じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 6月18日の岡山は午前中に弱い雨が降ったが、午後には回復し、北西の空に沈む夕日を眺めることができた【写真上、18時26分撮影】。雲の形が何となくロールシャッハテストの図版に似ている。

 写真下は6月19日の日の出【05時14分撮影】。ラグビー(アメフト?)のゴールに収まった。



2014年6月18日(水)

【思ったこと】
140618(水)長谷川版「行動分析学入門」第10回(2)嫌子出現の随伴性による弱化(2)「好子」、「嫌子」は好き嫌いとは違う

 前回、「好子」と「嫌子」は、
  • 好子(コウシ):行動の直後に出現することでその行動を強化するような刺激や出来事のこと
  • 嫌子(ケンシ):行動の直後に出現することでその行動を弱化するような刺激や出来事のこと
として定義されることを復習しました。こちらの講義録の2.5.に述べたように、「好子」や「嫌子」これらは杉山ほか(1998)で提唱された新しい呼称であり、それ以前は、それぞれ、「正の強化子」及び「負の強化子(罰子)」などと呼ばれていました。なお英語では、「好子」は「positive reinforcer」、「嫌子」は「negetive reinforcer」が一般的ですが、嫌子のことを「aversive condition」と併記している入門書もあります(例えば、Malott, 2009, Principles of Behavior 6th edition.)。

 この「好子」、「嫌子」は文字数が2文字に圧縮されており、「正の強化子」や「負の強化子」よりも便利な呼称であることは確かなのですが、日常用語の「好き」、「嫌い」とは同一ではありません。それぞれ、強化や弱化とセットにした時に初めて好子や嫌子になります。

 例えば、「あなたはAさんが好きですか、嫌いですか」と尋ねられて、「好き」と答えれば好子、「嫌い」と答えれば嫌子になるというわけではありません。ここで、あなたは、近くの公園を時たま散歩する習慣を持っていたとします。そして、6月になってから、その公園にAさんが現れるようになったとします。もし、Aさんに会うという結果が伴うことであなた自身が公園に向かう頻度が増えたとしたらAさんは好子になっていることが判明します。逆に、Aさんが現れるようになってから公園を避けて散歩するようになったとすれば、Aさんは嫌子と言うことができます。

 上述の定義のほか、嫌子は「我々が接触を最小にしたいと望むものである」というようにも定義されています(杉山ほか, 1998, 30頁)。通常、嫌子に遭遇した時には、不快症状や恐怖反応といったレスポンデント反応が同時に誘発されます。

 ところで、昨日のところで、

●繋がれているタヌキを撫でようとしたらタヌキに指を噛まれた。以後、タヌキを撫でる行動は弱化された。

という私自身のエピソードを紹介しましたが、タヌキ自体は決して嫌子ではありません。指を噛まれた後も、動物園にタヌキを見に行くことがありますから、むしろ好子と言えます。このエピソードで嫌子となっているのはあくまで「指を噛まれた」という出来事です。タヌキ自体は、弁別刺激として機能しており【好子出現の随伴性における刺激弁別についてはすでにお話しました。嫌子出現における刺激弁別については後述】、

●タヌキという弁別刺激のもとで、撫でるという行動をすると、「指に噛まれる」という嫌子が出現した。

と捉えるのが妥当です。同様に、

●コンロにかけてあったフライパンに手を触れようとしてやけどした。以後、熱せられたフライパンに手を触れる行動は弱化された。

といった事例でも、フライパン自体は嫌子ではありません。「熱によるやけど」という出来事が嫌子であり、フライパン自体は、コンロの火などとともに後述する弁別刺激として機能しています。

 いっぽう、ムカデに刺されて腫れ上がったという人にとっては、ムカデ自体が嫌子になる可能性もあります。蛇が嫌いな人、ネズミのシッポが嫌いな人、芋虫が嫌いな人などの場合も、対象自体が嫌子になっています。これらについては「習得性嫌子」のところで再度取り上げる予定です。


 次回に続く。