【思ったこと】 150627(土)最近拝聴したTED(4)
6月25日の続きでこの連載の最終回。
- Dan Gilbert (2004).The surprising science of happiness.
著名な心理学者であり、以前にも何度か拝聴したことがあった。早口ながら、聞き取りやすく説得力のあるトークであり、英語で喋るための練習用教材としても最適であろう。
前半ではまず、宝くじに当選した人と事故で下半身マヒになった人の1年後の幸福度は変わらないこと、また政治的陰謀で失脚した人や冤罪で37年も服役させられた人などの例を挙げて、第三者からは不幸な境遇にあるように見えても、幸福な状態に作りかえることができるというような話題が取り上げられた。後半では、自ら選択し、かつ事後の取り替えができない状況に置かれると、選択した内容への好感度が増すというような実験結果が紹介された。もちろん、平和な社会のもとで最低限度の物質的幸福が保障され、健康で、人間関係が良好であればそれに越したことはないが、それらが満たされていようといまいと、最終的な幸福度は当事者次第と言ってよいだろう。
- Thomas Hellum (2014).The world's most boring television ... and why it's hilariously addictive.
列車の車窓やクルーズ船からの風景を長時間にわたりひたすら中継し続けるという、ノルウェーのテレビ局の企画。いっけんきわめて退屈そうに思えるが、かなりの視聴率があったという。今後は、編み物の中継なども企画しているという。
日本で行われている、長時間の駅伝中継や24時間テレビなども似たところはあるが、いずれも当初から編集意図があり見所が想定されている。むしろ、人質事件の現場を夜通し中継するような放送に近いと言えるかもしれない。
長時間の無編集中継番組はなぜ魅力的なのか。中継対象とそれを視る側の一体感、自分自身がその場に居合わせているような臨場感が大きくな効果をもたらしているのではないかと思われる。
- Kailash Satyarthi (2015).How to make peace? Get angry.
演者は、2014年、マララさんとともにノーベル平和賞を受賞している。インド訛りの英語ではあるが、長年の体験に裏打ちされ、確信に満ちた喋り方をしておられ、聞き取りやすい。怒り、アイデア、行動(Anger, idea, action)が、人権運動のエネルギーになるという点も説得力があった。トーク終了後にクリス・アンダーソンの質問に答えていたように、人権活動を勇気づけている原動力は、子どもたちを救って母親に戻した時の子どもの笑顔と母親の喜びの涙であるという。怒りだけで終始しているわけでは決して無い。
世界では未だに、人種、性、民族、階層などの差別があり、過酷な労働を強いられている人たちがいる。平和な日本では想像がつかないほどであるが、日本の経済が、国家間の経済格差、低賃金の労働、それらを支配する金融資本に支えられているとするのであれば、無関心ではいられないことを痛感させられる。
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