じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 10月7日は夜明け前に火星や金星を眺めることができたが、その後、美しい朝焼けが出現した。一番鮮やかに輝いたのは5時57分頃【写真上】であり、日の出【写真下】の13分前であった。

2020年10月7日(水)



【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(22)セッティング事象とは何か?(8)「Our scientific verbal behavior」

 昨日に続いて、

武藤崇 (1999).「セッテイング事象」の概念分析一機能的文脈主義の観点から一. 心身障害学研究, 23, 1313-146.

についての感想。なおこの論文はつくばリポジトリから無料で閲覧できる。

 さて、昨日言及した、Leigland(1984)の論文

Leigland, S. (1984) On “setting events" and related concepts. The Behavior Analyst, 7,41-45. 【こちらから無料で閲覧できる】

は、セッティング事象について以下のように総括した【いずれも武藤訳、文意を損ねない範囲で一部改変あり】
  • 応用場面では人間の行動に環境がどのように影響を与えているかについて知ることはあまりに複雑で、そのため「刺激」という用語の特定的な意味合いは無力化したように思えるということに過ぎない。
  • そのような状況で採るべき方向性は、その複雑さとよりコンタクトしていけるような機能的な関係を弁別・分析していくことであって、新概念を導入する場合には必ず既存の概念と異なる行動的機能を明確にすることによって定義するべきである。
このあたりは日本語訳だけでは(私個人には)難解であるが、英語原文の、

One of the excellent points made by Wahler and Fox (1981) is that the narrow and specific connotations of the term "stimulus" seem lacking when one is faced with the formidable complexity of environmental influences over human behavior in applied settings. Certainly the scientific sophistication and effectiveness of applied behavior analysis will depend upon our abilityto discriminate and analyze functional relations that make incrcasing contact with such complexity.
のあたりを対応させながら読むと理解できそうである。このLeigland(1984)の論文には「Our scientific verbal behavior」という言葉が2回出てくる。要するに科学研究というのは、言語行動の一形態であり、

●科学とは、「自然の中に厳然と存在する秩序を人間が何とかして見つけ出す作業」ではなく、「人間の側で外界を秩序づける作業」である。

という考え方に基づいている。これは徹底的行動主義の前提となる科学観であり、セッティング事象概念に関する議論も、それが正しいとか間違っているとかいう観点からではなく、環境要因を秩序づける作業として有効かどうか、より簡潔に整理できるか、応用可能性を拡大できるかどうか、といった点からなされなければならないことを意味している。なお、武藤(1999)では、そのあとの部分でもLeigland(1984)にたびたび言及されており、この連載の次回以降でも取り上げる予定。

不定期ながら次回に続く。