じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 6月6日の続き。もともと文学部東館にあった心理学関係の施設はすべて新館に移転しており、現在は全く使われていないように見えた。廊下や階段は40年前と全く変わっていなかった。
  • A:1階の演習室。大学院演習はここで行われた。
  • B:2階の院生室。私自身は地階の動物実験室控え室のほうを利用しており、院生室は殆ど出入りしていなかった。
  • C:3階の助手室入口。この奥にコピー機があり、演習や研究会発表資料を印刷した。当時のコピーは湿式(青焼き)が主体。
  • D、E:階段。昔と全く変わらない。
  • F:動物実験室控え室の風景。1978年1月頃撮影。



2019年6月07日(金)



【小さな話題】

日本語会話から「い」が消える?

 5月30日放送の、NHK「所さん!大変ですよ」で、

日本語に異変!? 会話から“い”が消える

という話題を取り上げていた。新元号「令和」はふりがなをつけるなら「れいわ」であるが、街角調査によると、7割以上の人が「レーワ」というように「イ」ではなく「エ」と発音しているという話であった。

 日本語の漢熟語や外来語などで、語の途中にある「エイ(ケイ、セイ、テイ、デイ、ネイ、ヘイ、メイ、レイなどを含む)」が実際には「エー(ケー、セー、テー、デー、ネー、ヘー、メー、レーなど)」というように発音される現象は私自身もしばしば耳にしている。

 外来語に関して言えば、例えば、
  • case:ケイス→ケース
  • safe:セイフ→セーフ
  • taste:テイスト→テースト
  • table:テイブル→テーブル
  • day:デイ→デー
というようにキリがないほどに挙げることができる。そう言えば、E-mailが普及し始めた頃、私は、「mail」は「メイル」であって「メール」とは発音しないはずだということから一貫して「Eメイル」という表記にこだわっていたが、結局、賛同者を増やすことができず、ついには「Eメール」表記派に屈伏してしまったことがあった。

 「エイ」が「エー」と発音される理由について、音声工学が専門の東京工芸大学准教授は、
  • 「イ」が発音できない原因は、口をしっかり横に開けなくなるため。
  • 若い世代では、スマホ使用などにより猫背が増えている。猫背になると体全体のバランスをとるためにアゴが上がる。そうすると表情筋が動かしづらくなり、「イ」が発音しにくくなる。
  • じっさい、「色紙に式辞(しきしにしきじ)」を良い姿勢と猫背の姿勢で発音してもらう実験をしたところ、きれいな「イ」が発音できなくなってしまう。
というように解説しておられた【長谷川による要約・改変あり】。
 表情筋を動かすのが苦手の人は、口が横に開かないため無表情、もしくは怒ったような顔つきになってしまい、「鉄仮面」というあだ名がつけられた人もいた。

 番組ではこのあと、別の話題(声の高さなど)に移ってしまい、残念ながら、「イが消える」という話はしり切れトンボに終わってしまった(←「又吉直樹のヘウレーカ!」などと違って、この所さんの番組は、単なる話題紹介に終わることが多い。)

 でもって、ここからは私自身で考えていくほかはないのだが、まず、「イ」が本当に消えつつあるのかはもう少し証拠が必要であるように思う。

 番組で紹介された例や上掲の外来語の例はすべて「エイ」が「エー」になるという変化のみであった。猫背などが原因で「イ」が消えるというのであれば、単独の「イ」のほか、「アイ」、「ウイ」「オイ」なども「アー」、「ウー」、「オー」に変化するはずである。となれば、「愛する」は「あーする」、「老いる」は「おーる」と発音されても不思議ではないはずだが、そのようは現象は耳にしたことがない。岡山でよく聞くのは、せいぜい「いいですよ」の代わりに「エエですよ」と発音するぐらいのものである。

 番組では、お笑い芸人でありかつ日本語学者であるサンキュータツオ氏が、日本語会話から「イ」ばかりでなく「ウ」も消えてしまった証拠として、「おいしゅございます」の「ウ」が消えて「おいしいです」になったという例を挙げておられた。またこうした変化は、「発音の経済効率」によって説明できるというような話をしておられた。

 もっとも上述の変化は「ウ」が消えたというよりも、「おいしい」という形容詞に「ございました」をつける表現が廃れてしまったためであって、「ウ」が省略されたわけではない。同じような変化に「おめでとうございます」などがあるが、「おめでとう」の「ウ」を省略して「おめでたいです」と言ってしまったのでは相手に失礼になってしまう。

 あと、スマホの使用で猫背が増えるというならば日本人だけの現象とは言えない。ネイティブ英語話者が「case」、「safe」、「mail」などを発音する場合にも綺麗な「イ」の発音が消えていくはずだと思われるのだがどうだろうか。