Copyright(C)長谷川芳典 |
1月6日の午前、部分日食があった。岡山は薄曇りで一部始終を眺めることはできなかったが、10時56分頃、薄い雲越しに欠けているのが見えた。薄雲のおかげで、デジカメで直接撮影することができた。食の最大は9時55分頃で最大35%前後ということだったので、その1時間後の終わりかけの写真となった。 |
【連載】 関係反応と関係フレームをどう説明するか(15)「関係フレーム」とは何か?(4) 相互的内包(2) 昨日の続き。 相互的内包は、一般成人にとってあまりにも「当たり前」に感じられるため、かえって、厳密に理解することが難しくなっているように思う。説明のために挙げられている例も、それが最適の例と言えるのかどうか、考えてみる必要がありそうだ。 昨日の最後のところに述べた、 ●AはBよりも<大きい>と教えられた場合に, BはAより<小さい>という関係性を派生することである。 という例についても、恣意的な関係反応と非恣意的な関係反応は区別しておく必要がある。このほか、大小、多少、長短、前後などの順序構造を持つ比較対象については別の見方があるように思うが、これについては次回以降、複合的相互的内包(複合的内包)のところで取り上げることにしたい。 RFTのパープルブックは、実物のボールと、音声の「ボール」の対応づけの例が挙げられていた(30頁)が、この例ももう少し考えてみる必要がありそうだ。まず、大ざっぱに訳すと以下のようになる。 子どもの前でボールを持ち上げて、「This is a ball.」と声を出す。その際の関係的文脈(Crel)には、文の形式、声の調子、含まれている単語(例えば「is」)、対象物を手で持ち上げる動作などが含まれているだろう。これらの手がかりが、実物のボールと音声の「ボール」とを対応づける。このような特定された関係(rx)は「等位フレーム」と呼ばれ、等価性の関係が結果として生じる。この特定のフレームづけの結果として、その子どもは、「ボールはどこ?」あるいは単に「ボールは?」と尋ねられた時に、ボールが目の前にあればそちらに視線を向けたり、目の前に無ければあたりを見回してボールを探し見つかればそちらの方向を向く。こうした、音声の「ボールは?」に対する反応がryに含まれると考えられる。この例は、 ●実物のボール(A)→音声の「ボール」(B) という対応づけを学習することで、 ●音声の「ボール」(B)→実物のボール(A) に関する関係反応が派生する、というように読み取れる。しかし、実際には、実物のボールを見せながら同時に「ボール」と発音していることからみて、この訓練が「A→B」なのか「B→A」なのかを見極めることは難しい。また、日常場面で子どもに言葉を教える時は、双方向の訓練が多数回行われるのが普通であって、本当に関係反応が派生されるのかどうかは、見本合わせ課題などの実験場面でないと確認は難しい。 もう1つ、上掲の例では、「A→B」のところでどういう関係反応が生じているのかわかりにくいところがある。この場合の関係反応というのは、「Bに対してAの観点から反応すること(「観点から」というのは英語の「in terms of(to respond to B in terms of A)」でなければならないのだが、音声の「ボール」を聞くというのはオペラント反応ではなく、勝手に聞こえてくるだけにすぎない(「ボールを見る」というのは、いちおうそちらの方向を向くというオペラント反応になっている)。もっとも、ボールという音声に無頓着であった子どもが、「A→B」の訓練後に、音声に対して、実物のボールを探したりそちらの方向を向くような反応を起こす現象は「B→A」の派生であると言えるだろう。(パープルブックでは、「The ry response, in other words, will involve responding to the sound “ball” in terms of the previously experienced functions of actual balls.」というように説明されていた。) 不定期ながら次回に続く。 |