じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
時計台近くのウコンザクラは、春に最後の花を咲かせた後【写真右】、夏の間に主要な幹が朽ち果ててしまったが、紅葉の季節を前にその脇から何本か新芽が出現していることが分かった。かつての華やかさを取り戻せるかどうか、今後の復活ぶりを見守りたい。
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【思ったこと】 141101(土)人間のための経済学 宇沢弘文 10月30日放送の、 NHKクローズアップ現代「人間のための経済学 宇沢弘文 格差・貧困への処方箋 を録画再生で視た。9月18日に86歳で亡くなった経済学者・宇沢弘文さんの追悼番組のような内容であったが、26分程度の短い番組の中では、偉業は伝え切れていないような印象を受けた。【いずれ、別の形でスペシャル番組が放送されるものと思う。】 冒頭のほうで出てきたインタビューシーン「経済学の原点は人間。人間でいちばん大事なのは実は心なんだね。その心を大事にする...」という語りも、これだけでは、「心」の中身が抽象的すぎて分からないし、けっきょく、「一番大切なのは心だ」という一般通念に阿る以上の説得力はない。また、「すべての人が幸せに生きる社会を作りたい」という考え方はそれほど特殊ではないし(←誰でも素朴にそれを願っているはずだし、「世界全体が幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない」という宮沢賢治の言葉もあるし)、市場原理主義や効率性重視が格差社会をもたらすことも各方面から指摘されている。番組の前半のほうでは著名な経済学者が次々と宇沢さんの功績を称えていたが、うーむ、単に、「偉い先生が教えを受けた先生であった」というだけでは、もっと偉いという三段論法にはならない。 おそらく、こちらで紹介されているような番組内容であればよかったのだろうが、短時間のテレビ番組では難しすぎる内容になってしまう恐れがある。現場重視の映像をたくさん流しても、それだけでは理論面での貢献が伝わらない。 ランニングシャツに着替えて大学と自宅の間を走って往復するというシーンは信念の実践を強調しているのだと思うが、失礼ながら、こちらの方の通勤風景を連想してしまって、マラソン大会出場をめざすならともかく、車に頼らないからといってそこまでする必要があるのかなあという気もした。じっさい、いま現在、車社会の弊害もあることはあるが、『自動車の社会的費用』が出版された1974年当時と比べれば、少なくとも今の日本では大気汚染、渋滞、交通事故は減っているし、自動車産業が日本の主要産業になっていることも否定できない。【もちろん、車が深刻な大気汚染をもたらしている国もあるから、世界全体として考えればゆゆしき問題であることは確かだろうが。】 番組の終わりのほうでは千葉県館山の萱葺き屋根の古民家の映像や、宮城県東松島市での高台移転が紹介されていたが、うーむ、これが、社会的共通資本の考え方の成果なのかと言われると少々首をかしげてしまう。地域住民が参加するまちづくりや地域活性化は大切だと思うが、それがすべて宇沢イズムの影響を受けて推進されているわけでもないからだ。 ま、いろいろ批判めいたことを書いてみたが、とにもかくにも、26分間の番組で「宇沢イズム」を紹介するということには、かなりの無理があったように思う。 個人的に興味があるのは、1つは、こちらの取り組みと「宇沢イズム」との関係。このプロジェクトは、小宮山先生が関与しておられるという点で、それより前のIR3Sとも連携しているように思っていたが、かつては、奥田碩・トヨタ自動車取締役相談役の基調講演などもあったことから、自動車社会否定とは相容れないようにも思えた。 もう1つは、私自身も何度か訪れたことのある、ユーカリが丘の事業である。こちらは、不動産会社の山万が開発を始め、1979年に分譲が開始されたニュータウンとして知られている。行政主導でも、地域住民主体でもなく、1民間会社主導で「都市計画の立案から都市機能の整備・運営」が行われているという点で興味深い。 |