じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 7月2日は梅雨の中休みとなり、日照時間は7.3時間、最高気温は29.0℃まで上がった。時計台前には赤色のトンボが出現。ショウジョウトンボではないかと思われる。このほか、6月27日頃からは、ニイニイゼミの「ジーン」という鳴き声が聞かれるようになった。

2015年07月02日(木)


【思ったこと】
150702(木)『嫌われる勇気』(5)過去体験の影響と「原因論」

 まず、昨日の続き。

 本書の「第一夜」では、「原因論」と「目的論」の違いについて述べられていた。「原因論」に立脚すると、現在の問題症状(あるいは問題行動)の原因を、過去の出来事に求める。しかしこれでは、「あなたが苦しんでいるのは、過去のここに原因がある」と指摘するだけで少しも前に進めない、と論じられていた。

 もっとも、こちら第1章 行動の原因を考えるで指摘したように、そもそも、現実世界における現象は複合的な原因によって生じることが一般的であり、しかも、複合原因のどこに注目するかは、ニーズによって変わるという見方をとる必要がある。例えば、「腕時計のガラス面をハンマーで叩いたところガラスが割れた」という現象は、「悪者が破壊目的で叩いた」とも考えられるが、工場の製造工程の検査であれば「本来この程度叩いても割れないはずのガラスが割れたのは、ガラスの製造工程に欠陥があったためだ」という部分に原因を求めることもできる。

 人間における問題症状(あるいは問題行動)の原因も複合的であり、過去に原因を求めたからといって必ずしも前に進めないということにはならないように思う。特に、行動分析学でいうところの習得性好子、習得性嫌子、弁別刺激、あるいはレスポンデント条件づけでいうところの条件刺激などはすべて過去の条件づけで形成されたものである。しかし、条件づけが原因であればこそ、これから先、晒されている行動随伴性の中身を変えていけば、必然的にその行動は変わっていくのである。

 もっとも、だからといって、過去のいつの時点で、どういう形で条件づけられたのかを克明に明らかにすることは必ずしも必要ではない。例えば、飛行機に乗るのが怖いという人がいて、その原因が、かつて搭乗中に飛行機が急降下した時の恐怖体験にあったとする。これを改善するためには、登場時に生じる条件性の恐怖反応(=レスポンデント条件づけの枠組み)を減らすことが必要であるが、その際、どういう文脈で恐怖反応が生じるのかさえ分かればよいのであって、過去の恐怖体験が何年何月何日にどういう形で起こったのかを正確に再現することは必ずしも有用とは言えない。

 いずれにせよ、問題症状(あるいは問題行動)は、現在置かれている文脈の中で発生しているのであり、現在そこで働いている行動随伴性に注目してそれを変更すれば改善は可能である。但し、現在機能している習得性好子や習得性嫌子や弁別刺激や条件刺激は過去に条件づけられたものであるからして、全く無視できるものではない。また改善のプロセスもこれから先の条件づけに頼らざるを得ないため、一朝一夕で変えられるようなものではない。「目的論」に立ったからといって、「目的を取り替えれば、手段としての症状はあっさりと消えます」というわけにはいかないと思う。


不定期ながら次回に続く。