じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 7月7日の岡山は、未明から午後にかけて24ミリの雨が降った。写真左上は文学部玄関付近の水たまり。写真右上は餌をあさるカラスの親子。子ガラスはギャーギャーと親にねだるだけで自分で餌をとろうとはしていなかった。

 さて気になるのが台風8号の進路である。気象庁米軍合同台風警報センター(JTWC)も10日から11日にかけて岡山のすぐ近くを通る予想を出している。台風自体は弱まるかもしれないが梅雨前線の活発化による被害が心配される。


2014年7月7日(月)

【思ったこと】
140707(月)長谷川版「行動分析学入門」第12回(2)阻止の随伴性(2)嫌子出現阻止による強化
 昨日、行動した場合と行動しなかった場合の環境変化をセットにして記述すると、基本随伴性4通りのほか、阻止の随伴性という組み合わせが論理的に可能であると述べました。この組み合わせてに基づいて、基本随伴性を再定義すると以下のようになります。
  • 好子出現の随伴性:
    【   】→行動→【好子出現】
    【   】→行動しない→【   】

  • 嫌子出現の随伴性:
    【   】→行動→【嫌子出現】
    【   】→行動しない→【   】

  • 嫌子消失の随伴性:
    【嫌子あり】→行動→【   】
    【嫌子あり】→行動しない→【嫌子あり】

  • 好子消失の随伴性:
    【好子あり】→行動→【   】
    【好子あり】→行動しない→【好子あり】

    (【   】は好子または嫌子が無いという状態)
 この上記の4通りにおいて、行動した場合と行動しなかった場合の環境変化を取り替えた組み合わせが「阻止の随伴性」になります。
  • 好子出現阻止の随伴性:
    【   】→行動→【   】
    【   】→行動しない→【やがて好子出現】

  • 嫌子出現阻止の随伴性:
    【   】→行動→【   】
    【   】→行動しない→【やがて嫌子出現】

  • 嫌子消失阻止の随伴性:
    【嫌子あり】→行動→【嫌子あり】
    【嫌子あり】→行動しない→【   】(やがて嫌子消失)

  • 好子消失阻止の随伴性:
    【好子あり】→行動→【好子あり】
    【好子あり】→行動しない→【   】(やがて好子消失)

    (【   】は好子または嫌子が無いという状態)
 要するに、「阻止の随伴性」では、行動した場合には環境変化が阻止されます(現状を維持できます)が、行動しなかった場合は、近い将来に環境のほうが勝手に変化してしまうという組み合わせになります。「環境側が勝手に変化」というのは奇妙のようにも見えますが、もともとこの地球環境というのは万物流転、諸行無常、人間や動物の行動とは無関係に刻々と変化していくものです。また、集団の中では、自分が何もしなくても、周囲の人たちから勝手に変化が与えられるということもあります。そのような状況のもとで、自分に適した環境を保持するために行動する、もしくは、事態が自然に好転するまで行動を控えるという対処方略が「阻止の随伴性による強化や弱化」ということになります。

 なお、上記では、基本随伴性に対応させて、「好子出現阻止」、「嫌子出現阻止」、「嫌子消失阻止」、「好子消失阻止」という順に並べてありますが、以下は、都合上、
  1. 嫌子出現阻止(強化)
  2. 好子消失阻止(強化)
  3. 嫌子消失阻止(弱化)
  4. 好子出現阻止(弱化)
という順で説明をしていきたいと思います。




 まず、1.の嫌子出現阻止の随伴性ですが、これは、上にも述べたように、
  • 【   】→行動→【   】
  • 【   】→行動しない→【やがて嫌子出現】
という組み合わせで定義されます。要するに、行動していれば現状を維持できる反面、行動しなければ、やがて嫌子が出現してしまうというもので、当然、その行動は強化されていきます。

 具体的な例としては、まず、足を滑らせて断崖から落ちそうになり、木の根っこに掴まって必死によじ登ろうとしている状態を挙げることができます。この場合、断崖から転落してしまえば大けが(重大な嫌子)が出現しますが、現時点では、まだ落っこちていないので嫌子出現とは言えません。木の根っこに掴まる行動や必死によじ登ろうとしている行動は、転落(重大な嫌子)を阻止している行動であり、嫌子出現阻止の随伴性によって強化されていると考えることができます。

