じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
岡大・南北通りの大規模整備工事の近況。東西通りと同様、生け垣を撤去し、広々とした歩道が出現した。 |
【思ったこと】 160620(月)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(51)派生的関係反応(23)刺激間のさまざまな関係(2) 昨日の続き。 原書82〜83頁(翻訳書114頁〜115頁)には、「刺激機能が、比較の関係に従っても変換されうる」ことを示した実験研究として、以下の論文が紹介されていた。 Dougher, M. J., Hamilton, D., Fink, B., & Harrington, J. (2007). Transformation of the discriminative and eliciting functions of generalized relational stimuli. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 88, 179-197. この連載の目的が大学院講義の補助解説であることに鑑み、オリジナルの論文の内容について詳しく紹介しておくことにしたい。なおこの論文はこちらから無料で閲覧することができる。 ちなみにこの論文の第一著者は6月8日以降で要約紹介した、 Dougher, M. J., Augustson, E. M., Markham, M. R., Greenway, D. E., & Wulfert,E. (1994). The transfer of respondent eliciting and extinction functions through stimulus equivalence classes. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 62, 331-351. と同一である。Dougher氏の最近の論文についてはこちらのリストを参照されたい。 今回の論文でもDougher et al. (1994)と同様、実験参加者たちに軽い電気ショックを与える手続や皮膚伝導度を指標とした条件反応を測定する手続が含まれているが、後述するように、いくつかの点で大きく改良されていた。また、実験手続について「The Human Research Review Committee at the University of New Mexico」の倫理審査をパスしていることも明記されていた。 今回の論文は3つの実験から構成されている。 まず実験1の実験参加者は19歳〜27歳の男女学生(心理学入門コースの受講生)21人であり、実験群12人と統制群9人に分けられた【但し、考察で述べられているように、この実験では実験群に対する実験が行われたあと、2〜3週間経過後に、統制群に対する実験が追加的に行われていた】。実験群に対しては4段階の訓練やテストが行われた。
まずPhase 1では、皮膚伝導度測定の信頼性を高めるために、風船を破裂させるというチェックが行われた。結果として実験群12人のうち3人では安定した反応が確認できず、その時点で実験から除外された。また、電気ショック強度については、実験参加者によって「苦痛ではないが不快」というレベルを8として10件法による評定を行ってもらい、確実に8となる強度をその人に与える電気ショックレベルであるように調整した。男性1人がすべてのショックを8未満で評定したために実験から除外された。風船テストと電気ショック評定の段階で、統制群9人のうち各1人合計2人もその後の実験から除外された。当初の21人(実験群12人、統制群9人)がPhase 1で15人(実験群8人、統制群7人)というように大幅に減少した点は意外であるようにも思えるが、これは、Dougher et al. (1994)の実験1で、実験群8人中2人が仮説を支持しない結果を示したため、実験の信頼性を高めるために、厳格なスクリーニングを導入したことによるものと推察される。 次にPhase 2では、画面上部に提示される見本刺激となるシンボルの種類に従って、画面下部の3つの図形の中から適切な1つを選ぶ(キーボードのカーソルキー押し)という訓練が行われた。上部に提示される見本刺激は、実際には、「三」、左右逆の「Z」、上下逆の「L」のような形のシンボルであるが、便宜上、それらを、見本刺激A、B、Cと呼ぶことにする。いっぽう画面下部には、同じ形だが大きさの異なる図形が3個水平に並べて提示される。選択肢となる図形は50種類の形の中から毎回1種類ランダムに取り出された。その位置は、大中小、中大小、小大中、...というようにランダムに並び替えられる。大きさの比較はあくまで相対比較であり、物理的に同じ大きさであっても、それが一番大きい場合もあれば小さい場合もあれ、絶対的なサイズが手がかりにならないように配慮された。 実験では見本刺激がAであった場合には一番小さい図形、Bの時は中くらいの図形、Cの時は一番大きい図形を選ぶと正解となる。正解・不正解はコンピュータの音声によりフィードバックされた。この訓練は、正解率が直近12試行で100%になるまで続けられ、さらに新奇な選択肢に対して、フィードバックのないテストが行われた。テスト段階でも一定以上の正解基準が要求され、満たさない場合は追加訓練が行われた。 続くPhase 3では、画面中央に、Phase 2で見本刺激として使用されたシンボル刺激が提示される。シンボル刺激が提示されている間、実験参加者はスペースキーを一定速度で押し続けるよう要請された(キー押し速度は参加者の任意だが、一定速度であるよう要請。キー押しの速さはキーを押すたびに画面に表示される)。このPhase 3ではまず、シンボル刺激Bが繰り返し提示された。その後、BBBABCという順でテストが行われた。 このPhase 3までのところですでに興味深い結果が得られている。すなわち、テスト時の最後のABCの提示時、実験群の8人は、いずれもAが提示された時にはBよりも少なく、Cが提示された時にはBよりも多い反応を行っていた【すなわち、A<B<C】。いっぽう統制群のキー押し数はバラバラであり、6通りの異なる大小パターンを示していた。 次回に続く。 |