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9月25日の岡山は午前中に50.0ミリというまとまった雨が降った(前日24日からの合計で55.5ミリ)。そんな雨の中、袴姿の女子学生が文法経講義棟のほうに歩いていたので何かと思ったが、どうやら、秋季学位記授与式の卒業生・修了生が学部別に学位記等を受け取るために講義棟に向かっているところであると思われた。 それにしても今回の卒業生・修了生は、コロナ渦の影響で4月以降の授業が殆どオンラインとなり、めでたい学位授与式も、卒業生および修了生と学内関係者のみに制限した上でひっそりと行われるなど、まことに気の毒であった。 |
【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(14)確立操作に関する1999年のシンポ(5)食行動場面における確立操作 昨日に続いて、1999年に日本行動分析学会第17回年次大会(北海道医療大学)で行われた、 ●「動機づけ」の行動分析:確立操作の概念の再検討と応用可能性 というシンポについての話題。 長谷川の話題提供(抄録の26ページ)では、3番目の話題として「食行動場面における確立操作」が取り上げられていた。 まず前半では、 TVのCMや、レストランのサンプルケースを眺めて特定の食物を「食べたくなる」という現象は確立操作にあたるのか、弁別刺激提示にあたるのか、パヴロフ型の何らかの条件反応の出現と考えるのかについて、詳細に検討する必要がある。として、「おいしそう!」、「これを食べてみたい!」という反応がどういうプロセスで生じるのか?という問題提起を行っている。 食品サンプル【←リンク先によれば日本で誕生したらしい。「チコちゃんに叱られる!」ネタになりそう】を見た時には、「これを食べたい!」という反応のほか、多少は唾液が分泌されるであろうし(=条件反応)、他にも複合的なプロセスが関与しているとは思われるが、なかなか奥が深い。結局、おいしさの起源という問題に行き着くことになるが、なかなか複雑である【こちらの本でも分担執筆させていただいたことがあった】。 後半では、食物嫌悪条件づけ(Food-aversion conditioning)と確立操作の問題が取り上げられていた。食物嫌悪条件づけというのは、動物に特定の食物を摂取させたあとで催吐剤を投与すると当該の食物を口にしなくなるというような条件づけであり、伝統的にはレスポンデント条件づけの枠組みで検討されてきた(=吐き気をもたらすのが無条件刺激、当該食物が条件刺激)。 しかし、実際の食行動場面においては、当該の食物が条件反応を引き起こすのかどうかではなくて、その食物をどれだけ食べるのか(条件づけによって摂取量がどの程度減るのか)が測定される。摂取量が減るというのは、その食物の強化機能が低下しているということであり、これは形式上は確立操作に相当している。この点について、抄録では、 食物嫌悪条件づけ操作は、形式上、その食物の好子としての強化力を弱める効果をもたらす。これはそれ自体確立操作と言えるのか、それとも、吐き気などの条件反応が生じることによる間接的な確立操作になるのか、重要な問題である。と述べている。 いずれにせよ、食行動は動物の最も基本的な行動であり、確立操作が大きくかかわっていることは間違いない。そう言えば、闘病生活を送っておられる某高齢者の方のブログをほぼ毎日拝読しているが、そのブログの中では、その日の食事内容の話題が頻繁に取り上げられおり、いかに美味しく食べるかということが生きがいを支えているようにも見受けられる。いっぽう私自身は、処方された薬を飲むのと同じ感覚で、健康に必要と思われるおかずを摂取しているだけのところがある。ま、そのおかげで、海外の辺境旅行に出かけても、現地の料理に不平を言ったことはない。 不定期ながら次回に続く。 |