じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 2月23日の朝はよく晴れ、備前富士(芥子山)の頂上からの日の出を眺めることができた。2月23日と言えば、令和になって初めての天皇誕生日である。この日に、「ダイヤモンド備前富士」現象が見られて、まことにめでたいめでたい。

2020年2月23日(日)



【小さな話題】災害支援体制と感染防止体制の本質的な違い

 昨日に続いて、新型コロナウィルス肺炎関連の話題。

 まず2月22日夕刻から23日朝までに入った新しいニュースの中で気になった点をまとめておく。出典はいずれもNHK。
  • 【2020年2月23日 6時15分】クルーズ船米人乗客 当初は米側が「船内に」とどめるよう要請
    新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応で、日米両政府の詳細なやり取りが分かりました。日本側が当初、アメリカ人乗客の早期帰国を提案したのに対し、アメリカ側は「乗客の移動は感染リスクが高まる」として船内にとどめるよう要請していたということです。

  • 【2020年2月23日 6時12分】新型ウイルスにスタッフ感染 人手不足で料金所閉鎖 名古屋高速
    新型コロナウイルスに感染していることが確認された名古屋市内の男性について、名古屋高速道路は、料金所の業務を行う会社の事務員だったと発表しました。...【略】...感染の確認を受けて、名古屋高速道路は、男性と濃厚接触したとみられる料金所のスタッフなど52人を22日までに自宅待機にしました。(スタッフを自宅待機にした結果、人手が足りなくなり、22日から一部の料金所を閉鎖しました。)

  • 【2020年2月23日 5時10分】新型ウイルス 中国と日本以外の感染 29の国と地域で887
    国や地域別では、▽韓国が433人、▽シンガポールが86人、▽香港が69人、▽イタリアが54人、▽タイが35人、▽イランが28人、▽台湾が26人、▽マレーシアが22人、▽ドイツとベトナム、アメリカがそれぞれ16人、▽オーストラリアが15人、▽UAE=アラブ首長国連邦が13人...【以下略】

  • 【2020年2月23日 4時32分】新型ウイルス対応医師ら職場で“バイ菌”扱い 学会が抗議声明
    新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船などで、対応を行った医師や看護師らが職場などで不当な扱いを受けているとして、災害対応を行う医療関係者でつくる学会が抗議する声明を出しました。...【略】...声明によりますと、活動に参加した医師や看護師らに対して、所属している医療機関の職場で「『バイ菌』扱いされるなどのいじめ行為」や、子どもが保育園などから「登園自粛を求められる事態」が起きているとしています。
    また、活動を行ったことについて、「職場管理者に謝罪を求められるなど、信じがたい不当な扱いを受けた事案」もあったとしています。


  • 【2020年2月22日 23時53分】新型ウイルス 国内での感染確認769人(クルーズ船634人含む)
    国内で感染が確認された人は、日本で感染した人や中国からの旅行者などが121人、クルーズ船の乗客・乗員が634人、チャーター機で帰国した人が14人の合わせて769人となります。

  • 【2020年2月22日 23時41分】クルーズ船下船の栃木の60代女性感染確認 下船者の感染は初
    栃木県によりますと女性は、70代の夫と「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船し、今月14日に船内で検査を行った結果、翌15日に陰性が確認されたため19日に下船し、その日のうちに自宅に帰宅したということです。

  • 【2020年2月22日 23時41分】下船したクルーズ船乗客23人に改めてウイルス検査を要請
    加藤厚生労働大臣は、今夜、記者会見し、新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船から今月19日と20日に下船した乗客のうち23人について、感染拡大の防止策がとられた今月5日より前にウイルス検査を行っていたとして、改めて検査するよう要請したことを明らかにしました。

 刻々と伝わる感染拡大のニュースに目を通していると、自然災害に対しては、世界トップレベルの防災体制、災害支援体制を確立していると思われる日本が、感染症に対する体制はあまりにも脆弱で、次々と起こる事態にあたふたし、確信を持てないままに行き当たりばったりの対応に追われているという印象を受けてしまう。

 より一般化して言えば、人類は、災害や事故に対しては一致団結して仲間を助ける力を身につけているが、未知の感染症に対してはなすすべがなく、また有効に対処できるようには進化してこなかったと言うべきであろう。

 大きな自然災害が発生した時には「手と手を取り合って」、「寄り添って」、「絆」といった言葉を耳にする。これは、精神的な意味(言葉で励ます)と、物理的な意味(実際に人々が手を握ったり、共同で支援活動にあたる)という両方の意味で使われる。

 ところが、今回のような未知の感染症が拡大しつつある中では、物理的な意味で、手と手を取り合ったり寄り添ったりすることは、濃厚接触に相当し、やってはいけないこととされている。物理的な意味に限って言えば、感染予防のためには、災害支援とは正反対の行動をとらなければいけなくなってしまう。

 ボランティア活動についても同じことが言える。自然災害発生時には、いまでは大勢の人がボランティアとして復興支援にかけつける。ところが、感染者を支援するためにボランティアがかけつけたら、逆に二次感染を広げてしまう。けっきょく、(物理的な意味では)他者とできるだけ接触しないことが求められる。家族が感染した場合も、寄り添って看護するのではなくて、治療は専門家に委ねて、自分自身は自宅に閉じこもり、余計な行動をしないことが求められる。ある意味では、災害時には利他的、博愛的行動がリスペクトの対象となるのに対して、感染拡大時には、「他者は感染しても、自分だけは感染しないように振る舞う」という「利己的な行動」のほうが推奨されるのである。

 ちなみに、人間以外の動物たちは、感染した仲間を切り捨てることで感染拡大から種族を守ってきた。例えばサバンナに暮らす草食動物の群れは、感染症で絶滅することはない。感染症にかかった個体は衰弱して足が遅くなるため、肉食動物に食べられてしまい、他の個体に病気をうつすことが無いためである。

 人間の場合は、疫病発生時には、病人を隔離するという形で感染拡大を防いできた。例えば、14世紀にヨーロッパで猛威をふるったペストの場合、患者を看護することよりも、隔離して拡大を防ぐことに重点が置かれた。また、ハンセン病のように、誤った固定観念から、患者への差別や長期間の不当な隔離が行われた例がある。

 では、医療技術が発達し、かつ、地球規模での人的交流が活発となった現在、人類はどうやって、未知の感染症の拡大を防ぐことができるのだろうか。そのさい、どうすれば、感染防止行動を道徳的に価値づけ、博愛的行動との整合性を保つことができるのだろうか。今回の新型コロナウィルスの問題を契機に、しっかりと考えてみる必要がある。