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9月1日の夕焼け空。真西の方向には、ワニが右を向いているような形の雲があったが【写真中段、右から左に移動してきたサカナ形の黒い雲に呑み込まれていった【写真下段】。 |
【小さな話題】 『うんこ漢字ドリル』と『コロコロ』うんちネタの人気をどう説明するか 昨日の日記で、 「チコちゃんに叱られる(本放送第18回)の、 ●なぜ子どもは「うんち」が好き? という話題を取り上げた。これについて、精神分析学が専門のK教授はフロイトの「肛門期」に基づき「うんちを自分の子どもと思っているから」という説明をされた。これに対して私は、行動分析学の立場から「うんちやしっこについて語るのが好きなのは、うんちやしっこを語ることが強化されやすいから」ではないかと指摘した。しかしいずれも、「うんこ漢字ドリル」や「うんこネタのマンガ雑誌」の人気についての説明としては不十分である。 このことを議論する前に、まず、「普遍的な原理は流行現象をどこまで説明できるか」という問題を考えておく必要がある。ここでいう「普遍的な原理」というのは、時代や文化の違いを超えて成り立つような原理のことである。例えば、
●子どもは「うんち」が好き あるいは、より正確には、 ●子どもは「うんち」について語ることが好き(「うんち」を話題にするのが好き) という現象についてもある程度の一般性があり、その範囲では、フロイトの「肛門期」に基づく説明も成り立つ可能性がある。しかし、であるならば、「うんこ漢字ドリル」や「うんこネタのマンガ雑誌」はどの時代でも同じ程度に流行するはずである(←漢字ドリルやマンガという性質上、日本以外の国では流行しにくいだろうが)。そうではなくて、いまの時代になってから流行しているとしたら、別の説明を付け加えなければなるまい。 私が提唱した「強化理論」に基づく説明も、もっと具体的な原因を探し出す必要がある。 ●いまの時代は他の時代に比べて「うんち」について語ることが強化されやすいから(流行している) と主張すること自体は簡単だが、さらに、現代社会において、何が新たに追加された強化要因になっているのかを具体的に明らかにしなければ真に説明したことにはならない。 ちなみに、番組に登場したマンガ雑誌の担当者は、うんちネタが人気を呼んでいる理由について、 今の小学生の子どもたちって、学校行って帰ってきてからも塾があったり好きなこととかで発散させるような機会や時間が限られていて閉塞的なところがある。そういう時に「うんち」って言ったりすると前向きな気持ちになれたりする。という説明をしておられたが、今の時代が20年前、あるいは私が小学生だった55年ほど前に比べて、特異的に「閉塞的」であるかどうかは疑問が残る。これまた、流行現象の説明としては不十分である。 では何が、「うんこ漢字ドリル」や「うんこネタのマンガ雑誌」の人気をもたらしているのかということになるが、現状では無責任ながら、はっきりした理由はデータ不足でよく分からない。但し可能性の1つとして、 ●過去に比べていまの時代、子どもがうんちについて語ることについて、親世代がより寛容になっている ということは言えるかと思う。なぜなら、「うんこ漢字ドリル」などは親が買ってやらなければ手に入らないからである。ではなぜ親が寛容になっているのか? 1つの可能性としては、今の親世代が小学生の頃、すでに、うんちを含む下ネタを取り上げたマンガに接する機会が多く、下ネタに寛容な環境で育ってきたという可能性がある。もっとも、私が知っている範囲で、下ネタを多く扱っていたと思われる人気マンガとしては、
もちろん、大人気をもたらす現象はその時代に特有の社会的要因だけで説明できるわけではない。人気の対象自体は個人のアイデア、創造の力によるものであり、そういう個人が存在しなければ流行も生まれない。たとえば、アンパンマンの人気(アンパンマンの場合は流行現象というより、普遍的な人気であるような気がするが)は、やなせたかし先生が存在しなければ決して生まれなかったものである。 そもそも、「なぜこの現象が流行しているのか」をちゃんと説明できる人であれば、これから先の流行現象を予測し、それに合ったビジネスで大成功をおさめるはず。多くの人がヒット商品の開発に苦慮している現実からわかるように、流行現象を適確に説明することはきわめて難しい。民放の雑学ネタ番組などもそうだが、大概は、後付で、心理学や脳科学などから都合の良い原理を引っ張り出してきてまことしやかに「解説」しているだけである。 |