【思ったこと】 170618(日)ボーム『行動主義を理解する』(34)進化と強化(7)
6月17日に続いて、
ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.
の話題。
本書99頁以降では、行動に影響を与える自然選択の歴史が5点にまとめられていた。【長谷川による要約・改変】
- 自然選択によって確実な行動パターンが生じる。(反射や定型化運動パターン)
- 自然選択は、レスポンデント条件づけの可能性を高めるような遺伝子型に有利に作用する。(条件刺激は無条件刺激到来の兆候や脅威となるゆえ、条件づけされることで適応度が高まる→レスポンデント条件づけに必要な生理的装置が自然選択された)
- オペラント条件づけによって、強化子や弱化子といった結果が、そのような結果をもたらす行動を形成する。(適応度を高めるので、このようなタイプの柔軟性に必要な生理的装置が自然選択された) レスポンデント条件づけの信号あるいは条件刺激は、オペラント条件づけの条件性強化子や条件性弱化子として機能する。
- 自然選択は、剥奪化と飽和化の生理的機構をもたらす。剥奪化や飽和化によって、強化子と弱化子が行動に及ぼす力は強くなったり弱くなったりする。
- 自然選択は、レスポンデント条件づけにおいて、ある信号を条件づけしやすくしたり、オペラント学習において、ある活動を強化しやすくしたりするようなバイアスがを選択する。そのような信号と活動は、特に適応度にとって重要である。しかし、柔軟性があるということも適応度には都合が良い。そのため、そのような学習を特に容易にさせる生理的機構が選択される。
上記5点について私が若干疑問に思うのは、「生理的装置physiological equipment 」や「生理的機構physiological mechanisms 」という言葉が使われていることである。進化は、何らかの生理的装置や機構を必要としているであろうが、これを探究していることはけっきょく、実在論の立場ということになるのではないか。徹底的行動主義の機能主義(機能的単位)とどう折り合いをつけていくのか、もう少し先まで読む必要がありそう。あと、6月16日の日記にも書いたように、習得性好子(条件性強化子)や習得性嫌子(条件性弱化子)を信号的機能(弁別刺激のような機能)だけで説明してしまってよいのかという問題がある。信号的機能だけでは、習得性好子を価値の形成に結びつけられないという別の問題が生じる。
次回に続く。
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