じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 夕刻、教養教育授業科目担当授業が終わって文学部に戻る途中、文法経1号館の南側の窓ガラスに西日が反射しているのが見えた。太陽が南西方向に沈む、11月下旬から1月頃にかけて目立つ現象。(太陽が真西に近い方向に沈む時は反射が見えにくくなる。また北西方向に沈む夏期には見えない。)
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2016年11月22日(火)



【思ったこと】
161122(火)関係反応についての講義メモ(16)見本合わせ課題とタクト(1)

 昨日の続き。今回よりふたたび、

佐藤方哉 (2007). 見本合わせは条件性弁別であろうか?−概念分析−. 帝京大学心理学紀要, 11, 1-8.

に戻って話を進めることにしたい。なお、この論文は、こちらに掲載されており、誰でも無料で閲覧することができる。

 さて、佐藤論文では、児童を対象とした3通りの仮想実験が挙げられていた。
  1. ネコの絵が提示された時は右手を上げる。イヌの絵が提示された時は左手を上げる。
  2. ネコの絵が提示された時はパネルを押す。イヌの絵が提示された時はレバーを引く。
  3. ネコの絵が提示された時は青いパネルを押す。イヌの絵が提示された時は赤いパネルを押す。


佐藤論文によれば、これらはいずれもネコ及びイヌをタクトする訓練であるが、
第一と第二の児童はトポグラフィー準拠言語によりネコおよびイヌをタクトすることを教えられ、第三の児童は刺激選択準拠言語によりネコおよびイヌをタクトすることを教えられことになる。タクトは、いうまでもなく条件性弁別オペラントではなく単純弁別オペラントであるから、複数のタクトとみることのできる恣意的見本合わせは、条件性弁別ではなく複数の単純弁別とみなさなければならない。
と指摘されている。

 ここでもう一度、「タクト」について復習しておこう。杉山ほか(1998)では「タクト」は、
  • 物や出来事、あるいはその特徴がSで、般性強化により形成・維持されている、Sと反応との間に1対1対応のない言語行動【274頁、一部改変】
  • 環境の事物や出来事にふれて、それについて報告や記述をする言語行動【275頁、一部改変】

 なおここでさらに確認をしておくと、「言語行動」、「タクト」、「1対1対応」とは以下のようになる。【273〜276頁、長谷川による要約改変】
  • 言語行動:言語共同体の他の成員のオペラント行動を介した強化によって形成・維持されているオペラント行動で、強化をもたらすオペラント行動はその言語共同体特有の行動随伴性のもとで習得されたものである。
  • と反応の1対1対応:Sが2つ以上の部分から成り、反応も2つ以上の部分から成っていて、Sのn番目の部分が反応のn番目の部分を制御していること。これは形式的制御と呼ばれ、エコーイック、書き写し(いずれも形式的一致)、書き取り、テクスチュアル(いずれも形式的対応)がこれに分類される。
  • これに対して、タクトやイントラバーバルは1対1対応のないSによる反応の制御であり、主題的制御と呼ばれる。このうちタクトは主題的一致、イントラバーバルは主題的対応となる。なお、マンドの制御変数は弁別刺激ではなく確立操作。

 以上をふまえて元の佐藤論文に戻ると、例示された3つの訓練:
  1. ネコの絵が提示された時は右手を上げる。イヌの絵が提示された時は左手を上げる。
  2. ネコの絵が提示された時はパネルを押す。イヌの絵が提示された時はレバーを引く。
  3. ネコの絵が提示された時は青いパネルを押す。イヌの絵が提示された時は赤いパネルを押す。
で、「左右いずれかの手を挙げる」、「パネルを押したりレバーを引いたりする」、「青や赤のパネルを押す」といった行動は、実験場面を模擬的な言語共同体と見なせば、「言語共同体の他の成員のオペラント行動を介した強化によって形成・維持されているオペラント行動」、「強化をもたらすオペラント行動はその言語共同体特有の行動随伴性のもとで習得されたもの」という、言語行動の定義をいずれも満たしており、言語行動であると見なすことができる。まらこれらはいずれも、「環境の事物や出来事にふれて、それについて報告や記述をする言語行動」という、「タクト」の定義を満たしているとも言える。

 言語行動というと、言葉を発したり文字を書いたりといった行動を思い浮かべがちであるが、手を上げたりボタンを押すといった行動であっても定義を満たしていれば言語行動に含まれる。(じっさい、チンパンジーの言語学習の実験などは、パネルタッチで訓練されている。)

 さらに、「左右いずれかの手を上げる」、「パネルを押したりレバーを引いたりする」というのは、異なる形態の反応をするという点で「トポグラフィー準拠言語」に相当し、「青や赤のパネルを押す」というのは、パネルを押す行動自体は同じ筋肉系を使っているものの異なる色のパネルを押しているという点で「刺激選択準拠言語」に相当していると考えることができる。

 なお、関係フレーム理論では言語行動は
RFTによれば、言語行動とは、刺激(出来事)を関係の中に置き、結果として生じる関係に基づいて、刺激に対してアクションし、あるいはリアクションすることである。【トールネケ, 翻訳書2013, 123頁】
というように再定義されており、スキナーのもともとの言語行動の定義とは異なっている点に留意されたい。

 次回に続く。