じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 気象庁のデータが示す通り、8月の岡山(岡山市)は、最高気温35℃以上の猛暑日が21回、最低気温25℃以上の熱帯夜が25回、1日の平均気温(の平均)は29.9℃、日照時間は260.8時間という、記録的な猛暑&少雨となった。
 しかし、複数の天気予報サイトを見ると、この先一週間から10日間は、雨マークのついた日が8割を占めている。予報通りの長雨になるかどうか、10日後にチェックしてみたい。

2020年9月1日(火)



【連載】又吉直樹のヘウレーカ!「不便ってそんなに悪いもの?」(3)「不便益、便利益、不便害、便利害」という4象限

 昨日に続いて、7月29日初回放

又吉直樹のヘウレーカ!「不便ってそんなに悪いもの?」

についての感想と考察。

 番組では続いて、「不便益」、「便利益」、「不便害」、「便利害」というように、「便利vs不便」と「益vs害」という2×2の4象限の枠組が提唱されていた。我々は普通「便利は益、不便は害」という一次元の発想をしてしまうが、4象限で捉えることで、どういう方向の不便から益が得られるか、そのためにはどんな便利が必要かまで考えられるという。

 又吉さんが挙げた例は、
  • 便利で益があること:コンビニ
  • 不便で害があること:パスワードが複雑であること、商品に不具合があってコールセンターに電話してもなかなか繋がらないこと
であった。また川上先生のほうから、「富士山エスカレーター」の便利害、苦労して頂上に登るという不便益についての話があった。

 番組では続いて、「不便益レシピ」に基づいて「だし巻き卵」づくりに挑戦した。この「不便益レシピ」には、「たまご」、「だし」、「油」という材料は記されているが、分量は「好きなだけ」としか記されていない。また作り方は「たまごをとく→フライパンを温める→たまごを焼き、成形する」しか書かれていない。それゆえ、最初はだし巻きとは全く別物の料理しかできなかったが、失敗を繰り返すという手間をかけたことで、さまざまな発見や感動を得ることができた。

 ここからは私の感想になるが、上記の4象限は、「便利は益、不便は害」という一次元の固定観念を打ち破るという上では大いに有用であるとは思った。但し、そのためには、「便利vs不便」や「益vs害」をどう定義するのかという問題が出てくるように思う。

 昨日も引用したように、不便益は、不便益システム研究所の8月30日付けのツイートで、
不便益の「不便」とは手間がかかることを意味します.一般的な意味の「都合が悪いこと」「役に立たないこと」などの意味ではなく,狭義の定義となっているのでご注意ください!身体的に手間がかかること(手足を動かす),もしくは認知的に手間がかかること(頭を使う)の『不便』です.
というように狭義の意味で定義されている。これは当然であり、もし「不便」に「都合が悪い」や「役に立たない」を含めてしまうと、「不便」の定義に「害」の意味が含まれてしまうため、定義上「不便益」は存在しないことになる。「不便益」と思われる事象は、実は不便ではなかったと見なされてしまう。

 ということで、「便利vs不便」は、身体的もしくは認知的に手間がかかるかどうか、によって区別されることになる。「手間がかかる」を客観的指標、例えば所要時間とか、金銭的コスト、労力などで測ることができればそれでよいのだが、我々が感じる便利さ、不便さというのはもっと主観的なものであり、文脈にも依存している。上記の「富士山エスカレーター」の場合も、登山を楽しもうという人たちにとっては「便利害」だが、足腰の衰えた高齢者・障がい者や山小屋で働く人たちにとっては「便利益」となるであろう。要するに万人共通の「便利vs不便」とか「益vs害」は存在しない。なので、こういう捉え方で議論するためには、個人本位でとらえるか、もしくは、多数派の最大公約数をたどるほかはないように思われた。

 また、そもそも、モノとのかかわりというのは、便利か不便か、手間がかかるかかからないか、というように二者択一的に分類されるものではない。どういう事例においても、メリットとデメリットの両方が含まれるのが普通。例えば又吉さんが「便利益」の例として挙げたコンビニだが、必ずしも絶対的にconvenientというわけではない。ディスカウントストアに比べると値段が割高とか、ドラグストアのような薬品・化粧品を置いていないという不便さもある。同じく「不便害」の例として挙げた複雑なパスワードも、セキュリティという面からはきわめて有用であろう。

 ここで、4象限の枠組みが正しいとか間違っているという議論をするつもりはない。4象限の枠組みで物事を捉えることが発見ツールとしてどれだけ有用であるか、という視点が重要であろう。単に、「不便さを感じる事象について、どういうメリットがあるのかを考えてみましょう」、「便利だと思われる事象について、どういう弊害があるのかを考えみましょう」という分析をする場合に比べて、4象限の枠組みのほうがどこまで創造的、生産的な発想ができるのかが試金石になるように思われた。

 次回に続く。