じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 一般教育棟(津島東キャンパス)東南端エリアでは、大規模な環境整備工事が行われており(3月7日の日記参照)立ち入り禁止となっていたが、後期試験実施日に限り、法界院駅からやってくる受験生の便宜をはかるために一時的に歩行者用通路が設置された。なお、写真中段は、岡大七不思議の1つであった、水の流れない「謎の川」の両岸を形作っていた石。



2013年03月12日(火)

【思ったこと】
130312(火)第18回人間行動分析研究会(6)損失最小化ゲームにおける集団マッチング(1)

 昨日の続き。4番目は、

損失最小化ゲームにおける集団マッチング

という話題提供であった。リンク先の要約にも記されているように、この実験研究の原型は「利得最大化ゲーム」であり、
  • 各選択肢に割り当てられたポイントをその選択肢を選んだ人数で割ったものが個人のポイントとなる。
  • ゲーム参加者は個人の利得(獲得ポイント)を最大化するよう求められる。
というルールのもとで、集団マッチングが見られることが確認されている。

 私なりに例を考えてみると、桶で水を汲むことのできるAとBという2つの井戸があり、Aの桶のほうが2倍の大きさ(同じ時間に2倍の水を汲める)とする。3人の村人がこの井戸を利用すると、最初はいろいろな変動はあるが、最終的には、Aの井戸を2人、Bの井戸を1人というように、桶の大きさ2:1にマッチして、2:1の割合で人が集まるようになるという次第である。

 いっぽう、今回行われた実験では、12名の実験協力者に対して以下のような教示が行われた。
  • 減点方式で行われる。初めに各自持ち点が与えられ、最終的に持ち点を一番多く残した人が勝ちとなる。
  • スタート時の各自の持ち点は3,000ポイント。ポイントは手元にある赤と青のカードのどちらかを上げることによって減点されていく。
  • それぞれのカードには条件ごとに規定ポイントがあり、「規定ポイント×札を上げた人数分」が持ち点から減点される。例えば、赤が−4ポイント、青が−8ポイントの条件で、赤が10人、青が2人だった場合、赤のカードは−4×10で40ポイント減点、青のカードは−8×2で16ポイント減点となる。
 ちなみに、利得ゲームでは、人が多く集まれば集まるほど、得点は人の数で割り算されて減少していく。いっぽう損失ゲームでは、人が多く集まるほど、減点は、人の数のかけ算で増加していく。損失ゲームでかけ算ではなく割り算にしてしまうと、規定ポイントの少ないほうに全員が集まるのが最小損失となってしまうのでゲームにならないためであった。

 これらのルールは、自然界ではどういう意味を持つのか。まず、利得ゲームでの「集団マッチング」は、結果的に資源の公平な分配をもたらす。つまり、特定個体が占有したり争いがないという条件のもとでは、話し合いや取引、調整、平等思想などが無くても、動物たちは自然に公平は分配を行えるというわけである。じっさい、放牧場では、牛たちの分布は、生えている草の量に応じてマッチングするであろう。

 いっぽう損失ゲームの場合は、たくさん集まるとリスクが大きくなるという結果をもたらす。これは、捕食動物から逃れるために、できるだけ目立たないように分散するという方略に近い。もっとも、かなりの種類の動物では、同じ場所に集まることで、1匹1匹の被害を受ける確率を低くする(誰か1匹は犠牲になるが、他の個体は助かる)という逆の方略をとる場合もありうる。

次回に続く。