じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
岡大構内の紅葉もすでに終盤となっている。写真は今年のモミジの紅葉状況。上段左以外は12月1日撮影。
|
【思ったこと】 151201(火)理論心理学会公開シンポ(12)心理学の将来の方法論を考える(4)鈴木氏の話題提供(1) 昨日の続き。 なお、昨日のところで、当初の案内資料に従って、2番目の話題提供を村川氏と記していたが、その後順序が変更されており、村川氏の話題提供は3番目、実際の2番目は、鈴木平氏による 「複雑系の方法論の可能性:非線形力学系から東洋的心理学へ」 という話題提供であった。タイトルが示す通り、難解な数学理論の話題ではあったが、大変分かりやすくお話しいただいたので、趣旨は十分に理解できた。 話題提供の冒頭では、これまで、要素還元主義的な発想のもとで、 「複雑現象」=「要素・要因が多い」。よって、複雑であっても、根気よくより単純な構成要素に分解してそれぞれの要素の働きを加算していけば元の現象は解明できる。【長谷川による意訳】 という固定観念があったが、それが必ずしも真ではないということが指摘された。その 一例として、 X(t+1)=aX(t)(1-X(t)), t=0,1,2,・・・ という数式が挙げられた。式自体はきわめてシンプルで関与している要因は少ないにもかかわらず、a=4とした時の変動はきわめて複雑な振る舞いをしているように見える。但し、この「現象」では、x軸にX(t)、y軸にX(t+1)をとるときわめてシンプルな図を描くことができ、背後に単純な法則が見えることがあるというお話だった。 上記の式で興味深いのは、X(0)の初期値が0.2の場合と0.201の場合で、時間経過とともに振る舞いが大きく変わってくるという点であった。もし人間行動について何らかの量的法則を見つけたとしても、個々の人間の初期値を無限精度で測定することが困難。となれば、その後の完全な将来予測はできない。 この例は、力学系や機械論的決定論の本質的な問題につながる。要するに、力学系というのは、「ある規則に従って時間経過とともに状態が変化するシステム、もしくはそれを記述する数学的なモデル」のことをいう。このモデルでは、初期状態が与えられればその後のすべての状態量の変化が決定される。これが機械的決定論の考え方でもあり、ラプラスの悪魔と呼ばれているものであるが、上述のように初期値のちょっとした違いで未来が大きく変化してしまうとなれば、理論的な問題はもとより、例えば経済現象とか、一人の人間の健康状態などの実践的な予測にも大きな困難をもたらすことになるだろう。 次回に続く。 |