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「接写で楽しむ雑草の花」。今回は、シロヤブケマン。花全体が紫色のものはムラサキケマンと呼ばれる。ケマンは仏堂における荘厳具のひとつ、華鬘に由来するものと思われる。 |
【連載】ヒューマニエンス「“死” 生命最大の発明」その2 臨死体験、テロメア 昨日に続いて、4月1日初回放送の、 「“死” 生命最大の発明」 についての感想・考察。 番組では、「死のグラデーション」に続いて、臨死体験の話題が取り上げられた。2001年にThe Lancet誌に発表された、 Lommel, Pim van, Ruud van Wees, Vincent Meyers, and Ingrid Elfferich. (2001). Near-Death Experience in Survivors of Cardiac Arrest: A Prospective Study in the Netherlands. The Lancet 358, no. 9298 (December 15, 2001): 2039-2045. によれば、心停止後に蘇生した患者の臨死体験として報告されたのは、幸福感(56%)、死んでいるという感覚(50%)、死者との出会い(32%)、トンネルの通過(31%)、天界の風景の観察(29%)などであったという。臨死体験の多くが幸福感を伴っている原因としては、異常興奮により大量に放出されるエンドルフィンの影響にあるらしい。 昨日も述べたが、死の直前には何らかの強い「感覚」が生じることは確かであろう。しかし、過去に一度も体験したことのない感覚というのは、言語として報告することができない。また、仮に何かの形や模様が見えたとしても、人間は、どうしても、何かの枠組みを通してそうした映像を知覚することになる。結局、「何かに似ている」というようなアナロジーやメタファーに頼るほかなないが、何に似ているのかは、その人の過去の経験に依存する。それゆえ、日頃から熱心に信仰している人であれば、その宗教が描く世界が体験されることは大いにありうる。但し、仏教徒がキリスト教の天国を、あるいはキリスト教徒が仏教の極楽浄土を体験することはありえない【というか、同じような映像が体験されたとしても、仏教徒はそれを極楽浄土として、キリスト教徒はそれを天国にしか喩えることができない】。 なお、臨死体験については、4月3日にNHK-BSPで放送された【初回放送は、NHK-BS4Kで3月13日に放送?】、 偉人たちの大臨終スペシャル〜人生のしまい方〜 でも取り上げられており、別途、感想・考察を述べる予定。 番組では続いて、 「死のシステム」とは何か? に関連して、スティーブ・ジョブズが生前にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの一節が紹介された。 死を望む者はいない。天国へ行くことを望む人でさえ、そのために死にたいとは思わない。それでも死は我々すべてが共有する運命だ。それを逃れた者はいないし、今後もそうあるべきなのだ。なぜなら、死は生命最大の発明なのだから。なお、スピーチの動画とテキスト全文はこちらから閲覧できる。 元の話題に戻るが、番組ではジョブスの「死は生命最大の発明」にあてはまる1つとしてテロメアの働きが紹介された。テロメアは染色体の末端に位置し、DNAを保護するキャップのようなものであるが、細胞分裂を繰り返すたびに、まるで回数券を使うかのように短くなっていく。そうして、短くなりすぎると分裂が滞るようになり、老化した細胞が増え、臓器や筋肉の機能が低下し、おのずと死へ向かって行く。 では、テロメアを修復すれば寿命が延びるかというと、とんでもないことになる。むやみにテロメアを修復すると、がん化が起こってしまうというから困ったものである。もともと、テロメアは、分裂にともなうがん化を防ぐために機能している。分裂が何度も繰り返されるとがん化のリスクが高まっていくが、それが起こる前に、頃合いを見計らって分裂をストップさせてしまうのがテロメアの働きである。テロメアが短くなるスピードには個人差があり、紫外線、飲酒、極度のストレス、さらに喫煙はテロメアを短くする原因になっているという。喫煙や受動喫煙が寿命を縮めるという問題についてはもう少し掘り下げてほしかったところだが、今回のゲストは、喫煙者として知られるいとうせいこう氏であり、またMCの織田裕二さんはヘビースモカー芸能人の代表格であり、そのことに配慮したのか、喫煙の危険性に関する話題はあっさり打ち切りとなった。 テロメアは常に短くなるわけではない。テロメアを修復する酵素としてはテロメラーゼが知られているが、これが活性化するのは、ヒトでは生殖細胞・幹細胞・ガン細胞などに限られているという。ということで、ここから、個体の死と、生殖との関係に話題がつながっていった。 次回に続く。 |