じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



10月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

 時計台脇のカイノキ。ほんのりと紅葉が始まっている。ここにある2本のカイノキはいずれも雌樹であるため、種がたくさんできる年は紅葉がイマイチとなる。今年はどうだろうか。

2015年10月13日(火)


【思ったこと】
151013(火)『嫌われる勇気』(57)肯定的なあきらめとACT

 10月11日の続き。

 「信用と信頼の違い」より前の部分になるが、最終章のはじめのほうで、「自己肯定ではない、自己受容」、「肯定的なあきらめ」について論じられていた。
  • われわれは「わたし」という容れ物を捨てることもできないし、交換することもできない。しかし大切なのは「与えられたものをどう使うか」です。「わたし」に対する見方を変え、いわば使い方を変えていくことです。【227頁】
  • 【テストで60点をとった時】「今回はたまたま運が悪かっただけで、ほんとうの自分は100点なんだ」と言い聞かせるのが自己肯定。それに対し、60点の自分を60点として受け入れた上で「100点に近づくにはどうしたらいいか」を考えるのが自己受容。【227〜228頁】
  • 「変えられるもの」と「変えられないもの」を見極める。われわれは「何が与えられているか」について、変えることはできません。しかし、「与えられたものをどう使うか」については、自分の力によって変えていくことができます。
 「受容」という考え方は、さまざまなセラピーで基本的な柱になっていると思うが、少し前からたびたび言及しているACT(アクト)【8月22日以降の日記参照】の関連書の中でもきわめてよく似た記述を見出すことができる。
ACTのもつ哲学は,多くの人々から親しまれる「平静の信念(serenity creed)」,すなわち「変えられないものを平静をもって受け容れなさい,変えられるものを変える勇気をもちなさい,そして,それらの違いを知るための知恵を培いなさい」という考えと似ている。ほとんどの人にとって平静の信念を実行することは,この信念に同意することよりもずっと難しい。なぜなら,大抵の場合,人は自らが変えられることが何であるのか,変えられないことが何であるのかを知らないからである。【『不安障害のためのACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)実践家のための構造化マニュアル』、11頁】

 そもそも、ACTの「Acceptance」はまさに「受容」という意味であり、上掲書では
Accept 思考や感情を受け容れる:思考や感情,特に望まない思考や感情(例:不安,痛み,罪悪感,欠点)を受け容れ,抱擁する。クライエントがそれらを受け容れたいか否かにかかわらず,彼らはすでに望まない思考や感情を自らの中に抱えているのだ。そこで,クライエントが望まない思考や感情を排除したり変化させようとしたり,それらにしたがって行動したりすることによってではなく,むしろ,それらを受け容れ,最終的にはそれらを自由にさせておくことによって,望まない思考と感情からの苦悩を終わらせることが狙いである。さまざまなマインドフルネスのエクササイズを通して,クライエントは自ら批判的で、評価的なマインド(mind)と共に生きる術を学ぶ。【上掲書、10頁】
とされている。ちなみに、上掲書では
ACTの文字は,単にアクセプタンス&コミットメント・セラピーの略語であるにとどまらない。ACTという頭文字は,思考と感情とを受け容れ(Accept),方向性を選択し (Choose),行動を起こす(Take action) というACTのアプローチにおける3つの中核的ステップ,もしくはテーマを巧みに捉えたものでもある。 【9頁】
というように、選択→行動を基本に据えている。このあたりは「自己受容、他者信頼、他者貢献の円環構造」を重視するアドラー心理学とは根本的に異なっている。

 不定期ながら次回に続く。