じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 月曜日午前中は本部棟で会議があり、終了後は最寄りのピーチユニオン(南福利施設)4階のレストランで昼食をとった。このレストランではいつも日替わりランチ(サラダ、スープ、ライスのおかわり自由)ばかり食べていたが、この日から写真のメニューが登場したという話だったのでこちらのほうを注文した。内容はまあまあだったが、10分ほど待たされたのがちょっと面倒だった。

2015年11月30日(月)


【思ったこと】
151130(月)理論心理学会公開シンポ(12)心理学の将来の方法論を考える(3)村川氏の話題提供

昨日の続き。

 公開シンポ2日目の2番目()は、村川氏による

「一人称の方法論の可能性:Process Modelと認知意味論の視点から」

という話題提供であった。
追記]当初の案内では2番目であったが、実際には3番目であった。

 村川氏からは当日のパワーポイント資料が配付され、「一人称」について丁寧に語られたのだが、うーむ、加齢とともに新しいアイデアへの理解力が衰えている私にとっては、斬新な哲学的考察の内容はイマイチよく分からないところがあった。指定討論の方からも同じような発言があり、もしかすると、出席者の中で村川氏の話題提供を正確に理解できた人は、企画者を含む数名程度に限られていたのではないかという気もした。

 話題提供ではまず、「一人称の方法論」について、
  • 心理学において「一人称の方法論」は必要か?
  • 他の心理学の方法論と、「一人称の方法論」との対話は可能か?
  • もし対話が可能であるとするとどのような展望が必要か?
というような問題が提示された。出発点として「開かれた心をもった懐疑主義」が論じられていたが、このあたりの深い考察は理解しずらかった。

 話題提供の中で登場した「主体としての個」、「主観としての私」、「言語と行動空間」、「体験過程とシンボル化」、「意味とメタファー」などは、関係フレーム理論といくつかの接点があるようにも思われたが、具体例のもとで比較しないとなかなか理解しずらい。

 話題提供の終わりのところでは「一人称の方法論」の研究基準や評価基準が実証主義科学とは異なっている点が論じられた。配付資料にも記されていたが、実証科学の評価基準は、普通、
  • 再現性replicabiliy
    同一条件で同一の実験を行った場合、同一の結果が得られるか?
  • 妥当性validity
    測るべきものを正しく測っているのか?
    仮説(理論・概念)に沿った測定か?
  • 信頼性reliability
    誰が、いつ実験しても結果に一貫性があるか?
というように要約できる。これに対して「一人称」の研究基準は、
  • 再現性→意味創造性
    個々の経験が異なる以上、同じ経験が再現可能であるかよりも、他の研究者、実践家に「意味感覚」を生み出すか否か
  • 妥当性・信頼性(論理整合性)→体験基盤性
    論理的整合性をもつか否かではなく、インタビュアーの体験に根ざしているか否か
という点にあり、また評価基準としては
  • 体験過程基盤性
    →記述がフェルトセンスに根ざしているか?
  • 体験過程回帰性
    →抽象的概念の抽出で終えるのではなく、概念を体験過程に戻すプロセスに開かれているか?
  • 体験過程促進性
    →論理的整合性ではなく、おもしろさ、わくわく感、意味感覚などを感じるか?
が挙げられていた【いずれも、配布資料からも丸写し】。こうした議論は以前、質的心理学会でも耳にしたことがあるが、プラグマティズムに基づく真理基準をよしとする私にはイマイチしっくりことないところがあった。やはり、それによってどういうメリットがあるのか、何が変えられるのか、といった具体例がほしいところであった。

次回に続く。