 次に、さまざまな防災活動が挙げられます。台風が近づいている時には、家の窓ガラスを保護したり、河川の氾濫に備えて玄関前に土嚢を積んだりします。そのような行動をしても、実際に台風がやってきても、災害という嫌子の出現を阻止することができます。但し、新しく何かを造るわけではありません。行動することはあくまで現状維持の範囲にとどまります。

 嫌子出現阻止の随伴性は、形式上、動物の回避行動にも見られます。例えば、ネズミが、電気ショックを回避するために回転カゴを回すという行動がその例です。この条件づけでは当初は、「電気ショックから逃れるためにカゴを回し始める」という「嫌子消失の随伴性による強化」が働きますが、やがて、ネズミは、一度も電気ショックを受けなくても回転カゴを回し続けるようになります。これは「やがて出現する電気ショック(嫌子)の出現を阻止するような行動」であり、形式上は、嫌子出現阻止の随伴性によって強化されていると見なすことができます。

 もっとも、前回述べたように、形式上(=手続的定義)は阻止の随伴性で強化されているように見えている行動も、実際には別の随伴性によって強化されている可能性(=制御変数的定義)があります。上述の回転カゴ回しなども、おそらく、ネズミにとっては「静止した回転カゴ」が習得性嫌子になっており、カゴを回すことでそれが消失するため、実質的には、「嫌子消失による強化の随伴性」になっている可能性があります。

 上記の台風に備えた防災活動の場合も、テレビなどでこれまでの台風被害の悲惨さや、すでに台風が通過している地方での猛威が伝えられることは、台風自体の嫌子としての機能を高めるという確立操作になっているばかりでなく、不安や恐怖といったレスポンデント的な情動反応を引き起こしている可能性があります。ネガティブな情動反応を消失させるために防災行動に取り組むということであれば、これは、嫌子出現阻止による強化ではなく、嫌子消失による強化となります。

 運転免許更新の講習会においても、悲惨な交通事故現場の映像が提示されることがあるそうです【私は優良免許なのでそのような映像を視たことがありません。】 これもまた、交通事故という嫌子の機能を高める確立操作になっており、それによって、嫌子出現阻止につながる安全運転行動(左右の目視、一旦停止、車間距離保持、制限速度遵守など)を強化していると考えられます。

 さて、以上は、いずれも、その個体にとって適応的な事例ばかりでした。しかし、嫌子出現阻止の随伴性は、しばしば、戦争を煽ったり、カルト宗教団体が信者の脱会を妨げる手段としても使われています。

 まず、戦争に関する随伴性ですが、かつての領土拡大侵攻はともかく、少なくとも現代では、「あの国を攻撃することは、自国民の利益になります」というような好子出現の随伴性で戦争が起こることはありません。しかし、「いまあの国を先制攻撃しないと、逆にあの国から攻められる」という阻止の随伴性、
  • 【   】→先制攻撃する→【   】(自国は安泰)
  • 【   】→先制攻撃しない→【やがて嫌子出現】(相手国から攻撃を受ける)
を主張することはきわめて説得的です。現に、少し昔にも、「大量破壊兵器を貯蔵している」という理由で先制攻撃が行われたことがありました。

 次に、カルト宗教団体の場合ですが、たいがいの信者は、少なくとも入信時には、信仰行動は、好子出現(信仰することでよりハッピーになれる)あるいは、嫌子消失(悩みや不安の解消)によって強化されていたはずです。しかし、その後、活動に疑問を持って脱会しようとすると、教団のほうから
  • 【   】→信仰活動を続ける→【   】(現状維持)
  • 【   】→信仰活動をしない(脱会)→【天罰が下る】(嫌子出現)
という随伴性が提示され、天罰の恐ろしさについて様々な確立操作が行われます。こうなるとその信者は、嫌子出現阻止の随伴性だけで、反社会的な宗教活動を続けざるを得なくなります。


次回に続く。