Copyright(C)長谷川芳典 |
【小さな話題】新型コロナウイルス治療薬の有効性確認は、万人対象ではなく、個人本位で 新型コロナウイルスの治療薬の研究開発が各国で進められている。このうち、「レムデシビル」については、ウィキペディアに記されているように、 2020年4月23日の、米国の医学情報報道サイト STAT の報道によれば、ギリアド社が中国で実施していた、レムデシビルの無作為抽出による初期臨床試験の報告書の草稿が、誤ってWHOのウェブサイト上に掲載され、すぐに削除されたが、STATのスタッフは掲載に気づいて画像を保存していた。この草稿によれば、コロナ肺炎患者237人のうち、158人をレムデシビル投与群とし、79人を対照群(プラシーボを投与)として試験を実施したところ、死亡率はレムデシビル投与群が13.9%、対照群が12.8%であり、有意な差は見られなかったと報告している。という報道があり、さらにその後、別のデータで症状の改善に有効というような報告もでており、ギリアドの株価は再び上昇するなど、渾沌とした状況が続いているように思われる。 新薬開発に関する報道ではいつも思うのだが、薬の効き目というのは、統計的検定の段階では「万人に効くかどうか」という有意差の有無をもって判定されているようである。もちろん、それなりの作用機序が明らかにされた上での治験であるし、症状の重さとの関連や、どういう面が改善されたのかといったより細かい検証が行われているとは思うのだが、基本的な発想は、あくまで、症状の改善は
しかし、4月3日や4月21日の日記にも述べたように、今回の新型コロナウイルスの感染者数や死亡率には明らかな地域差があり、人種の違い、(同じ人種の中でも)遺伝子型の違い、あるいは、BCG仮説なども議論されており、であるなら当然、治療薬の有効性もそうしたタイプ別に検証する必要があるように思う。 仮に100人中5人に対しては有効だが[※]、95人に対しては何の効果ももたらさないという「薬」があったとする。こういう「薬」は、投与群と対照群との有意差検定では棄却される可能性が高い。しかし、もしかすると、薬が有効であった5人には何らかの共通した体質があった可能性がある。であるなら、その「薬」は特定の体質限定の治療薬として承認するべきであろう。 [※]薬を服用して治ったというだけでは有効性確認にならないことに留意する必要がある。自然に治った可能性もある。特定体質への有効性を確認するには、共通体質を見出した上で、同じ体質の別の患者でも治験をする必要があるので、現実の分析はかなり多岐にわたり困難を極めることは承知している。 そのような研究を重ねていくことで、100人中50人以上に効く薬は見つからなかったとしても、例えば、血液型別に有効な薬というものが開発されたとすれば、結果として、どの人にも治療ができることになる。【←だからといって血液型性格判断が支持されるわけではない。かなり古いが、こちらに関連資料あり。】 |