じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 8月3日(水)に行われた環境整備作業により、文学部出入口付近の植栽に絡まっていた蔓物(ヘクソカズラ、ヤブガラシ、ノブドウなど)は大部分除去された。剪定はイマイチだが、とりあえずスッキリした状態で8月5日のオープンキャンパスを迎えることができる。

2016年08月04日(木)



【思ったこと】
160804(木)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(84)アナロジー、メタファー、そして自己の体験(20)「般化オペラント」についての復習(3)

 昨日取り上げた「随伴性の入れ子構造」に関しては、「sub-operants」といった概念を導入してより細かく分類・区別する論調もある(例えば、Catania, 1996)。

Catania, A. C., 1996, Natural contingencies in the creation of naming as a higher order behavior class. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 65, 267-279.【こちらから無料閲覧可能】

 しかし、RFTの立場からは、
...but we prefer not to take on such a conceptual burden. All operants are merely useful constructions and all of them, in principle, include sub-operants if a researcher chooses to look for them (Barnes-Holmes and Barnes-Holmes, 2000).【23頁、下線部は長谷川による】
というように、すべてのオペラントは有用性の観点から構成されたものであり、必要に応じて、その入れ子の中にあるサブ・オペラントを見つけることができると論じられている。この考えは、昨日述べた、「マクロな行動に注目するか、個々の要素的な行動に注目するか、というのはニーズにも依存している。」という私の主張と完全に一致するものである。

 なお、引用箇所の中に「construction」という言葉があるが、これは「構成概念」ではなく、「ひとまとまりとして扱うもの」という意味で用いるべきだろう。そもそも行動分析学では「構成概念」を導入することはない。また、いくら有用であったとしても、ひとまとまりに強化されなければ、独立したクラスに分類すべきであって、恣意的に「まとまり」を構成することはできないように思う。昨日引用の長谷川(2011)で記したように、「自転車通勤行動」は、「環境配慮行動」というまとまりに含めることもできるし、「健康増進行動」というまとまりに含めることもできる。ただし、「含めることができる」というのは恣意的な設定ではない。「環境配慮行動」全体をひとまとまりにして強化しても「自転車通勤行動」の出現頻度に変化が無いとするなら、それは独立した別のクラスと考えるべきである。

 もう一点、繰り返しになるが、
  • 行動のクラスを広い範囲で設定する
  • その範囲に含まれる行動が生起した時に強化する
  • 行動の増加を確認する
という枠組みで強化の効果は検証できるが、そこに含まれている要素的な行動がすべて強化されているかどうかは、より精細な検証手続をとらないと確認することはできない。

 昨日も述べたように、来園者に割引クーポンを配ることで遊園地の来園者が増えたという場合、大枠では来園行動は強化できたと結論することができる。しかし、だからといって遊園地内の個々の施設の利用頻度が増えたかどうかは定かでは無い。どこまで細かく調べるのかは、調査目的、つまりどういうニーズで強化の効果を検証するのかに依存している。

 次回に続く。