じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 文学部西(駐車場北)のミモザが見頃を迎えている。この場所には多い時で5本のミモザが花を咲かせていたが、病虫害により3本が枯死。残るは2本のみとなった。周囲には実生の子株もあるので、手を加えなければ、本数が増える可能性もある。

2019年3月11日(月)



【連載】
チコちゃんに叱られる!「鼻の穴が2つあるのはなぜ?」

 昨日に続いて、3月6日放送のNHK 「チコちゃんに叱られる!」の感想。今回は、

●鼻の穴が2つあるのはなぜ?

 この疑問に対する答えは「ステキな恋人を見つけるため」というわかりにくい表現になっていたが、要するに、人間はかつては嗅覚に頼って相手を探していた。この場合、鼻の穴が2つあると濃度差によって、匂いの発生源を特定しやすくなるというような説明であった。

 もっとも、これはかなり疑わしいように思う。仮に右側に発生源があったとしても、左右の鼻の鼻に入ってくる化学物質の濃度は殆ど差が無いのではないか。そうではなくて、顔を左右に向けて、右側を向いた時のほうが強い匂いがすることで、発生源は右側にあることを知る。さらに、匂いが強くなるように近づくことで最終的に位置を特定できるのである。

 もちろん、人間以外の動物、例えば魚のように左右に鼻がついている動物であれば、濃度差は顕著であろうが、少なくとも現代人が、左右の鼻の穴の濃度差で発生源を特定できるとは思えない。

 それはそれとして、魚の鼻の穴が4つあったというのは初耳であった。このうちの2個は、人間では涙点になっている。泣いた時に涙と鼻水が一緒に出るのはこのためであるという。

 ネットで検索したところ、こちらにやや異なる説明があった。要約すると【長谷川により省略・改変】、
  • 鼻の穴が一つしかないと鼻の穴の奥にある臭細胞が正常に働かなくなり、その関係で嗅覚が正常に働かなくなる。
  • 人間の鼻の穴は平時は一つしか動いていない。つまり、左右交代で鼻の穴は使っている。ただし、右、左と1回ずつ交互に鼻の穴で息をしているわけではなく、2,3時間おきに勝手に、呼吸をする鼻の穴が入れ替わっているとのこと。つまり、人間は意識しなくても鼻の穴の呼吸する穴を変えることができる。
  • 2つの穴が交代で呼吸をしているのは、エネルギーの節約と言われている。体が余り酸素を必要としていない時は、毛細血管の集合体である鼻甲介を充血させて空気の通り道をふさぎ、どちらか一方の穴をふさぎ効率よく呼吸している。
 以上の引用はより説得力があるように思える。風邪を引いて片方の穴が詰まってしまうと嗅覚が鈍感になるばかりか、半分の穴が開いているにもかかわらず息苦しく感じることがある。このことに関連するが、寝ている時に風邪で鼻づまりが起こった時は、顔を左右に向けて寝ると、それぞれ、下のほうになった穴のほうがつまり、上の方は鼻づまりが解消することがある。なので時々左右の位置を逆にすると、いくぶん鼻風邪の息苦しさが軽減できるように思える。




 ここからは一般的な話題となるが、人間の身体の形態的特徴に関する疑問というのは、「なぜ鼻の穴は2つあるのか」という疑問以外にも、
  • なぜ頭のてっぺんに毛が生えているのか?
  • なぜ眉毛があるのか?
  • なぜ目は2つあるのか?
  • なぜ唇は赤いのか?
  • なぜ、のどちんこはあるのか?
  • なぜ手足の指は5本あるのか?
などなど、いくらでも挙げることができる。
 これらの疑問に対する解答は、
  • 系統発生的な説明
  • 個体発生的な説明
  • どのように機能しているか(どのように役立っているのか)【自然選択の過程とは別の形で機能している可能性もある。】
という3つに大別される。

 例えば、「キリンの首はなぜ長い」という疑問に対しては、
  • 系統発生的な説明:キリンがどのように進化したのか。その過程でどのような自然選択があったのか?
  • 個体発生的な説明:赤ちゃんのキリンの首はその後どのようにして長くなっていくか(←ま、生まれた直後から首が長いことは確かだが)
  • どのように機能しているか(どのように役立っているのか):木の高い所の葉っぱを食べることができる。遠くまで見渡せるので外敵に襲われにくい。
といった解答が考えられる。

 もともと雑学的レベルでの疑問というのは、当たり前の現象(疑問をいだかない現象)と比較して意外なことが起こったり、いっけん当たり前のように見えているが起源はよく分からないといった現象【←チコちゃんネタはこれが多い】に対して生じるものである。本来は、系統発生、個体発生、現時点での機能という3点セットのすべてを示さないと完全に説明されたことにはならないのだが、多くの場合は、系統発生だけ、あるいは現時点での機能を説明されただけで納得してしまい思考停止になってしまいがちである。

 ちなみに、臨床心理学的な問題、例えば、他者に迷惑をかけるような問題行動がなぜ生じているのかという疑問の場合、
  1. 生理学的、脳科学的な説明(脳のある部位の活動や欠損)
  2. 個体発生的な説明(過去のトラウマ、虐待など)
  3. その行動が、いま、この場で、どのように機能しているのか?
といった、いくつかの観点からの説明が可能であるが、納得するだけで済ませられるならともかく、これを変えようとするならば3.の視点に立たなければ有効な支援にはつながらない。