギョン著 宮本尚寛訳)ISBN:4140054239、164頁】。 (山の中で発見後、マフラーをユジンの首に巻いてから) この部分、NHK吹き替え版では、「ユジン発見現場」からの帰り道に
という会話シーンがあるだけ。これじゃあ、なんでチュンサンが放送部のキャンプに参加したのか、また、ユジンがなぜチュンサンと手をつないで帰ってきたのかがはっきりしない。 ノーカーットの会話部分から分かるように、ユジンがチュンサンの「チュンサンの本気」を信じたのは、山で迷った時に助けに来てくれたためではない。「発見」された後に、チュンサンから真剣な釈明があったからこそ、それを受け入れたのである。 また、日本語吹き替えではユジンは「嫌いじゃないわよ」と言ったことになっているが、ここでは「嫌うhate」という動詞の否定形として「嫌っていない」と答えたのであって、「嫌い」という形容詞の状態が続いていたわけではない。 それと、手をつないで帰ってきたのは山道が危ないからではない。学校をサボって初めてナミソムに行った時と同様、チュンサンが手を差し出しユジンがそれを握るという儀式的・象徴的な意味が含まれていたのだ(2月20日の日記参照)。これをカットするとは何ということだ...。 次にカットされていたのは、翌朝、ユジンが一人で山荘から外に出るシーンである。からだが冷えるのを心配してサンヒョクが、ユジンの上着を着せに行こうと後を追うが、もっと前に外に出ていたチュンサンが先に自分の上着を脱いでユジンにかけてやる。サンヒョクは2人が会ったのを見て、ユジンの上着を持ったまま山荘に戻る...。 自分の上着をユジンにかけてあげるというチュンサンの行動は、10年後でも何度か象徴的に使われている。その最初のシーンがここにあったのである。 3番目のカットシーンは、キャンプから帰ったあと、サンヒョクが家に戻って、自分の机の上に飾ってあったユジンとのツーショット写真を伏せてしまう部分、さらに、ユジンがキャンプ帰りのままの格好でサンヒョクの家までやってきて玄関のベルを鳴らそうとするが結局押すことができないというシーンである。 これより少し前、駅から帰る時にユジンはサンヒョクに「違うのサンヒョク。私がね、彼の事を好きなの。」と告げている。サンヒョクにとってはこれが最初の失恋宣告でもあった。ちなみに、同じツーショット写真は10年後にも出てくるし、また、ずっと後になって、もはやユジンを取り戻すことはできないと悟った時のサンヒョクの回想シーンの中にも、カットされたシーンがいくつか出てくる。やはり、カットされるべきでない部分であったと言えよう。 ユジンが玄関のベルを押さなかったことの意味についてはいくつかの解釈ができると思う。ベルを押さなかったことで、恋人としてはサンヒョクとはつきあわないということを決定づけたとも言える。また、10年後では、サンヒョクがユジンを置き去りにして怒って帰ってしまった後、ユジンが同じようにサンヒョクの家を訪ねてボタンを押すシーンがある。さらにその後、チュンサンが滞在するホテルまで行ったユジンが、ドアのベルを押さずに帰るというシーンもある。ボタンを押すか押さないかということは、それぞれの場面でのユジンの心の内を探る手がかりとして設定されているようにも思われる。 |