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【連載】 関係反応と関係フレームをどう説明するか(25)「関係フレーム」とは何か?(13) いろいろな関係フレーム(8)Opposition(3) 昨日までのところで、反対フレーム(Opposition)について色々と考察してきた。 この「反対」という概念は、「反対関係の認知」というように認知レベルで捉える限りは、きわめてシンプルで、直感的に理解しやすいように思われる。但しそれは認知的アプローチが優位であることを意味するわけではない。「直感的に理解しやすい」というのは、日常場面で、コインの裏表、接近・回避、電車の上り・下り、というように様々な「反対現象」を体験する中で「反対メタファー」が形成されからにすぎない。 しかし、行動レベルで「反対」という関係反応を捉えようとすると極めて厄介なことになる。 例えば、犬を連れて散歩をしている途中、公園でボールを投げてやったとする。犬はボールのところまで走っていってボールを加えて戻ってくるだろう。この場合、ボールの場所まで行く行動とそこから戻る行動は向きが逆であるゆえ、形式上「反対」行動と呼ぶことはできる。しかし、これは、「ある刺激に対して別の刺激の観点から行動する」という関係反応の定義は満たしていないので関係反応とは言い難い。同様に、接近・回避、左右に行ったり来たりというような行動も、関係反応とは言い難い。 実験場面において、ある条件の時は反応し、別の条件の時には反応しない(Go/No Go型)という訓練を行った場合も、「反応する」と「反応しない」を反対行動である見なしたり、「する、しないの選択」であると見なすことは無理があると思う。単に、反応がどういう条件で生じたのかを比較すれば済むからである。 では、どういう反応が起こった時に「反対関係反応」と言えるのだろうか。 かつてこちらの論文でも考察したことがあるが、「Yes/No型見本合わせ」の課題構造もまた、関係反応の証拠にはならない。 すでに述べたように、「反対関係」というのは、人間が、ある種の事物を「対」として分類したり(「表裏」、「紅白」など)、ある種の比較軸(対照軸)を設定した上で成り立つものである。さらに言えば、「同じ」か「違う」かという分類基準も、有用性に依拠している。であるからして、実験場面においても、社会的に定式化されている基準や比較軸を文脈的手がかりとして提示しない限りは、同じなのか、違うのか、反対なのかという区別をさせることは原理的に不可能と言わざるを得ない。 次回に続く。 |