じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 1月14日の日の出。国立天文台の暦によれば、岡山で日の出が最も遅いのは、1月3日から1月12日頃で7時12分、その後はどんどん早くなって1月末には7時4分となる。但し、東側に低い山があるため、日の出の瞬間の撮影時刻はそれより4分ほど遅い。

2019年1月14日(月)



【連載】

関係反応と関係フレームをどう説明するか(17)「関係フレーム」とは何か?(6) 複合的相互的内包(3) 系列や構造の理解

 1月11日の続き。

 複合的相互的内包(複合的内包)については、前回述べた定義上の問題のほかにも、しっくりこない点がある。

 1つは、「A>B」、「B=C」というような異なる関係からどうやって「A>C」が派生されるのかという問題である。より正確に言えば、「A>C」は一度も訓練しなくても勝手に派生されるのか、それとも、何らかの特別な訓練が必要なのかという疑問となる。

 もう1つ、これはもっと広範囲に及ぶ話題であるが、

●相互的内包や複合的相互的内包の連鎖の繋がりだけで、系列や構造を理解できるか?

という問題がある。もっとも上記は、「構造」や「理解」といった構造主義や認知主義の言葉に翻訳された疑問であり、機能的文脈主義の立場を貫くならば、疑問の立て方自体が変わってくるとも言える(どういう疑問の立て方をするのかを考えること自体が、上記の素朴な疑問を解決する第一歩にもなる。)

 上記は、例えば、以下のような素朴な疑問から発せられたものである。
  1. 比較対象が3つ程度であれば複合的相互的内包に相当する派生的関係反応は有用であるが、対象の数が10や20にも増えると、相互比較の組み合わせの数は、それぞれ45通りや190通りというように膨大な数になってしまう。こうした場合の大小比較(あるいは上下、序列など)は、個々の相互比較の連鎖ではなく、順序構造の配置に基づいて行われるはずだ。
    例えば、身長順に並ぶような場合、「AさんはBさんより低い」とか「BさんはCさんより低い」といった個別の比較ではなく、Aさんは身長○cm、Bさんは身長○cm、...」といった、数直線上の配置(順番)に基づいた判断がなされる。
    孫たちを観察していてもそう思うのだが、子どもはかなり早い段階から「順番」を学ぶ。何かが欲しい時に行列をつくったり、ゲームやスポーツで順番が話題にされる中で自然と身につけていく。こういう学習は、相互比較からの派生ではなく、むしろ、「行列メタファー」とか「物差しメタファー」といった何らかの順序尺度との対応づけ(=別のタイプの関係反応)によるのではないかという気がする。
  2. 直線型の順序構造とは別に、円環型の順序構造として時計メタファーがある。また、月日の流れは直線型であるが、四季の変化は円環型である。時計も四季も、幼児期のかなり早い時期から学習される。
  3. さらには、地図上の位置の把握がある。ある場所から別の場所に行くルート探しは、2次元平面上のマップとの関係づけなしにはできない。これまた、地図上の2点の相互の位置比較に基づくとは言い難いように思われる。
 以上に挙げたような問題は、日本語に翻訳された専門書、解説書の中では殆ど説明されていないようである。いっぽう、RFTのパープルブックでは、第2章のあたりで関係フレームについてかなり詳しく説明されており、さらに第4章や第5章のあたりでは、より複雑で高度な遂行能力(思考や問題解決を含む)についての解説もある。また、Stewart(2018)の

Derived Relational Responding and Relational Frame Theory: A Fruitful Behavior Analytic Paradigm for the Investigation of Human Language. (Behavior Analysis: Research and Practice, 18, 398-415. )

によれば、知的活動や潜在認知などへのRFTの適用研究も進んでいるとのことであり、おそらく、それらの最新文献を読めば、上記の疑問はかなり解消できるのではないかとも思われる。

 不定期ながら次回に続く。