じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 岡山では6月9日の午前中に雨が降り、特に午前7時台は1時間あたり14.5ミリという大雨となった。岡山ではめったに大雨が降らないこともあり、1時間10ミリを超えると道路が水浸しになるなど、ふだん見られない光景が出現する。

2016年06月09日(木)


【思ったこと】
160609(木)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(42)派生的関係反応(14)派生的刺激反応と刺激機能の変容(3)

 昨日に続いて、

Dougher, M. J., Augustson, E. M., Markham, M. R., Greenway, D. E., & Wulfert,E. (1994). The transfer of respondent eliciting and extinction functions through stimulus equivalence classes. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 62, 331-351. 【こちらから無料で閲覧可能】

の研究について紹介する。

 実験1の第二段階では、オペラント課題遂行中に電気ショックを用いた特定刺激に対するレスポンデント条件づけが行われた。

 ここで導入されたオペラント課題というのは、第一段階で使用された3つの電鍵のうち真ん中の電鍵を押し、できるだけ多くのポイントを稼ぐという課題であった。最高得点を獲得した実験協力者には学期の終わりに20ドルの追加報酬が与えられると教示されていた(電鍵押しはポイント獲得に必要だが、どういう押し方をすれば高得点になるのかは伝えられていないが、実際はFR250強化スケジュール)。また課題遂行中、画面に図形刺激が時折提示されるが、提示された場合はそれに注目してほしいこと、図形刺激が提示された時に電気ショックを伴う場合があること、可能な限り静かに着席を続けてほしいこと、いつでも実験参加を取りやめられること、なども教示された。

 このオペラント課題は当初は、レスポンデント条件づけの効果を確認する目的で導入されたが(←条件刺激が効果を及ぼすと電鍵押しが中断する、という過去の論文に依拠した企図)、実際には明白な影響が確認できなかったため、この論文では報告しないことになったと記されている。但し、この課題は、実験協力者の注意をコンピュータ画面に持続的に集中させ、画面に提示する諸刺激の効果を確実に測るという目的もあった。

 電気ショックについては、6月7日にも言及した通りであるが、ここでは特注の電気ショック生成装置が用いられており、実験協力者の右前腕に取り付けられていると記されていた。このほか、条件反応を確認するための皮膚伝導度測定装置(ポリグラフ)が用いられていた。

 さて、第二段階では、実験協力者はオペラント課題の遂行中に、Class 1(A1、B1、C1、D1)の図形刺激のうちの1つ(実際はB1)が条件刺激になるようなレスポンデント条件づけが行われた。すなわち、当該刺激(CS+)が提示されると電気ショックが伴う。また、Class 2(A2、B2、C2、D2)の図形刺激のうちの1つ(実際はB2)は、CSーとして選ばれ、電気ショックは与えられなかった。もとの論文には、刺激の提示時間、提示順、temporal conditioning を避けるための工夫などが述べられているが省略。とにかく、これにより、レスポンデント条件づけによる弁別訓練が行われたことになる。条件づけの回数は、CS+、CS−に対して各6回。この回数で十分であることは予備実験で確認されており、またあまり回数を増やすと電気ショックに対する馴化(habituation)が生じる恐れがあったとも述べられている。

 最後の第三段階では、皮膚電動度の変化で測定されるCRを誘発する機能が他の刺激にも転移しているかどうかがテストされた。引き続き電気ショックを伴うのは、第二段階でCS+となった刺激のみである。但し、CS+が最後に提示された時にはショックは伴わなかった。実験協力者に対しては、この第三段階のほうが短時間であること、ショックを伴う刺激も提示されるが、第二段階では提示されなかった他の図形刺激もショック無しで提示されることがあることなどが教示された。なお第三段階では「A」に割り当てられた刺激のみは提示されていない。これは、刺激Aは第一段階で刺激Bと直接結びつけられているため(連合しているため)、刺激Aに対して反応が生じたとしても、刺激機能の変換ではなく、高次条件づけによるものではないかとの解釈が可能であるためとされていた(CやDの刺激はそのような提示順のもとでの強化が一度もなされていない)。

 第三段階で実際に提示された図形刺激は7種類であり、1回目と7回目は必ずB1、残りの回の順序は実験協力者によってカウンターバランスされていた。

 第三段階における皮膚電動度の変化(ピーク値の変化量、及び一定の基準を満たした反応)を一定の基準のもとで判定したところ、8名中7名の実験協力社においては、B1の値のほうがB2提示時より多く、弁別ができていたことが分かった。また、刺激機能の転移に関しては、8名中6名において、C1やD1に対しても大きな変化が認められる一方、C2やD2に対する変化は相対的に小さく、第二段階においてB1が獲得した誘発機能が、C1やD1にも転移していることが証拠づけられた。なお、実験協力者の中で例外的な結果が得られた点については、使用された電気ショックが小さすぎたことも一因ではないかと考察されていた。

 ということで、8名中6名であって全員ではなかったが、それらの6名においては、一度もレスポンデント条件づけの訓練を受けていないはずの刺激に対しても条件反応と同一の反応が一定程度生じること、すなわち刺激機能の変換が起こりうることがが示された。




 以上の実験をもうすこし分かりやすい場面に当てはめてみるとこうなる。日本語を全く知らない外国人に対して、まず、第一段階で、
  • Class 1= 見本刺激「イヌの写真」、選択肢、文字で書かれた「犬」、「いぬ」、「イヌ」のカード
  • Class 2= 見本刺激「ネコの写真」、選択肢、文字で書かれた「猫」、「ねこ」、「ネコ」のカード
とし、例えば、イヌの写真を見せた時に、「猫」、「イヌ」、「うさぎ」というカードが提示された場合は「イヌ」を選ぶと正解となる。ネコの写真を見せた時に、「犬」、「ウサギ」、「ねこ」というカードが提示された場合は「ねこ」を選ぶと正解となる。この訓練を十分に行った後では、「いぬ」というカードが提示され、選択肢として、イヌの写真、ネコの写真、ウサギの写真が提示される。「いぬ」のカードに対して「イヌの写真」が選ばれれば刺激等価性の成立の証拠の1つとなる。同様に、「猫」のカードに対して、「イヌ」、「ネコ」、「うさぎ」が提示された時には「ネコ」を選べばまたまた刺激等価性の成立ということになる。

 次に第二段階で、「犬」というカードを見せたあとで、大音量で激しく吠えるという無条件刺激(音刺激)を提示したとする。実験協力者は、それによって、「犬」というカードを見ただけで恐怖反応を生じるようになったとする。第三段階で、「犬」というカードばかりでなく「いぬ」や「イヌ」にたいしても一定の条件反応が生じるいっぽう、「猫」、「ねこ」、「ネコ」のカードにたいしては何の反応も示さなかったとすれば、「犬」カードがもたらす誘発機能は「いぬ」や「イヌ」にも転移(刺激機能の変換)したということができる。

次回に続く。