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ウォーキング中、路上でひっくり返って蟻に襲われているニイニイゼミを見つけた。まだ動いていたので拾い上げて近くの枝に掴まらせた。「セミの恩返し」があるかも。(もっとも、このセミはすでに役割を終えて衰弱しつつあったのかもしれない。救出は自然の摂理に反しており、むしろ「蟻の復讐」を受けるかも。 |
【連載】「タモリ×山中伸弥 人体 VS ウイルス〜驚異の免疫ネットワーク〜」(その2) 昨日に続いて、7月4日に放送された ●NHKスペシャル「タモリ×山中伸弥 人体 VS ウイルス〜驚異の免疫ネットワーク〜」 の感想と考察。 さて、昨日取り上げた自然免疫だけではウイルスの増殖が防ぎきれなくなると、第2の防衛隊が出動する。番組によれば、まず食細胞(樹状細胞)が伝令役となって他の免疫細胞にとりつく。伝令役の細胞は、新型コロナウイルスの断片を飲み込んでおり、この情報が免疫細胞に受け渡される。こうして新型コロナウイルスを狙い撃ちにするキラーT細胞が出現する。キラーT細胞は、感染した細胞の表面にある新型コロナウイルスの断片が一致していると、その感染細胞を攻撃し消し去る。 しかし新型コロナウイルスは、感染細胞の表面に突出するはずの「ウイルスの断片(手)」を分解してしまう。このままだと、キラーT細胞は、感染細胞を見つけることができない。 そこで今度はB細胞が登場する。B細胞は伝令役の食細胞から新型コロナウイルスの情報を受け取ると、小さな物質の放出を始める。これが抗体である。抗体は、ウイルスが細胞に侵入するための「ニセのカギ」に付着する。細胞に侵入できなかったウイルスは食細胞によって食い尽くされてしまう。 新型コロナウイルスに特化したキラーT細胞やB細胞はウイルスの記憶を保ったまま体内に待機し続ける。これが獲得免疫である。私たちの体の中には40種類の以上の免疫細胞があり、それぞれが違う役割を担う免疫ネットワークを構築しているという。 ここからは私の感想になるが、免疫系の基本は、どうやら、敵と味方、というか、自己と非自己を識別し、非自己を排除するしくみであると理解した。じっさい、ウィキペディアの該当項目でも、 免疫とは、ヒトや動物などが持つ、体内に入り込んだ「自分とは異なる異物」(非自己)を排除する、生体の恒常性維持機構の一つである。と定義されている。 例えば、体全体が青い物質でできている動物がいたとする。そこに赤い物質(=ウイルス)が入り込もうとした時、免疫系は赤い物質(ウイルス)を見つけ出し、攻撃し、排除する。なぜそうする必要があるかと言えば、青い物質はそれだけで恒常性を維持するようなシステムを持っていて、それだけで最も適応的になっているからであろう。いっぽう、赤い物質(ウイルス)はその恒常性維持機構を乱したり破壊したりする。結果として、赤い物質を排除するしくみを備えた動物のほうが生き残りやすいということになる。但し、赤い物質の侵入によって、当該の動物がより適応的に進化することもないとは言えない。じっさい、番組で言及されていた胎盤や受精のしくみはウイルス起源とも言われている。 素人目に見ると、免疫系は、ウイルスや細菌ばかりでなく、癌細胞に対しても有効に働くように思える。じっさいこちらの一般向け解説などを拝読すると、外科手術に頼らなくても癌の治療ができそうな気がしてくる。しかし現実にそういう研究がなかなか進まないのは、やはり、「自己」と「非自己」の区別が難しいためかもしれない。 将来、と言っても私が生きているうちではなくてもっと先の時代になるだろうが、癌細胞だけに感染するようなウイルスが見つかれば、ウイルスの増殖力と、免疫系の攻撃力を利用して、体内の癌細胞を一掃してしまうような治療法が開発されるかもしれない。 次回に続く。 |