じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 岡大では4月20日から、学外者のキャンパス立ち入りが制限されることになった。単に呼びかけの看板を出すだけなのか、主要出入口で検問を行っているのかは確認できていないが、こうした制限措置が行われたことは私の現職時代には記憶がない。
 ちなみに私の立場であるが、すでに定年退職している以上、私も学外者として扱われる可能性がある。もっとも今年度も特命教授の辞令が出ているし、特命教授期間中は研究室貸出を受けている図書の返却が猶予されたり職員定期健診の受診資格があるので、100%学外者というわけでもなさそうだ。とはいえ、図書館が閉館され、生協食堂休業となれば、入構してできることは限られている。要請されるまでもなく、入構の機会は殆ど無くなることになりそう。

2020年4月21日(火)



【小さな話題】新型コロナウイルス感染の地域差

 新型コロナウイルスの感染はさらに拡大し、4月21日0時06分発信のNHKまとめによれば、国内で感染が確認された人は347人増えて1万1154人、また亡くなった人は25人増えて263人になったという。
 いっぽう、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによると、4月21日午前3時の時点で、新型コロナウイルスの感染者の数は世界全体で244万528人となっているという。ちなみに、世界の国・地域別の感染者数、死者数は、こちらのサイトで日々発表されていたのだが、4月13日を最後に更新されなくなった。リンク先には「システムメンテナンスのため、データの更新を止めています。表示しているのは、4月13日時点のデータです。」と記されているだけで、この緊急事態の中でなぜ一週間以上にわたって「システムメンテナンス」をする必要があるのかは謎である。

 もっとも、NHK以外でも世界の状況を知ることはできる。例えば日経新聞の特設サイトでは、国・地域別の感染者数、死者数が日々更新されている。

 さて、こうしたデータを閲覧していると、感染者数や死者数には著しい地域差があることが分かる。
 まず国内について言えば、感染者が多いのは殆どが大都市とその周辺地域であり、「3密」施設の利用者が多いほどクラスター感染が起こりやすいことを裏付けていると言える。但し、人口密度が比較的少ない地域でも、院内感染が原因でクラスターが発生すればたちまち数が増えてしまう。
 ちなみに、4月20日時点で感染者が少ない都道府県は、少ないほうから岩手(0人)、鳥取と徳島(3人)、鹿児島(10人)、島根と秋田(16人)、宮崎と佐賀(17人)、長崎(18人)、岡山(19人)などとなっている。3月21日の時点では、「中国・四国地方9県と、九州・沖縄地方8県での感染が極めて少ない」という特徴が顕著であったが、残念ながらその後、福岡、広島、沖縄などで感染者が急増し、中四国九州エリアの安全神話は崩れつつある。しかし、現時点でも、都道府県をまたいだ移動を自粛すれば、一部の県での感染を封じ込める必要は可能であろう。

 いっぽう、世界の状況に地域差があることは明白である。こちらのサイトの世界マップを、何の統計であるかを伏せて中高生あたりに見せてどういう特徴があるのかを推測してもらったとすると、おそらく、以下のような答えが返ってくるだろう。
  1. 北半球の温帯地域に多い。
  2. 西アジアや西欧に多い。
  3. 熱帯や亜熱帯地方は少ない。
  4. 新興国よりは先進国に多い。
 この地域差の原因については、もしかすると人種やトレジャーDNA、あるいはBCG接種などの要因が働いている可能性もあるいっぽう(4月3日の日記参照)、文化的な要因(挨拶、会食の方式、道徳や宗教など)が働いている可能性もある。
 もっとも、こうした地域差を1つの要因だけで説明するのは困難であるし、そういう見方をすること自体が無謀であるかもしれない。

 そう言えば、4月19日夕刻にに放送された、NHK「これでわかった!世界のいま▽新型コロナ感染拡大と抑え込みの分かれ目は」という番組で、シンガポールと台湾の地域差が取り上げられていた。シンガポールも台湾も3月中旬頃までは感染の押さえ込みに成功していたが、シンガポールではその後急速に感染が拡大し、放送時点での感染者数は6588人、人口10万人あたりで116.8人に達した。いっぽう台湾は420人、人口10万人あたりで1.7人となっている【ちなみに日本は人口10万人あたり8.2人、但し東京では21.3人】。この違いについては、台湾では危機意識が高く、自粛要請がしっかり守られ、また民間でも更なる感染防止の取組が自主的に行われたことなどを挙げていたが、うーむ、これだけで地域差を説明できるとは考えにくい。人口密度、エアコンによる密閉空間、屋内での活動時間の違いなども影響しているのではないかと思われる。

 あと、アメリカは世界最大の感染国になってしまったが、州によってかなりの地域差があるという。また、カリフォルニア州とニューヨーク州がよく比較されるように、当初は感染が同じように起こっても、その後の拡大のスピードに大きな差が出たケースもある。

 なお、感染というのは統計学でいうところの独立事象ではないため、偶然に起こる確率との有意差を検討する際には注意が必要である。要するに、ある集団の中で感染者が1名発生した場合、他の人に感染する確率はきわめて高くなるということだ。(ある集団の中の1人が道を歩いていて犬に噛まれたからといって、これは独立事象であるゆえ、同じ集団の中の別の人が犬に噛まれる確率が増えることはない)。