じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 2月24日朝の日の出。備前富士(芥子山)の頂上からの日の出は2月23日で終了となった。この先しばらくは、備前富士の北側(左側)の山麓からの日の出となるため、日の出時刻が一気に早まる見込み。

2021年2月24日(水)



【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(57)杉山尚子先生の講演(22)杉山×武藤対談(7)「contingency」の初出は?

 2月22日の続き。

 少し前の話題に戻るが、2月16日の日記で、ラグマイ先生の回想を引用させていただいた【セザリオ・ボロンガン/佐藤方哉・共訳】。
 「先生、先生は御自分のなさった心理学への最大の貢献は何だとお考えになりますか」私は、ある日の昼近く、ウイリアム・ジェームス・ホールにある先生のオフィスでこう尋ねた。B・F・スキナー教授は、一息つき遠くを見つめてから、考え深げにゆっくりと言った。「強化随伴性.…強化随伴性の概念です。この言葉をはじめて使ったのは何時だったか. . ・・60年代の初め…・いや多分もつと早かったろう.…」そして立ち上がり「科学と人間行動』に手をのばし調べようとした。  「1953年に研究報告書の一つでその概念をお使いになったのをおぼえています。たしか、その報告書はファイルにおもちのはずです。」と私は応じた。
 スキナーは、熟慮のすえに、科学者としての最大の貢献は強化随伴性であることに想いがいたったのだな、と私は考えたものである。この会話が交わされたのは、今はもう昔の1968年、ハーヴァードにおいてであった。
このやり取りをみると、スキナー御自身は、随伴性概念を初めて使った時期ははっきり記憶しておられず、またラグマイの記録が正確であるならば1953年が最初ということになる。

 しかし、今回の杉山×武藤対談の中で言及されたように、Skinnerが随伴性概念を着想したのは1931年のある金曜日とされており、Skinnerは自伝(Skinner, 1979, p.5)の中でその時の感動を語っているという。残念ながら、私の手元には自伝が無いのでその部分を確認することはできないが、少なくともSkinner(1938)の著書:

Skinner, B. F. The behavior of organisms. New York: Appleton-Century, 1938.

の中ですでに「contingency(contingenciesを含む)」という言葉は6回使われている【PDF検索のため不確か】。本文444ページという大著のなかで「contingency」がわずか6回、しかも索引にはその項目が無いことを見ると、この時点ではSkinner自身は「contingency」をあまり重視していなかったというようにも解釈できる。

 それでは、上掲の1938年以前はどうか?ということになるが、1931年〜1937年頃に刊行されたSkinnerの論文をざっとチェックしたところでは、対談でも言及されていたように、やはり1937年刊行の、

Skinner, B. F. (1937). Two types of conditioned reflex: A reply to Konorsld and Miller. Journal of General Psychology, 16, 272-279.

という論文がカギになっているようである【ネット上で無料閲覧可能】。

 この論文では、
There are the types that I have numbered I and II respectively. Konorski and Miller refer to the second as Type I and to a complex case involving the first (see below) as Type II. To avoid confusion and to gain a mnemonic advantage I shall refer to conditioning which results from the contingency of a reinforcing stimulus upon a stimulus [p.273] as a Type S and to that resulting from contingency upon a response as of Type R.
というように、「タイプT」、「タイプU」という呼称が Konorski and Millerが独自に発見したとされる条件づけのタイプの呼称と逆になっていることをふまえ、混乱を避けるために新たに、「Type S」と「Type R」と呼ぶことにしたと記されている。

 「contingency」という言葉はここで初めて登場するが、その直前のところに、
Different types of conditioned reflexes arise because a reinforcing stimulus may be presented in different kinds of temporal relations. There are two fundamental cases: in one the reinforcing stimulus is correlated temporally with a response and in the other with a stimulus. For "correlated with" we might write "contingent upon".
というように、もともとは"correlated with"を"contingent upon"に言い換え、その名詞形として「contingency」が使われているように見える。

 なお、この1937年の論文の意義については、佐藤方哉先生の、

佐藤方哉 (1975). オペラント行動と実験的行動分析――この双生児の来し方行く末――. 心理学評論, 18, 129-161.

に詳しく記されている。次回に取り上げる予定。

不定期ながら次回に続く。