じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
岡大・南北通りと、農学部構内東西方向のイチョウ並木の黄葉。岡大・南北通りでは大規模な環境整備工事終了後の最初の黄葉風景となる。 |
【思ったこと】 161110(木)関係反応についての講義メモ(5)実験による検証方法、あるいは類似した日常場面(3)刺激等価性(1) 昨日の日記で、同一の刺激を選ぶという反射性の実験について言及した。ここで反射律を含めた刺激等価性の研究について少しだけふれておくことにしたい。 Sidmanは、刺激等価性に関連して4つの刺激間関係を提唱した。その概要に関する記述をこちらから引用させていただく。 まず、これらの刺激間関係は、以下の6通りの条件性弁別のうち、訓練を実施していない4通りの派生的な関係として分類されたものであることが下の引用箇所から読み取れる。 刺激等価性をテストするためには、前提となる刺激間関係を獲得させる必要があり、典型的には条件性弁別 conditional discrimination手続きが用いられる。条件性弁別とは、例えば3つの刺激A、B、Cを使った場合、見本刺激(A)に対して提示された比較刺激の中から特定の刺激(B)を選択させる手続きを指し、これを通して「AならばB」の関係が構築される。これに加えて、Bを見本刺激として比較刺激Cを選択させ、もうひとつの条件性弁別「BならばC」を訓練する。それぞれを見本刺激・比較刺激として6種類の条件性弁別が可能であるが、ここではその中の2つが訓練されたことになる。残りの4つの関係は、刺激等価性の成立を示す決定的なテストとして、訓練せずに残しておく。その上で、Sidmanは、訓練から派生した刺激間関係を最も節約的に評価するための構成要素として4つの関係を提唱したのである。 4つの刺激間関係が包含する性質を数学的概念から引用して反射性(reflexivity)、対称性(symmetry)、推移性(transitivity)、等価性(equivalence)と呼び、訓練から派生した刺激間関係を最も節約的に評価するための構成要素とすることを提案した。これらの性質が成立したかどうかは、非分化強化場面で学習の要素を排除しながらテストする。繰り返しになるが、Sidmanらの実験は、動物や人間の幼児が三段論法のような論理的思考をできるかどうかを研究したわけではない。条件性弁別の訓練を実施したさいに、どのような派生的関係学習が生じるかを調べ、それを節約的に評価するツールとしてこれらを提案したと考えるべきであろう。 ちなみに、派生的関係学習が生じたかどうかは、選択の比率から確認される。派生しなかった場合はランダムな選択反応が生じるであろうという前提のもとで、その期待値よりも有意に多い選択がなされた場合、これを派生したと呼んでいるのである【←厳密に言うと「派生」という言葉自体は関係フレーム理論からの借用】。 続いて、反射性に関しては、 反射性(reflexivity):見本刺激Aに対して比較刺激Aを選ぶことで表されるような、刺激それ自身に対する関係を指す。反射性は、見本刺激と同じ比較刺激を選べば示されることから、反射性テストと「同じ」の概念を形成する同一見本合わせ訓練後の転移テストとは、手続き上は同じであるが、概念的に両者は全く異なる。前者は刺激間に等価クラスが成立した後で見られる、刺激等価性のひとつの特徴として捉えられ、機能的に等価であることが要件となるが、後者は見本刺激と物理的に同じ特徴を持った刺激を選ぶことにより強化される関係の転移である。と説明されている。ここで、「同じ」という概念を形成することと、反射性の成立とは、訓練手続やテストの方法は同様であるものの、概念的には全く異なるという点に留意する必要がある。「同一性」、「同じとみなす」、「どちらが多い」などとは区別する必要がある。 次回に続く。 | tr>