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【連載】 又吉直樹のヘウレーカ!「群れない生き方 わかります?」 NHKで水曜日夜に放送されている「又吉直樹のヘウレーカ!」を、ほぼ毎回録画・再生で視聴している。教養・雑学系番組としては他に、チコちゃんに叱られる!」と、サイエンスZEROも見ているが、その中で、ヘウレーカ!は
今回はその中の、「群れない生き方」についての感想。 この回取り上げられたのは、森の中で孤独な生活を送るオランウータン。チンパンジーやゴリラと対照的に群れない生活をしていることで特徴的である。たまに同じ場所で果物を食べることもあるがお互いに干渉せず、争うこともなく、挨拶することなく別れていく。 このような適応形態になったのは、生息するアジア熱帯の植生によるものらしい。アフリカの熱帯雨林と異なり、アジアの熱帯雨林の果物は実る時季が限られている。もし群れで餌を探していると、群れ全体が飢え死にしてしまう恐れがある。個体ごとに別々で暮らしていれば全滅のリスクが小さい。 オランウータンの顔の表情は殆ど変化せず、何かを熟考している哲人のように見える。実際はそうではなくて、うれしい、楽しい、悲しい、嫌だという感情を表現する必要が無いためであるという。群れで暮らしているチンパンジーではそうはいかない。常に「相手を憎んでいないことをアピールしなければならない社会」に生きているというのが登場した研究者の解釈であった。 オランウータンはいくつかの動物園で見たことがあるが、そのうち犬山のモンキーセンターで見たオスは、大相撲の小錦の現役時代のように太っていた。何度か訪れたがいつも寝ていて、果たして動き回れるのかも疑わしかった。今回の番組によれば、オランウータンというのはメタボ体質であり、食いだめすることで体脂肪を蓄えることができ、それによって食糧難の季節に生き延びることができるようなからだになっているとのことである。動物園で飼育する際も、時折、絶食期間を作るなどして食餌制限をしたほうが健康を保てるのではないかとも思われる。 番組でもう1つ興味深かったのは、オスに特徴的なフランジの出現である。成長すればかならず現れてくるのかと思っていたが、番組によると、これは強いオスのみに現れる形態的特徴であり、他のオスと争って勝利した後にホルモン(テストステロンらしい)の分泌によって形成されるとのこと。フランジをもつオス同士は非常に敵対的で時には殺し合いもする一方、フランジを持たないオス(アンフランジ)同士は争わず、フランジから攻撃されることもないという。 ウィキペディアの該当項目では、「最近のDNA資料を用いた父子判定の結果からは、フランジもアンフランジも同程度子を残している例が報告されている。」と記されていたが、今回の番組では、「フランジオス×モテるメス」、「アンフランジオス×モテないメス」というカップルが成立しやすいと言っていた。このほか、子育て期間などについても、オランウータンと他の類人猿を比較した興味深い話題があった。 オランウータンはあくまでその種に限定した適応をしているのであり、人間世界に当てはめようとしても所詮比喩にしかならないとは思うが、隠居生活志向の私などはまさに、群れない生き方そのものであり、また現役時代を振り返るとアンフランジであったことは間違いない。この選択は妥当であったと思うが、いくら他者に依存しない生き方を目ざしても、いずれ加齢が進めばどうしても他人の支援を受けざるをえなくなるのが辛いところではある。 |