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6月12日の日記で、「老後2000万円必要」に関連して、 いまの経済環境(物価上昇率、金利、GDPなど)が20年後、30年後までずっと続くことなどあり得ない。 と述べた。画像は、私が32歳の時に虎の子をはたいて契約した一時払い変額終身保険の運用実績例表。運用実績は、年利9%、4.5%、0%の3通りにおいて、私が死亡した場合の保険金と、生存中に解約した時の払戻金の金額が試算されていた。 それによれば、年利9%で運用が続いた場合、48年後の80歳で死亡すれば2391.1万円、生存していて解約した場合の払戻金は1702.6万円となっており、いま話題の「老後2000万円」の大半を補うことができる可能性があった。 しかしながら実際にはバブル崩壊により、株価は回復せず、長期にわたり低金利が続いた。おまけに契約した保険会社は経営破綻して別の会社に引き継がれたため、契約当初に約束されていた死亡時の保険金最低額(運用成績にかかわらず保障される保険金額)314.89万円は224.68万円に一方的に引き下げられ、また生存中に解約・払い戻しをした場合の受取金は一度も払込額を上回らない状態が続いている。 いま考えると、年利9%が48年間も続くというのは宝くじが当たる確率と同じくらいにあり得ない確率であるが、当時はバブル期であり、9%は無理でも4.5%以上の金利が続くという可能性を疑う人は少なかったのではないかと思う。 ということで、今の若者世代の教訓にしていただければ幸い。 |
【連載】 又吉直樹のヘウレーカ!「“かわいい”ってどういうこと?」 (3)強化刺激としての「かわいい」 昨日に続いて、又吉直樹のヘウレーカ!の「“かわいい”ってどういうこと?」 に関する話題。 昨日までのところでは、「かわいい」という言葉の使われ方について考察した。しかし、これは心理学というよりは言語学の研究であるはずだ。 いっぽう、心理学的アプローチの1つとしては、 ●「かわいい」と表現される刺激事象は、どういう条件のもとで強化刺激として機能しているのか? という研究が考えられる。 番組では、 ●視覚だけで快を感じるものはそれほど多くない。かわいいものは、視覚だけで「快」を強く感じさせることができる と説明されていた。「視覚だけで快を感じる」というのは、「脳のある部位が興奮している」というように生理学的にも測定可能であるが、行動分析学的に言えば「その刺激事象が強化刺激として機能している」とほぼ同義であり、この後者のアプローチのほうが応用性が高い。 「視覚刺激が強化刺激として機能する」というのは、要するに、その刺激を見るためのオペラント行動(=正確には「あるオペラント行動を自発するとその直後に当該の視覚刺激が出現する」)が強化されるという意味である。じっさい「かわいい」画像やぬいぐるみなどは、スマホの壁紙、室内の装飾などに使われており、人々はお金を出してそれを手に入れようとする。言い換えれば、「かわいい」刺激は、購入行動やそれを見る行動の強化刺激になっているのである。 視覚画像それ自体が強化子(好子)となっている刺激としては、「かわいい刺激」を含めて少なくとも4つのタイプが考えられる。
でもって、いちおう4.は外しておいて、1.から3.に当てはまると思われる多様な画像刺激を用意し、実験参加者にとって、それぞれの刺激がどの程度、強化機能を有しているのかを多面的に検討する。もし、1.から3.の機能が全く区別をつけられないのであれば、あえて「かわいい」というカテゴリーを設ける必要は無くなる。しかし、実際には、1.から3.は、性別、年代、強化子として機能する文脈は異なっているはずである。こうして帰納的にデータを収集した上で、ある種のカテゴリーが、言語的に「かわいい」と形容される対象と一致していることが明らかになれば、結果的に、「かわいい」の研究が大きく進展したと言うことができる。 ここで留意していただきたいのは、上記の研究を進めるにあたって、「かわいい」という言葉はどこでも使われていないという点である。「かわいい」という情動反応が存在しているかどうかも前提にはなっていない。 すでに隠居人の身の上であるゆえ、この先自分自身がこういう研究に取り組むことはあり得ないが、もし、卒論や修論で「かわいい」をテーマにした研究を希望する学生・院生がおられたら、 ●「かわいい」という言葉を使わないで「かわいい」を研究する というアプローチをぜひとも検討してもらいたいと思う。【「かわいい」という言語反応の社会的機能については次回以降に述べる予定。】 次回に続く。 |