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【連載】ヒューマニエンス 「“天才” ひらめきのミステリー」その3 グリア細胞 昨日に続いて、6月3日にNHKのBSPで初回放送された、 ヒューマニエンス〜40億年のたくらみ〜「“天才” ひらめきのミステリー」 についての感想と考察。 さて、昨日の日記で「ひらめきの本質は大脳基底核にある」という話題を取り上げたが、私にはイマイチ腑に落ちないところがあった。 実験的証拠として示されたのは、
また、上掲のいくつかの「実験的証拠」であるが、プロ棋士のみで大脳基底核が活性化されたというのは、単にプロ棋士のほうが早めに解答候補を見つけたためであり、いっぽうアマチュア棋士の場合は、まだ候補手が浮かばずあれこれと考えを巡らしているだけであったかもしれない。であるなら、単に「早く解けた」人が大脳基底核を活性化していたというだけであって、解答を見つける「ひらめき」の源はあくまで皮質のほうにあったという可能性がある。5五将棋も同様であり、上達するにつれて、候補手の取捨選択が大脳基底核で行われるようになることは確かであるとしても、そのことと、奇抜な手を考え出すというような意味での「ひらめき」は直接関係のない話題であるように思えた。 元の話題に戻るが、番組では続いてアインシュタインの脳についての話題が取り上げられた。アインシュタインの脳は死後に細かく刻まれて世界中の科学者に配られた、30年後、アメリカの科学者によって、アインシュタインは一般の人たちよりも1.7倍も多くのグリア細胞を持っていることが明らかになったという。 グリア細胞はかつては神経の「接着剤(Glue)」の役割を果たしているだけにすぎないと考えられてきたが、最近の研究では、グリア細胞は、神経細胞同士の連絡に使われるグルタミン酸の受け渡しを増幅する役割を果たしており、グリア細胞が多いほうがより早く学習ができることが分かってきたという。マウスのグリア細胞を刺激すると、学習がどれくらい早く成立するか、どれくらい簡単に成立するか、といった学習の起こりやすさにグリア細胞が関わっている。また、繰り返し使う記憶においては、情報のつながりを強くする決定権をグリア細胞が握っているという研究も紹介された。グリア細胞を活性化することで長期記憶がよくなるという研究も発表されているという。 以上を踏まえて、グリア細胞には、伝達物質・代謝産物・イオンなどを放出して脳内の環境を変える機能があると説明された。では、我々凡人もグリア細胞を増やせば頭がよくなるのかということになるが、反面、グリア細胞が異常に増加すると(グリオーシス)、脳卒中や脳梗塞などが悪化し、より病気が進んでしまうこともあるというから、楽観はできない。なおアインシュタインの死因は腹部大動脈瘤破裂ということだが、脳に、脳卒中や脳梗塞の兆候があったかどうかは未確認。 あと、今回の番組では全く言及されていなかったが、アインシュタインの脳を巡ってはいろいろなミステリーがあり、テレビで関連番組を一度視たことがあった【たぶん、アインシュタイン 消えた“天才脳”を追え(初回放送2018年7月29日)】 。 次回に続く。 |