じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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半田山植物園の花壇の隅に見慣れない青い花が咲いていた。Googleの画像検索では「ツユクサ」や「ビオラ」などの名前ばかりで役に立たなかったが、Yandexの画像検索では一発で「Вероника дубравная」と推定された。今度は「Вероника дубравная」を検索すると「Veronica chamaedrys(カラフトヒヨクソウ)」がヒットしたが、葉っぱや茎の色などから、その近縁の園芸種である「ベロニカ・オックスフォードブルー」であると判断した。
 それにしても、Yandexの検索力はスゴい。同じく、花の名前が分からなかったこちらの花も、一発で「Illicium anisatum」からシキミにたどり着いた。

2021年3月7日(日)



【連載】サイエンスZERO「“羽毛のある類人猿” カラス 驚異の知力に迫る」その3

 昨日に続いて、NHKの「サイエンスZERO」:

「“羽毛のある類人猿” カラス 驚異の知力に迫る」

の話題。

 番組の中程では、鳥の脳についての新しい考え方が紹介された。20年ほど前までは、鳥の脳は運動のバランスや強さをつかさどる線条体が多くを占め、知的なことはそれほどできないと考えられてきたが、研究が進むにつれて、記憶や判断など高度な脳の機能をつかさどる皮質に相当する部分が多くあることが分かってきたとのことである。とりわけカラスの脳は、ニワトリ、カモ、ハトに比べると、記憶をつかさどる海馬や、学習や知的判断をつかさどる高次機能を持った部位が大きく発達していることが示された。

 番組では続いて、ニューカレドニアに棲むカレドニアガラスが、
  1. ギザギザのあるアロエのような葉っぱをちぎって細い棒をつくり、ギザギザにひっかけて穴の中の虫を獲る
  2. パイプの中の小石を、枝でつっついて床に落とし、その小石をくわえて別の場所に落とすことで、餌を獲得する
という行動のできることが示された。特に興味深いのは、2.の実験で、「枝でつっついて小石を獲得」→「小石を落として餌を獲得」という順序を「小石を落として枝を獲得」→「枝でつっついて餌を獲得」というように順序を入れ替えても、餌が獲得できたという点である。番組では「道具の使い方を理解している」と説明されたが、これがエラー無しでできたとすると、むしろ、関係フレーム理論で言うところの相互的内包に相当するようにも思われた。

 さらに番組では、カラスが人間の子どもと同じ自制心を持つという「マシュマロ実験」が紹介されていた。方法はリンク先で概説されている通りだが、オリジナルの研究論文もこちらから閲覧できるようである。

 この「マシュマロ実験」は、行動分析学の領域で広く検討されている遅延価値割引の研究にも繋がるように思われる【こちらや、こちらに関連文献あり。】 もっとも、上掲のカラスの実験では、「回転台を隠し、手前にある餌しか見えない状態で実験を行うと、カラスは手前にある餌の満足度にかかわらず、すぐに手前の餌をとってしまう傾向」があることも示されており、カラスに本当に「自制心」の芽生えがあるのかどうかは何とも言えないところがある。

 例えば、犬に音声で「オスワリ」という合図をして30秒間、お座りの姿勢を保つように訓練したとする。その上で、餌を目の前において「オスワリ」と合図し、30秒後に「ヨシっ」という合図とともに餌を食べさせる訓練をしたとする。犬は比較的容易に、この一連の動作を身につけるだろうが、それができたからといって直ちに、犬に「自制心」が形成されたかどうかは何とも言えない。犬は単に、「30秒のお座り動作→餌」という強化随伴性によって、お座りをするようになっただけかもしれない。

 同じく、徒競走で、「位置について」→「用意」→「ドン」という合図に従った一連の動作も、別段、「自制心」の形成とは関係がない。カラスが、手前の少量の肉を無視して、後から出てくる多量の肉を獲得する行動も、徒競走の合図と同じように生じている可能性がある。なお、人間の子どもは「回転台を隠した状態でも、隠していない状態と変わら」ずに 「自制心を発揮した」とされているが、人間の場合は、「用意」とか「お座り」といった外部的な合図が与えられなくても、自分自身で、言語的な手がかりを発して、一定時間、待つことができるようになる。待たされている時、幼児が「まだ、まだ」とか「もう少し、もう少し」といった独り言を発しているとしたら、それが弁別刺激になっている可能性がある。いずれにせよ、「自制心の形成」ではなく、「待つということをいかにセルフコントロールするか」が重要であるように思う。

 次回に続く。