【連載】
日本語と英語の違いをめぐる議論(5)会話行動の機能的分類
昨日の続き。
これまで述べてきたように、会話行動は、特定のニーズのもとで、「特定の環境・文脈刺激」と「言葉」の連携によって遂行される。【←文脈フリーの言葉ではないという意味】 ここでいう特定のニーズは、会話行動の機能として分類することができる。この分類にはスキナーによる「マンド」、「タクト」といった言語行動の機能的分類が有用であるが、ここでは専門用語は使わず、とりあえず、以下のように分類してみたいと思う。
- 依頼(要求や命令を含む):食堂での注文、「金を出せ」、「手を上げろ」
- 報告:スキナーの分類でいうところの「タクト」
- 親交(挨拶、激励、感謝を含む):「おはようございます」、「頑張ってね」、「ありがとう」
上記は、当該の会話行動がどういう結果によって強化されているのかという、会話行動の機能による分類である。すなわち、1.から3.は
- 依頼:会話文の中で明記された要求物の獲得、実現
- 報告:報告をすることで聞き手は有益な情報を獲得。報告内容は聞き手の弁別刺激として有用なほか、ルール支配行動という形で聞き手に対する動機づけとして機能する場合もある。発話者自身は感謝されることで強化されるほか、中長期的には、相手方からも有益な報告を受けることで相互に強化される
- 親交:その言葉を発しても何かを得ることはできないし、情報的価値も全く無いが、相手方と言葉を交わすことでより友好的、親密な関係が維持される。
実際の会話では、1.から3.は複合的に使用されることが多い。例えば、「お金を貸してください」というのは1.の依頼に相当するが、何の脈絡も無しにいきなり「金を貸せ」といっても相手は応じてくれない。依頼をする前に「私はいま○○という事情で困窮しています」という実状報告や、「お金を貸してくだされば、来年には2倍にしてお返しします」というようなルール支配行動に通じる約束をすれば、依頼の成功確率は高まるであろう。このほか日常的に3.の親交会話を重ねておけば、やはり成功確率は高まる。
不定期ながら次回に続く。
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