じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 各種報道によれば台風19号による甚大な被害が発生している。罹災された方々にお見舞い申し上げます。
 岡山のほうは、県北の奈義町で最大瞬間風速33.5メートルに達する広戸風が吹き荒れたが、特段の被害は伝えられていない。
 写真は教育学部東にある裸婦像。10月12日の昼過ぎに倒れているところを目撃したが、この付近は滅多に通らないため、台風の強風により倒れたのか、それとも何らかの理由でいったん地面に横たわらせたのかは未確認。倒れる前の写真が2016年8月10日2017年8月12日の日記にあり。

2019年10月13日(日)



【連載】
#チコちゃんに叱られる!「水の色」

 昨日に続いて10月11日放送のNHK「チコちゃんに叱られる!の話題。本日は、
  1. 近畿と関西は、なにが違う?
  2. メロンの網目ってなに?
  3. なぜ秋は食欲の秋?
  4. なぜ水は透明?
という4つの話題のうち、最後の4.について考察する。

 番組の正解は「透明ではなく、青い」であり、ウィキペディアでも、
水の色は一般に無色透明といわれることが多いが、実際には水分子の赤外吸収スペクトルが可視領域に裾野を引き、赤色光をわずかに吸収するので、ごくわずかな青緑色を呈する。海などの厚い層を成す水および巨大な氷が青いのはこれによる。ただし、重水(D2O)は無色である。
と説明されていた。
 「なぜ水は透明?」という問いに対して「透明ではなく、青い」を正解としたことについては、ネット上でもそれでは解答になっていないという声が上がっているようだ。実際、「水が透明に見える」というのは、水が溜まっていても底にあるものがはっきり見えるとか、コップの水の向こうの景色が見える、というように「透けて見える」という現象のことを意味している。いっぽう、「水が青い」というのは、海や湖の水が反射した時に見える色のことである。リンゴの赤い色も同様。逆に言えば、「なぜリンゴは赤い?」という問いに対して、「じつはリンゴは透明でない」と答えても正解にはならない。リンゴが反射した時の色と、リンゴが透けて見えるかどうかという現象を混同しているからである。

 でもって、なぜ水は透明か?の本当の答えは、液体としての水の分子が透明の定義に合致する性質を備えているから、とするほかはない。さらに、水の分子のどういう構造がその性質をもたらしているのか?を明らかにする必要があるがこれはかなり難しそうだ。

 このことで思い出したが、小学生の頃の理科の授業で、リトマス試験紙の色が酸性やアルカリ性によって変色すること、あるいは、でんぷんにヨウ素液をたらすと色が青紫色に変わるといった実験が行われた。そのさい、私は、「どういう条件のもとでどういう色に変わるのか?」ではなく、「なぜその色に変わるのか?、例えばリトマス試験紙はアルカリでは青に、酸性では赤色に変わるが、なぜ、アルカリで赤に、酸性で青に変わらないのか?」が大きな謎であった。しかし、小学校の先生に質問しても教えてくれず、その後中学校の先生に説明してもやはり教えてもらうことはできなかった。もっとも、中学の時に来ていた教育実習の先生からは、分子の鎖のタイプや振動によって特定の色になるというような説明をしていただいた記憶がある。

 元の話題に戻るが、地球上の物体が太陽光のもとでいろいろな色に見えるのは、物体が特定の波長を吸収することによる。番組ではりんごが赤く見えるのは、リンゴの皮の表面が青や緑の色を吸収するためであり、残った赤の波長だけが反射するために赤く見えるというように説明された。

 もっとも、色覚のメカニズムはそう単純ではない。例えば、バナナは太陽光のもとでも、うすぐらい室内でも黄色に見えるが、必ずしも黄色の光を反射しているわけではない。これは「色の恒常性」に関係している。

 このほか、そもそも色の原色は、
原色は電磁波の本質的な要素ではない。原色は、生物の眼が可視光線に対して起こす生理学的反応と結び付けられている。レーザー光のような単色光は別として、天然光や照明などの光は、あらゆる波長の放射エネルギーが合成されており連続的なスペクトルを持つ。その刺激値空間は無限次元にわたるが、人間の目はこれを次のような受容の仕方によって三次元の情報として処理している。
 そう言えば、小学校や中学校の頃に、なぜ「光の三原色」と「絵の具の三原色」が異なるのかについても疑問に思ったが、これまた、先生に質問しても納得がいくようには答えて貰えなかった。
 ちなみに、絵の具の三原色は青、赤、黄と言われるが、正確には「シアン」、「マゼンタ」、「イエロー」の3色であるという。プリンターのトナーやインクジェットでも、「シアン」とか「マゼンタ」のタンクが販売されている。
 人間の目の受容器の仕組みから言えば、赤・黄・青の三色の混合では他のすべての色を作れるように思われる。とはいえ、顔、静物、風景などは、どんなにリアルに描いても、実際に目にする風景に完全に一致させることはできない。その理由として、
  1. 我々の目は対象そのものを見ているわけではない(スキーマ、文脈、各種の錯視など)。
  2. 実際の風景は立体的であり、我々は必要に応じてその中の特定事物に焦点を合わせて見ている。
  3. 実際の風景では、強い光を発しているところとそうでないところがある。
などが考えられる。例えば、太陽をどんなに上手に描いても、まばゆい明るさを表現することはできないし、立体的な風景は2次元映像でもある程度は表現できるとはいえ、けっきょくは3D技術に委ねるほかはないところがある。
 もっとも、上記1.に述べたように、我々は常にある枠組や文脈のもとで対象を見ているので、それをうまく利用すれば、現実の風景よりさらにリアルな光景を表現できる可能性がある。芸術はまさにその可能性を追求していると言える。