【思ったこと】 130326(火)日本行動分析学会「熊野集会」(9)地域と共に生きる〜地域通貨〜(2)
3月25日の続き。行動分析学の視点から地域通貨を捉える場合、最低限、
- どういう行動の強化を目ざしているのか
- その好子の裏付好子は何か(その地域通貨はいかにして習得性好子になっているのか?)
を抑えておく必要がある。なお、地域通貨の場合は、「行動→好子出現」という一方通行の単発的な強化ではなく、地域通貨が「流通」し、その地域において相互強化の仕組みを作っていく必要がある。
私が聞き取った範囲では、新宮市内で導入されている2つの地域通貨は以下のような仕組みになっていると理解した。なお「→」以下は長谷川のコメント
- 「エコマネー壱神」
- 神倉神社内の美化清掃活動に参加すると、「エコマネー壱神」が与えられる。
→美化清掃活動は、「エコマネー壱神」という習得性好子により強化される(と計画された)。
- 「エコマネー壱神」で、神倉商店街の店で1枚200円相当の商品を購入できる。
→「エコマネー壱神」の裏付好子は商品。
- 200円分は、商店街と、それが使われた商店双方で請け負う。
→このこと自体は好子消失であるが、エコマネー利用により商店街利用者が増えれば、エコマネー推進活動は売り上げ増加という好子出現により強化される。
- 実際の交換実績は、平成15〜17年度で50〜60枚程度(平成18〜19年は休止)。
- 平成20年度以降は、神倉神社境内での「新宮参詣曼荼羅の絵解き」行事企画に変更。
→変更後の仕組みが地域通貨と言えるのかどうかはよく分からなかった。
- 「TANKAKUエコマネー」
- 平成19年から、商店街での予算50万円で事業開始。
- 新宮市社会福祉協議会との協働により、応募のあったボランティア団体に5万円〜10万円相当のエコマネーを支給(助成)。なお申請できる団体は、継続的な活動実績のある非営利団体で、新宮市ボランティア市民活動センター登録団体であること。また年間活動計画書を提出し、かつ1年に1回以上、商店街内で活動が可能であることなどを条件としている。
→ボランティア団体の活動を強化対象としている。また、商店街との繋がりも強化される。
- エコマネーの交換は、丹鶴(たんかく)商店街でのみ買い物に使える。
→当該商店街での商品が裏付好子となっている。商店街側では、エコマネー導入は、新たな顧客獲得などにより強化される。
- 平成19年(〜平成20年2月)の実績としては、12団体、3300枚(33万円相当?)。助成対象団体としては、手話サークル、点字ボランティア、環境会議、災害救助犬協会、音訳グループ、吹奏楽団、タウンガーデン、読書活動推進委員会など。
ということで、国家通貨との交換はできないが、当該の商店街で買い物する限りにおいては、国家通貨と同等の価値を持つ(商品が裏付好子になっている)という特徴があった。また、有効期間が定められているという点で、「保存(貯蔵)機能」や「増殖機能」を有していない。いずれにせよ、地域限定という点では広義の地域通貨の要件を満たしていると言える。
次回に続く。
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