じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 トビリシのホテルの近くで見かけた落書き。
If his (ex) girlfriend doesn't hate u(you), you're ugly.
と記されており、最初は何のことか分からなかったが、「you」を女性であると考えれば、
あんたの彼氏の元の彼女があんたのことを憎んでいないとしたら、あんたはブスだということだ。(元の彼女から憎まれているというのは、あなたがそれだけ魅力的だから。)
というようにも解釈できる。
 もっとも帰国後に検索したところ、このフレーズはネット上でも拡散しており、いくつかコメントが掲載されていた。この方面には全くの素人でよく分からないが、歌詞か、格言のようなものだろうか。


2019年7月14日(日)



【連載】

チコちゃんに叱られる!「ゴミ収集車の中」、「夜、光に集まる昆虫」

 昨日に続いて、7月12日放送のNHK「チコちゃんに叱られる!」の話題。本日は3.と4.について取り上げる。
  1. なんでジンギスカンは北海道名物になった?
  2. 雷がジグザグに落ちるのはなぜ?
  3. 「ごみ収集車の中ってどうなってるの?」
  4. なんで虫は夜、光に集まるの?
という4つの疑問が取り上げられた。本日はこのうちの1.と2.について取り上げる。

 まず3.であるが、いくつかの自治体では環境教育用の「スケルトン型ゴミ収集車」が導入されているという。番組では墨田区の「わかるくん」が紹介された。
 番組を見てスゴいと思ったのは、圧縮の強さであった。一次圧縮(バケットケットに入れられたゴミには、3500kg/cm2という圧力がかけられるという。3500kgというのは、番組の表現で言えば体重100kgのラグビー選手【←大相撲力士ではちょっと軽い】35人分の体重に相当する。
 そう言えば、かつて粗大ゴミが定期的に回収されていた時代に、ゴミ収集車がスチール机やタンスなどを丸呑みしている様子を目にしたことがあった。最後の粗大ゴミ無料回収が行われた2001年3月にはアパートの敷地一帯に大量の粗大ゴミが排出されていたが、数台の収集車ですべてを回収できてしまったのは驚きであった。

 続く4.であるが、番組の正解は「お月様と勘違いしているから」であったが、この説明には少々納得できないところがあった。解説者によれば、
  • 多くの昆虫は、自分が向かう方向を決めるために月明かりを目印にしている。
  • 本来、自然界の夜というのは真っ暗。 真っ暗な中でも、明るく光っているものは月明かり。
  • 月は非常に遠くにあるので、月と一定の角度を保ったまま飛べば、目ざす方向に進める。
  • しかし、街中の街灯や自販機は、月と違ってすぐ近くにあるため、同じ角度を保とうとすると回転してしまう。回転を修正しようとすると「コンパス理論」によりそれらの明かりに近づいてしまう。
  • 最近のLEDは紫外線が含まれていないものが多く、昆虫を惑わさなくなった。
というような話であったが、私が疑問に思ったのは、
  • 昆虫は月明かりを頼りにしているというが、夜に月が明るく輝いているのは上弦から下弦の月までの15日間程度にすぎず、しかも月の出前や月の入り後の時間帯もある。そういう時間には昆虫は動けないことになってしまう。
  • 昆虫は紫外線に反応するというが、月の光に含まれている紫外線は太陽光の10万分の1程度に過ぎないという。そんなに僅かな紫外線に反応できるのだろうか?
 ということで、昆虫が光に集まるのは、月明かりと勘違いしているのではなくて、もっと一般的な走光性の性質によるものではないかと思われた。
 もっとも、ネットで検索したところ、こちらの論文(弘中・鉢山, 2014)に詳しい解説があり、見かけ上は光に集まるような習性に見えても、より詳しく調べると、光依存的なキネシス(無定位運動性)やクリノキネシス(変向無定位運動)やオルトキネシス(変速無定位運動性)が解発された場合でも、結果的に光源に定位したように観察されることがあるという。このほか、
  • 飛翔性昆虫は、下方から強い光を当てられると姿勢定位が阻害され、光源付近に落下する(光源に落花したように観察される)
  • ある閾値以上の明るさに晒されると移動行動が阻害される動物もある。ヤガ類に代表される一部の夜行性昆虫は光による行動抑制現象が知られている。
このほか、リンク先の論文では、光の波長、強さ、点滅などについてさまざまな知見が紹介されていた。興味深いのは、「昆虫走光性のメカニズムと適応的意義」というところであり、
  • コンパス理論【既出。番組でも紹介された】
  • マッハバンド理論:昆虫の光源の近くへの誘引は,錯視により引き起こされた最も暗い方向への逃避のための定位行動による。
  • 真の走光性理論:空間内の明るい部分を,昆虫は解放空間(open space)の指標として捉えている【明るい方に向かえば脱出できる】。
  • その他:「ある種の蛾では、人口光源の赤外線成分がメスの性フェロモンの赤外線放射と勘違いされる。」、「蛾類は、光源の近くの空間に入ると目が眩み、通常の行動が妨げられて光源側に曲がるような反応が引き起こされる」
ま、番組でもいつもの通り「諸説あります」と断ってはいたが、「お月様と勘違い」して集まってくる昆虫というのは、夜に光に集まってくる昆虫の中ではそれほど多くないのでは、という気がする。