【連載】『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』(13)日本語の「形容詞」の謎
11月23日に続いて、
針生先生の『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』の感想。
第3章の116ページ以降では、単語の種類をいつ頃からどうやって見極めるのかという話題が取り上げられていた。昨日言及したように、日本語環境で育つ15カ月の子どもは、単語のあとに「が」や「を」や「は」がつく言葉は名詞、「らない」や「る」がついている言葉は動詞として区別できるようである。例えば「ヌサ」という造語の後に「ヌサが」というように「が」をつけて繰り返し聞かせたあと、
- 「ヌサを」とか「ヌサは」といった名詞テスト文
- 「ヌサらない」とか「ヌサる」といった動詞テスト文
を聞かせると、子どもは名詞テスト文より動詞テスト文により長く耳を傾ける(=何だかおかしいぞ、という反応)という実験結果が得られたという。
このことでふと思ったが、日本語環境で育つ子どもは、「形容詞」をどう区別できるようになるのだろうか?
というのは、日本語の「形容詞」は品詞として未成熟であり、簡潔な文法規則では「形容詞」という1つの品詞にまとめきれていないように思われるからである。【一部、ウィキペディアから要約引用】
- 色を表す「形容詞」は、赤い、白い、青い、黒い、(黄色い、茶色い)のみ。色名はモノを形容するはずなのに、色によって「形容詞」であったりなかったりするのはおかしい。
- 形容動詞が存在するかどうかも怪しい。ももともとは「○○で、あった」という「名詞+ある表現」。広辞苑では形容動詞を否定という。
- 活用がまちまち。「しい」で終わる語群と「い」で終わる語群
- 「おいしくない」は「形容詞」だが、「食べない」は接尾辞あるいは助動詞。
- 「大きい」「小さい」は「○○な」と言えるが、「高い」、「広い」、「楽しい」は言えない。(なので、大きな、小さなは連体詞とされている)
- 「好きくない」は間違い。「嫌う」はあるが、「好く」という動詞はあまり使われない。(好き、嫌いは形容動詞とされている)。
- 外来語や新しい概念を取り入れるときには形容動詞が用いられることが多く、「形容詞」では「黄色い」など例は僅かに過ぎない。ただし、「-らしい」「-っぽい」のような接尾語を加えることで、多くの名詞を形容詞化することができる。また、形容詞はより感情的な語感を持つことから、近年「ナウい」「ケバい」「ダサい」のような多くの新語が誕生して、普及している。
このように、「形容詞」あるいは「形容の役割を果たす単語」の法則性がマチマチであるとすると、日本語環境で育つ子どもは、名詞や動詞よりも「形容詞的単語」の使用においてより多くの誤用が見られるはずである。このことでどういう研究が行われているのか興味を惹かれるところである。
次回に続く。
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