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楽天版などで指摘したように、今年の梅雨で雨量が多かったことや人手不足のせいで、岡大構内各所が「ジャングル化」しつつある。写真上は文学部中庭のソメイヨシノ。アメリカヅタ、アオツヅラフジ、エビヅル、ミツバアケビなどが絡みついていた。写真下は1997年4月の、ほぼ同一地点の風景。 |
【連載】新型コロナ感染拡大と「感染7段階モデル」(7)血液型別の重症化しにくさ 昨日の日記の終わりのところで、 ...日本人に「血栓ができにくい」とか「サイトカイン・ストームが起きても重症化しにくい」という傾向が見られたとしても、それがすべての日本人にあてはまるのか、あるいはそうではなくて、ある体質の人のみにあてはまり、そういう体質の日本人が多数を占めているためにデータとしてそういう傾向が見られるのかを精査する必要がある。素朴に考えて、「私は日本人だから安全だ」とは考えにくい。「こういう体質の人は重症化しにくいことが証明されている。日本人にはそれにあてはまる体質の人が多いので、私自身もその体質である確率が高いから、確率的に見ていくぶん安全だ」程度にとらえるべきであろう。 このことに関連して、最近、 新型コロナ重症化リスク A型はほかの血液型の1.45倍【7月25日配信】 という記事が目にとまった。 記事が引用しているのは、2020年6月17日付のNew England Journal of Medicine誌電子版に掲載された、 Ellinghaus D, et al. (2020). New Engl J Med. June 17.【 DOI: 10.1056/NEJMoa2020283】 という論文であり、「イタリアとスペインで新型コロナウイルス感染症を発症し、呼吸機能の低下(酸素吸入または人工呼吸器が必要)を経験した人々と、健康な人々の、ゲノム(DNAのすべての遺伝情報)の一塩基多型(SNP)(下記参照)を比較し、呼吸機能の低下と相関する領域を探し【た】」という研究であった。その結果、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症し、呼吸機能が低下して酸素吸入または人工呼吸器が必要になるリスクは、血液型がA型の人で45%高く、O型の人では35%低い」という結果が得られたという。「新型コロナウイルスとABO血液型に関しては、これまでも「新型コロナウイルス感染者はA型の割合が有意に多い」とする疫学的な報告が複数あった」という。 この研究が示す通りであるとすると、血液型の比率でA型が多くO型が少ない国は、新型コロナウイルスの重症者や死者が多いという可能性がある。もっとも、ざっと調べたところでは【数値の出典はこちら】、重症化しにくいとされるO型が多い国・人種・民族)の中には、英国(46.7%)、イタリア(45.6%)、フランス(42.9%)などが含まれている一方、日本人のO型は30.5%であり相対的に少ない。いっぽう、重症化しやすいとされるA型が多い国・人種・民族)としてはアフリカ系米国人(81.8%)、フランス(46.7%)、ドイツ(43.5%)などが挙げられている。日本人のA型は38.2%なのでそれほど多くもないが、少ないというわけでもない。もし、日本人の圧倒的多数がO型でありA型が少ないというのであれば、血液型分布からみて日本人は重症化しにくいという仮説が成り立ちそうに見えるが、実際のデータは仮説を支持していないように見える。 なお、このWeb日記で何度も主張しているように【相当昔だが、資料集あり】、私は、人々をABO血液型でタイプ分けして性格、適性、相性などの違いを喧伝することには断乎反対してきた。血液型の違いが全く影響しないと決めつけることはできないが、仮に影響があったとしてもそれは微々たるものであって、具体的な行動傾向や職業適性を決定づけるものではない。かつてテレビでは血液型ステレオタイプを誇張したバラエティー番組がさかんに放送され、中には幼児のスイカの食べ方が血液型によって異なるなどというトンデモシーンが紹介されたことがあった【幼稚園児・保育園児を血液型別に保育するなどというのはとんでもない差別だ】。そういう俗説は差別偏見を助長するだけであり、人種差別主義と同様にこの世界から排除していかなければならない。 しかし、こうした差別偏見の問題と、遺伝子型や生理学的レベルにおける血液型と感染症の相関研究は区別する必要がある。もし、本当にA型が重症化しやすいというのであれば、ワクチンが完成した時点ではA型者から優先的に接種すべきであろう。 次回に続く。 |