じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 桃の季節が始まったが、高価であるため、産地の岡山でも食べ放題というわけにはいかない。写真は、妻が直販所で買ってきた特価品。9個で800円。

2020年6月23日(火)



【連載】#チコちゃんに叱られる! 「バスの語源」「なんで眠くなると目をこするの?」

 昨日に続いて、6月19日に放送された、NHK チコちゃんに叱られる!の感想と考察。今回は、
  1. なんで犬の名前といえば「ポチ」なの?
  2. カメの甲羅ってなに?
  3. 「略さずに言ってみよー」のコーナー
    • 「ソフトクリーム」とは?
    • 「バス」とは?
  4. なんで眠くなると目をこするの?
という疑問のうち、「バス」以降について考察する。

 まず「バス」の語源は、番組では「オムニバス」とされた。「オムニバス」はもともと「なんの御用にでも役立つ」という意味であり、フランスの乗り合い場所の発着所にあった雑貨店の看板に「Omnibus」と書かれてあったことからそのまま乗合馬車をさす言葉となり、その後、乗合自動車の意味になったと説明された。
 ウィキペディアでもほぼ同様の説明がなされているが、
「バス」の語源は、ラテン語で、「すべての人のために」という意味のomnibus(オムニブス)から来ている。スタニスラス・ボードリーが乗合馬車事業を始めたころ、ナント中心部のコメルス広場にはオムネ (OMNES) という帽子屋があり、「OMNES Omnibus」という看板をかかげていた。この看板が馬車乗り場の目印ともなったことから、馬車の方もオムニビュスと呼ばれるようになり、みんなのための車というvoiture omnibus という語が生まれた。ただしこの由来に関しては異説もある。
というように、番組で説明された「なんの御用にでも役立つ」という意味の雑貨屋の看板ではなく、「すべての人のために」という意味の帽子屋の看板が由来であるとされていた。また異説もあり、上記の説については、
これはフランスの都市交通博物館による説明であり、本城靖久「馬車の文化史 」もこの説を採用している。しかし "Omnes Omnibus" という看板が存在したという同時代の記録はなく、ナント市公文書館によればそもそも乗合馬車の路線沿いにオムネなる帽子店が実在したかも確認されていない。
と指摘されていた。ということで、バスの語源が「オムニバス」であることは間違いないが、どのような経緯で「オムニバス」が採用されたのかについては未だ謎が残っている。

 余談だが、バスの話題が出たところで、日本のバス会社の保有台数ランキングを調べてみた。こちらに2017年3月31日現在の公式資料があり、一番多いのはどうやら西鉄バスがトップになっているようだ(西鉄バスは地域により分社化しているので、これらを合わせるとダントツになる)。2位は神奈川中央交通か(こちらも神奈川県内と東京都内で分社化しているようだ)。




 最後の「なんで眠くなると目をこするの?」の疑問については、番組では「全身を目覚めさせるスイッチがそこにあるから」、そのスイッチというのは、まぶたの中にあるミュラー筋が刺激されることであり、まぶたを引っ張ったりこすって振動を加えたりすると交感神経が緊張し、血流が増え、全身を覚醒させることができると説明された。

 番組によれば、大昔の人間は狩りをする時に大きく目を見開く。獲物を取り逃がさないために、まぶたに体を目覚めさせるスイッチを得たと説明されたが、うーむ、この説明は少しおかしい。大きく目を開くことは獲物を捕まえる上で大いに有用だが、全身の覚醒のスイッチが目の筋肉である必要は必ずしもない。例えば、ホッペをピシャンと叩いてもよいし、エイヤーっと声で気合いを入れてもよい。進化論的な説明を試みるのであれば、変異により「ミュラー筋のスイッチ」が形成された人間のほうが、スイッチを持たない人間よりも、狩猟行動の上で圧倒的に有利になり生き残る確率を高めるということを実証する必要があるが、狩りの成功率がこのことだけで決定的に高まるようには、ちょっと思えない。

 但し、いずれにせよ、目をこすることに覚醒効果があることは確かであるようだ。他に「目を上向きにする」、「歯を食いしばる(歯根膜機械受容器を刺激し交感神経を活発にする)」などの「眠気(N)を晴(H)らすコツ(K)」があるという。

 番組ではこのほか、視線を下に落とすとミュラー筋が緩み、リラックス効果が得られ、例えば書店で本を読んでいる時に便意を催すのも全身が緩むためであると説明されていた。

 ここからは私の感想になるが、高速道路を長時間運転していて眠気が生じた時に、上記の「眠気(N)を晴(H)らすコツ(K)」だけで覚醒できるなら結構なことかと思う。しかし、自覚症状としての眠気と、事故に繋がりやすい見落とし、誤操作などは必ずしも対応していない恐れがある。自分では眠気がとれたと思っても、実際には疲労が蓄積していれば大事故を引き起こす危険があるので要注意だろう。

 このほか、上記の「眠気(N)を晴(H)らすコツ(K)」の原理から言えば、スマホやタブレット画面を操作する際には、手元ではなく、上向きに視線を向けるような位置で操作したほうが覚醒しやすいということが推測される。といっても、スマホを頭の上まで持ち上げて操作していたのでは、手首や腕に負担がかかるし、肩こりの原因にもなりやすい。

 いずれにせよ、ミュラー筋への刺激が劇的かつ持続的な覚醒効果をもたらすのかどうかはかなり疑わしい。むしろ、「行動とその結果」にかかわる強化随伴性を工夫することで作業への集中を高めることのほうが有効、それでもなお眠気が生じる時は無理をせずに一休みする、というほうが健康的であるように思う。

 次回に続く。