じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



02月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る


 Gポイントの「脳年齢チェック」を毎日3回、欠かさずやっているが【1月31日の日記参照】、2月15日に、これまでで最も若い「30歳」の判定を獲得した。
 たまたま、私が苦手とする記憶問題が含まれていなかったことも一因。

2017年2月15日(水)




【思ったこと】170215(水)オドノヒュー&ファーガソン『スキナーの心理学』(2)ジュリーS.バルガス氏の推薦文

 昨日の続き。

 この本の冒頭には、ジュリーS.バルガス氏による推薦文(Foreword)が掲載されている。リンク先にも記されているように、ジュリーS.バルガス氏は、
Vargas is the daughter of B.F. Skinner, and serves as the President of the B. F. Skinner Foundation, in Cambridge, Massachusetts. Vargas is an officer of The International Society for Behaviorology.
として知られている。

 私自身は、12年ほど前、北京で行われた国際会議でバルガス夫妻の発表を拝聴したことがあった。リンク先にもあるように、ノートパソコンとプロジェクターとの接続がうまくいかず、苦労されていたことを思い出す。

 推薦文の中でバルガス氏は、
  • 彼は、行動には因果関係に拘束されない自由があるのだとする考えに反対している。でありながら面白いのは、彼の考えは、人々が自由だと考えているものをかえって充実させることに貢献する。
  • 本書は、スキナーに関する理解の欠如や偏見の克服に努め、彼の科学や彼の哲学を平易なことばで要約している。
    • 第4章で示されているように、彼はけっして論理実証主義【logical positivism】ではない。表面上の行為から誤解されているだけである。
    • 第6章の「認知について」では、思考を、観察可能な行動と同一の法則に従うものとして考えうることを明らかにしている。
    • チヨムスキーは、ワトソンの刺激一反応(S-R)アプローチを批判し、明らかにスキナーとワトソンを混同している。第ll章に示すように、スキナーは、ごく初期の論文ですでに、S-Rのみでは言語行動は説明できないと主張している。
    • 彼【スキナー】の最大の貢献は、行動が先行事象ではなく特定の後続事象によって変容するということを明らかにしたことである。先行事象を強調するワトソンの考えは、その後のスキナーらの研究でほとんどの行動には当てはまらないということが明らかになった。
  • スキナーの考えが広く誤解されているもう一つは、単純で、機械的な、反復行動にしか当てはまらないとされている点である。「理解understanding」を取り上げ論議している第7章、第9章の後半で取り上げている創作などでの「ひらめきinspiration」を生み出していると思われる変数についての彼の示唆を見るならば、こうした批判は駆逐されるはずである。
  • 第7章は、言語行動の分析に関するスキナーの大きな枠組みとその定義、彼自身の絶妙な引用がわかりやすく示されている。
  • 著者たちは、最後の3つの章で述べているように、【スキナー批判に関する書物に対して】その解説で独自の反論を試みている。
  • 第11章の「妥当な批判」で取り上げている諸問題は、本書のもう一つの特徴になっている。人のもっとも複雑な活動、言語行動に、1つの章を振り当てている。「妥当な批判#5」で、スキナーの実験行動分析は、人の複雑な行動への適用には限界があると反論している。そして、普通教育や特殊教育の教室、ビジネスや生産の現場、家庭などでのスキナー理論の直接的な応用が増え続けていることにも批判を加えている。
というように、本書の内容を精査し、的確なコメントを加えておられる。書籍の推薦文や序文には儀礼的なものも少なくないが、バルガス氏の文章は本書を読み進めていく上での適切な指針となっている。

次回に続く。