【思ったこと】 130823(金)トルクメニスタン「ニヤゾフ伝説」のウソほんと
8月24日02時43′発信のNHKオンラインニュースによれば、外務省は、日本企業の海外展開の支援や、日本人の安全確保の態勢を強化するため、新たに6つの国に大使館を設けるという。大使館が設けられるのは、
- 日本と交流が深いヒマラヤのブータン
- 豊富な資源を持つアフリカのナミビア
- 太平洋のマーシャル諸島
- カリブ海のバルバドス▽、
- 旧ソビエトのアルメニア
- 中央アジアのトルクメニスタン
ということで、今回の旅行先のトルクメニスタンが6つの国の1つに挙げられていた。トルクメニスタンに大使館が設置されれば、今後ますます経済交流が進み、観光旅行で訪れる日本人の数も増えていくことになると思う。
しかし、かつて西欧メディアの取材を殆ど受け入れてこなかった経緯もあり、また、トルクメニスタンは独裁国家であり大統領が風変わりな命令を出しているなどという話題が民放娯楽番組で興味本位で取り上げられたことなどもあって、誤解をしている日本人も少なくないのではないかと思われる。
以下、2013年8月23日現在でウィキペディアなどに記載されている「ニヤゾフ伝説」について、旅行中に知り得た範囲で、真偽のほどを検証してみたい。
- 現時点では廃止、もしくは、もともとそのような命令は実行されなかったと思われる逸話
- 8月の第2日曜日をメロンの日に制定。 ニヤゾフ大統領の大好物はメロンである。「この神の賜物は、輝かしい歴史を持っている。美味しいメロンの名前を称えて、国民の祝日にする」とテレビで発言。
→2013年の8月第2日曜は8月11日であった。この日は、ヤンギ・カラからカスピ海沿岸のトルクメンバシに移動し、夜の便でアシガバートに戻るという日程であったが、メロンに関する特別の祝い事は全く無く、ごく普通の日曜日にしか見えなかった。いずれにせよ、現在、8月第二日曜日がメロンの祝日であるという事実は確認できなかった。
- 金歯を禁止。 ニヤゾフ大統領の「教師達は薄給なのに、金歯なんて!国際組織が査察に来て、教師の口の中に金歯があったらどうするのか?文化でもなけりゃ、伝統でもない。」という見解による。
→40〜50歳代とみられる複数の女性が前歯のあたりを金で装飾していた。その人が亡くなった時、歯に詰めた金をどうするのか訊いてみたい気もしたが、訊き方を間違えるととんでもないトラブルになりそうな気がしたので結局聞き損なってしまった。いずれにせよ、現在、金歯が禁止されているという事実は確認できなかった。
- 若者のヒゲを禁止。 ニヤゾフ大統領の「見苦しい」という見解による。長髪も禁止。
→あごひげをはやしている男性は若者を含めて複数見かけた。また私自身も、滞在中は無精ひげをはやしていたが、特段、咎められることはなかった。なお、長髪男性の姿は見かけていないが、禁止されているからなのか、単にそういうスタイルが流行していないだけなのかは不明。現在の日本でも、1970年代に流行したような長髪スタイルの男性はあまり見かけないし。
- トルクメニスタン国内では煙草は禁止。 ニヤゾフ大統領はガン手術を受けており、禁煙中のためだが、これでトルクメニスタンは禁煙国家となった。
→岡大敷地内喫煙ゼロをめざす安全衛生委員活動日誌を執筆している私としては、禁煙国家はまことに結構だと思っていたが、実際には、
- ランクルのドライバー5名は、休憩時間ごとにタバコをいっぱい吸っていた。
- 建物内は原則禁煙のようであったが、一部のレストランでは、ロシア系とみられるお客が食事中に喫煙していた。
- 国道沿いのドライブインのようなところでも、喫煙や吸い殻ポイ捨てが頻繁に見られた
など、まことに残念ながら、現時点で禁煙国家の事実を確認することはできなかった。
- 首都ではほぼ50メートルごとに、ニヤゾフ大統領の肖像や銅像が設置されている。 肖像や銅像を清掃する担当者も存在する。
→銅像は各所で見かけたが、肖像画や顔写真は見かけた記憶が無い。公共施設の正面あるいは玄関ホールには、ニヤゾフの代わりに、グルバングル・マリクグルイェヴィチ・ベルディムハメドフのにこやかな顔写真が、必ず掲げられていた。
- すべての閣僚、地方行政府長官、軍人などにベンツの新車が支給された。 前年支給されたベンツは補佐官などに譲ればよいと大統領は付け加えた。
→私は車のことに疎いのではっきりしたことは言えないが、街角で見かけた車は9割以上、トヨタのマークがついていた。カローラタイプが多い。
- 比較的、本当と思われる逸話
-
ニヤゾフ大統領の著書「ルーフナーマ(Ruhnama)は国民必読の書とされ、クルアーンと同等とされている。 教科書としても使われている。
→こちらの写真の一番下が、Ruhnamaのモニュメント。とはいえ、紅衛兵が毛主席語録を掲げて行進するような光景は全く見られなかった。なお、日本語版ルーフナーマが出版されているという情報もあるが、入手先は不明。
- 今回、確認できなかった逸話
- 国民が歩むべき7マイルの象徴として、世界最大の靴の製作を命令。
- 首都と大学を除く図書館の廃止を命令。 ニヤゾフ大統領の「田舎の人はどちらにしても本など読まないのだから」という見解による。
- 過去10年間に外国の大学で取得された卒業証書を全て無効化。
- オペラ、バレエ、軽演劇、サーカスの上演を禁止(国立フィルハーモニー、オペラ・バレエ劇場、民族舞踊団、軽演劇・サーカス・センターを廃止) ニヤゾフ大統領の「どうやってバレエ愛をトルクメンに適応させられるのか?」という見解による。
- コンサートやテレビなどのみならず、結婚式などでも口パクで歌うことを禁止。 ニヤゾフ大統領の「歌や音楽の発展に負の効果をもたらす」という見解による。
- 首都を除く地方の病院を閉鎖。 ニヤゾフ大統領の「ちゃんとした医師は首都にいる。病人は首都に行けばよい」という見解による。
- ニヤゾフブランドの商品が売られている。 牛乳、乳製品のような生活必需品から酒や服に至るまで何でも有る。政策により生活必需品はとても安く抑えられている。ちなみに、トルクメニスタンでは、パンのことを「グルバンソルタン=エジェ」(ニヤゾフの母親の名前)と呼ぶ。
- キプチャク村には黄金のニヤゾフ大統領家族像や利用者皆無のホテルが建設されている。
- 首都に巨大な結婚式場「バグト・コシュギ」(幸せ宮殿)を作るように命令。
- 2002年の自分の誕生日に、62歳以上の全市民が休暇を取り、羊を買うための手当てをもらえるように特別命令を公布。
- 年金廃止。ニヤゾフ大統領の「親の面倒は子供が見るもの」という見解による。
- 外国人がトルクメニスタン人の女性と結婚する際、トルクメニスタン政府に1万〜360万円支払わなければならない。ニヤゾフ大統領の「トルクメニスタンの女は小麦色で美しいのでそれだけ払う価値がある。」という見解による。
- テレビのニュースキャスターの化粧禁止。 ニヤゾフ大統領の「トルクメニスタン人本来の小麦色の肌が最も美しい」という見解による。髪を染めるのも禁止だが、ニヤゾフ自身は2002年から髪を黒く染めている。
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