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関係フレームとしての比較と順番をめぐる議論。↓の記事参照。 |
【連載】 関係反応と関係フレームをどう説明するか(35)「関係フレーム」とは何か?(23) いろいろな関係フレーム(18)Comparison(3)比較と順番 昨日の続き。 「比較(Comparison)」フレームは、複合的相互的内包(複合的内包、Combinatorial mutual entailment)の事例として使われることが多いように思う。昨日も引用したウィキペディアの該当項目では、 Joyce is standing in front of Peter and Peter is standing in front of Lucy. The relations trained in this example are: stimulus A in front of B and stimulus B in front of C. With this it can be derived that Joyce is standing in front of Lucy and Lucy is standing behind Joyce. The derived relations are A is in front of C and C is behind A.【「ジョイスはピーターの前に立っている」、「ピーターはルイスの前に立っている」から「ジョイスはルーシーの前に立っている」や「ルーシーはジョイスの後ろに立っている」が派生される。ここで念のため確認させていただくが、ジョイス、ピーター、ルイスがこの順番に並んでいるというのは恣意的な関係である。但し、実際にこの3人が並んでいる現場に居合わせたり、そのような写真を見ながら比較をするというのは、非恣意的な関係についての反応であって、恣意的に適用可能な関係反応の派生とは言い難い。なぜなら、上記でジョイスがルーシーの前に立っていることは直接観察すれば分かることだからである。 さて、上掲の例のように、3者以上の比較というのは、順番や序列と密接に関連している。このことで以前から疑問に思っていたのは、順番に関する比較判断(関係反応)が本当に相互的内包や複合的相互的内包の連鎖によってなされているのだろうかという点であった。 例えば、いちばん上の写真にあるように、仮に、左から順に、ネズミ(←本当はマーモットの写真だがここではネズミとさせていただく)、ウシ、トラ、ウサギ、龍という5種類の動物が並んでいたとする。与えられる言語的情報としては、「ネズミの後ろにウシ、ウシの後ろにトラ、トラの後ろにウサギ、ウサギの後ろに龍」だけであったとする。ここでウシとウサギのどちらが後ろに並んでいるかと問われれば、ある程度年齢の低い子どもでもウサギのほうが後ろに立っていると答えるだろう。しかし、これが「ネズミの後ろにウシ」、「ウシの後ろにトラ」、「トラの後ろにウサギ」という複合的相互的内包の連鎖から派生したのかどうかははなはだ疑わしい。というか、並んでいる動物が何種類にも増えていくと、相互的内包や複合的相互的内包の組み合わせの数は膨大となってしまって情報処理能力を超えてしまうのではないかと思われる。 おそらく子どもは、「ネズミの後ろにウシ、ウシの後ろにトラ、トラの後ろにウサギ、ウサギの後ろに龍」と聞いた時に、おそらく、一番上の写真にあるような行列を派生させ、そこからさらに順番に関する関係反応を派生させているのではなないだろうか。 ちなみに、子どもは幼稚園などでかなり早い段階から「順番に並ぶ」という範例に多数回晒されている。このことによって「比較」とは別に「順番」という関係フレーム?が派生させる可能性が高い。 もっとも「順番を派生させる」というのは行動レベルでは曖昧な表現である。「行列をイメージする」とか「頭の中に描く」という表現は、メタファーとしては分かりやすいが、行動主義的な立場からは認められない。とはいえ、この行列ばかりでなく、複雑な構造関係を理解していく上には、何か別のアイデアが必要ではないかという気がする。おそらくこれを説明することが、認知心理学的課題の行動主義的解決につながるものと思われる。 ※RFTのパープルブックでは、「Comparison」と別立てで「Temporal Relations」や「Spatial Relations」の項目があり、上記の問題については引き続き考察していくことにしたい。 次回に続く。 |