じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡大・南北通りのイチョウはすでに大部分が落葉している。昨年同時期と大きく異なるのは、南北道路整備に伴い、銘板とモニュメントのほか、歩道に平行する植栽が撤去されている点である。全面禁煙の看板の後ろ側に注目。

2015年11月23日(月)


【思ったこと】
151123(月)理論心理学会公開シンポ(7)心理学の将来のあり方を考える(6)武藤氏の話題提供(3)

 11月20日の続き。

 その前に追記を1つ。11月19日の日記で、こちらの本が絶版になっていて中古で8500円以上の値がつけられていると記したことについて、その第一章部分は
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)ハンドブック 臨床行動分析によるマインドフルなアプローチ

に再収録されているとの情報を、武藤氏ご自身から直々にいただいた。なお、この本はACT関連書籍のリストでは、「ACTガイドブック: 臨床行動分析によるマインドフルなアプローチ」というように「ハンドブック」の部分が「ガイドブック」と誤記されており、注文される場合は「ハンドブック」に修正する必要があるので要注意。

 さて、武藤氏の話題提供の終わりのほうでは、認知心理学との対話に関連して、認知心理学・認知科学で注目されている「対称性バイアス」は、行動分析学ではすでに1970年代から「刺激等価性」研究として行われている点が紹介された。
  • Sidman, M. (1971). Reading and auditory-visual equivalences. Journal of Speech and Hearing Research, 14, 5-13.
  • Sidman, M., & Tailby, W. (1982). Conditional discrimination vs. matching to sample: an expansion of the testing paradigm. Jounal of the Experimental Analysis of Behavior, 37, 5?22.
  • Sidman, M. (1990). Equivqlence relations; Where do they come from? In D. E. Blackman & H Lereune (Eds.), Behavior analysis in theory and practice: Contributions and controversies. Hillsdale, N.J.: Erlbaum. Pp.93-114.

 もう1つ、徹底的行動主義の普及に関連して、武藤氏、Hayesらの共著論文、

Vilardaga,R., Hayes,S.C., Levin,M.E., & Muto,T.(2009). Creating a Strategy for Progress: A Contextual Behavioral Science Approach. Behavior Analyst, 32,105-133.

が紹介された。【こちらから無料で閲覧可能】。リンク先にある図1は、武藤氏のご講演でしばしば登場する見覚えのある図であった。

 終わりのところで武藤氏は、MacのCMや、MacOSでWindowsを使うVMware FusionBack to the Futureの「Mr. Fusion」と同じ「フュージョンfusion」という言葉がACTでも使われていることを挙げて、要するに、他領域はどうあれ、徹底的行動主義は着実に成果を上げています、というような形で話を締めくくられた【←あくまで長谷川の受け止めによる】。

 11月19日の日記で、今回の武藤氏の話題提供では、世界仮説や機能的文脈主義、さらに関係フレーム理論などが取り上げられるのかと予想していたと述べた。しかし考えてみれば、世界仮説を受け入れると、
ある世界仮説を用いて他の世界仮説を分析 批判することは,上述の前提条件から逸脱するだけでなく,本質的に無益であるという主張である。つまり,他の世界仮説の欠点を暴くことで強められる世界仮説は存在しないということである。【武藤, 2006,「機能的文脈主義とは何か.」 17頁】
となり、他の領域・立場の心理学と論争してもあまり意味がない可能性がある。それゆえ、
それらの人々を前に徹底的行動主義や機能的文脈主義を紹介する際には、プラグマチックな真理基準に基づいて「恣意的なゴールの達成」を着実に進めていることを示せばそれでよい
という方針のもと、今回のような話題提供の内容になったのではないかと拝察された。

 次回に続く。