じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
2月9日朝のモーサテで放送された「ビジネス書ランキング」(2/1〜2/7、紀伊国屋書店調べ)で、『嫌われる勇気』が再びトップに返り咲いた。↓の記事参照。この書籍は、2014年からビジネス書ランキングで常に上位をキープしている。浮沈の激しいビジネス書出版界では異例とされている。 |
【思ったこと】 160209(火)『嫌われる勇気』(67)100分de名著(1) 2月1日の日記に記した通り、 NHK『100分de名著』:アドラー「人生の意味の心理学」 の放送が始まった。指南役はこのWeb日記で何度も言及させていただいている『嫌われる勇気』【前回は2015年11月5日】の岸見一郎先生である。 2月3日の第1回は「人生を変える「逆転の発想」というテーマであった。 番組冒頭では、(書名は出されなかったが)『嫌われる勇気』がベストセラーになっており【↑の写真参照】、すでに100万部が売れていることに言及された。 またアドラー心理学については、アドラー自身は「個人心理学(Individual psychology)」と呼んでおり、「人間はいかに生きるべきか」というところまで踏み込んで考えているという点で「実践の心理学」と言えると論じられた。このことに関して、伊集院光さんから「ボクの中の心理学は、分析と観察というイメージがあり、痩せたいと思って相談に行っても、食べ過ぎましたねと分析されるだけで、食欲を止める方法は教えてくれない」というような発言があった。確かに、現代心理学の一部では、一般原理やモデル構築ばかりに精を出していて、太りすぎについても「こういうタイプの人は太りすぎになりやすい」といった「説明」だけに終わってしまい、具体的な改善の方策を提示できていないという研究があることは否めない。もっとも、応用行動分析学やその発展型の1つであるACTでは、行動を変え、適切な状態を維持していくために何が必要かという点に焦点があてられている。 ACTのユニークな点は、徹底的行動主義の発想の再考とも言えるその哲学的仮説に由来する。それらは、構成主義のアプローチに類似しているが、異なる目標をもつ。目ざすのは、十分な正確性、視野、深部とともに、予測と影響の付加的な達成を果たすことである。【ヘイズ、ピストレッロ (2009). ACTとRFTにおけるカッティング・エッジ(最先端)の探究. こころのりんしょう,a・la・carte, 28, 79頁.もっとも、ACTの「価値ある人生の目標を実現するべく,自らの足を踏み出し,活動する」という中核的ステップ【アイフォートほか(2012)不安障害のためのACT.10〜11頁】において、具体的な価値の中身までは指定されていない。「人間はいかに生きるべきか」という点において、「いかに」の部分に具体的な価値が特定されているとなると、これは、心理学というよりは、倫理学や宗教の領域に踏み込んでしまうことになるだろう。 もとの話題に戻るが、番組1回目ではアドラーとフロイトがいくつかの点で対比された。フロイトがリビドー(性的欲動)が人間のパーソナリティの基礎であると考えたのに対して、アドラーはリビドーに代えて劣等感に着目したこと、また、第一次大戦について、フロイトは「なぜ人間は闘うのか?」という疑問から攻撃欲求という考えを持ち出したのに対して、アドラーは、あれは人間の本来の姿ではないとし、「闘わないためには何をすべきか」という観点から「人間は仲間である」、これからどうすべきかを考えていったと論じられた。 次回に続く。 |