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【連載】 世界禁煙デー協賛企画(1)「分煙先進国」という屁理屈 5月31日は世界禁煙デーとなっているので、これを機会に喫煙問題について最近思ったことをまとめておくことにしたい。【過去の禁煙支援活動の記録、および表明した意見については、こちらのアーカイブをご覧いただければ幸いです。】 1回目は上にも写真を掲載した「分煙先進国」という発想について。 「分煙」という妥協があり得ないことについては2017年1月22日や2018年4月20日の日記などでたびたび意見を述べているところであるが、場所にかかわらず生じる問題と、特定の場所で生じる特有の問題に分けて以下に整理しておく。 まず、この議論を始めるにあたって、 ●タバコは依存性のある有害物質である という大前提を認めるのか認めないのか?をはっきりさせておく必要がある。この前提を認めるのであれば、中長期的には、喫煙率をゼロにしていくことが必然であり、分煙化の主張はこれを妨げているという点で間違った主張であると言わざるを得ない。いっぽう、この前提を否定し、「タバコには依存性はなく、有害でもない」と主張されるのであれば、屁理屈をこねるのではなく、ちゃんとした医学的・科学的根拠を示してもらいたい。 次に、飲食店、職場、教育機関における、(禁煙ではなく)分煙を実施した場合に生じる特有の問題がある。 まず、飲食店については、店内全面禁煙にしない限り、従業員の受動喫煙被害を防げないという問題がある。喫煙者、もしくは喫煙を容認する者だけを雇用すればいいじゃないかという暴論があるが、それでは就職差別につながる。タバコの煙で健康を害していても、生計を守るためにやむなく煙を我慢して仕事を続けるという人も少なくないだろう。この問題については、いずれ、従業員たちが喫煙席(もしくは店内すべて喫煙)で仕事をさせられたことによる健康被害を訴える大規模な損害賠償訴訟を起こす必要があるように思う。 次に職場における分煙であるが、職場で分煙を実施するということは、敷地内のどこかに喫煙所を設けるということを意味する。となるとニコチン依存者たちは、数時間おき、あるいはもっと短時間の周期で仕事を中断して喫煙所に通うことになる。このことにより労働効率は低下し、同じ部署の非喫煙職員はそのぶん負担を強いられることになる。 この日記でも何度か書いたことがあるが、喫煙所までの往復と喫煙時間を1回あたり10分とすると、そのニコチン依存職員は、毎日、6回の喫煙で1時間、仕事をせずにタバコを吸っていることになる。そのことにより仕事が遅れ残業をする場合もあるが、それでは喫煙のための仕事の遅れに対して残業手当を支給しているようなもの。公務員であれば税金泥棒と言われてもしようがない。 このほか、喫煙所で吸ったタバコの有毒成分はしばらくのあいだ肺の中に残留しているため、職場に戻ったあとも呼気を通じて職場の室内に有害・有毒な成分を放出する恐れがある。 3番目の教育機関、特に大学の場合は、学内に喫煙所を設けることで、学生たちは連れだって喫煙所に通うようになる。喫煙所で談笑することが強化されるため、なかなか禁煙に踏み切れなくなるばかりか、入学時には非喫煙者だった学生が喫煙所に誘われることで新たにニコチン依存に陥る恐れがある。教育機関は禁煙支援に専念するべきであり、依存状態を長引かせたり新たな依存者を生み出すような喫煙所の設置にお金をかけるべきではない。 なお、私自身も長年にわたり安全衛生委員をつとめており学内の意見収集にも携わったことがあるが、非喫煙者の中には
次回に続く。 |